【プロが解説】はじめての外壁工事で知っておくべきこととは?

「外壁工事って何?」

「そもそも外壁工事は必ずしなくてはいけない?」

「外壁工事をする場合はいくらくらいかかるの?」

はじめての外壁工事では、どういったことから手をつければ良いか、どんな知識を持っていた方が良いか、右も左も分からないという方が多いと思います。

そこでこの記事でははじめて外壁工事や外壁塗装を検討されている方向けに、外壁工事とは?という基礎的な部分から、外壁工事にかかる費用や期間、業者の選び方などを詳しく紹介します。

外壁工事とは?

外壁の塗装作業

外壁工事とは建物の外壁に関する工事のことをいい、外壁を新設するだけではなく、外壁塗装などのメンテナンス・修繕工事を含みます。

建物に外壁があることで人は家の中で一年中快適に過ごすことができますが、外壁は常に紫外線や雨風にさらされ続けているため、次第に経年劣化が進んで色あせしたり、表面の塗膜が剥がれてしまったりしてしまいます。

そのような経年劣化から建物を守り外壁の性能や機能の低下を防ぐためには、定期的なメンテナンスを欠かすことができません。

外壁のメンテナンス工事には、大きく分けて塗装工事・重ね張り工事・張り替え工事・部分補修工事の4つがあります。

外壁工事は美観や建物の構造躯体を守るためのもの

建物の外壁は日々の紫外線や雨風など、さまざまな外的要因から建物の構造躯体や住民を守るとともに、建物の耐震性や防火対策などの重要な役割を担っています。

しかし外壁の劣化が進行し雨漏りが発生するようになると雨水が外壁の内部に侵入し、木材の腐食やシロアリの発生などの原因となります。

外壁の劣化は構造躯体にも悪影響を及ぼすため、外壁の防水性能を長く維持していくために定期的に外壁のメンテナンス工事を行わなければなりません。

適切なメンテナンス工事を行うことで構造躯体を守り、建物全体の資産価値向上にも繋がります。

劣化症状が発生したら外壁工事が必要

外壁の経年劣化が進行すると、塗膜の剥がれや膨れ、ひび割れ、コケ・カビ・藻の発生、チョーキング現象などの劣化症状が発生します。

また、外壁がサイディング張りの場合には目地部分のシーリング(コーキング)が劣化して亀裂や剥がれ、破断などが発生し、雨水が侵入してしまうこともあります。

そのため、外壁に劣化症状が発生したら劣化症状に合わせた適切な方法でメンテナンスを行うことが非常に重要です。

自分で住まいの状況を確認して外壁に劣化症状をみつけた場合には、外壁工事の専門家に依頼して、プロの視点で調査・診断してもらうようにしましょう。

新築後10年経過したら外壁工事の目安

ナチュラルで自然な外観の住宅

一般的には新築から10年が経過したら、何らかの外壁工事を行うことを検討する時期であるといわれています。

外壁に著しい劣化事象が生じてあわててしまうことがないように、外壁工事が必要になるのは新築してから何年目になるのかをあらかじめ知っておくことが大切です。

外壁工事を行うタイミングは、外壁塗装であれば築10~15年、重ね張りや張り替えであれば築20~25年程度が目安になります。

築20年を超えても外壁塗装で済ますことができますが、外壁の劣化状況によっては外壁塗装よりも重ね張りや張り替えを検討した方が良いケースが多いようです。

外壁塗装を行う目安となる築年数については、以下の記事で詳しく紹介しています。

 

外壁工事を行う時期の目安となる劣化症状の例

外壁工事を行うタイミングといわれている築10年、築20年などはあくまでも目安にしか過ぎず、使用されている外壁材や塗料の種類などによっても違いが生じます。

したがって、外壁に実際に現れている劣化症状から判断して外壁工事が必要な時期を見極めることが大切です。

外壁工事が必要になる劣化症状と必要になる工事には次のようなものがあります。

劣化症状 必要な工事
藻、コケ、カビの付着 高圧洗浄または外壁塗装
外壁の部分的な破損 部分補修
外壁面の軽微なひび割れ(幅0.3mm未満) 部分補修
シーリングの劣化 シーリングの打ち替え
チョーキングの発生 外壁塗装
塗膜の褪色・色褪せ 外壁塗装
塗膜の膨れ・剥がれ 外壁塗装
外壁材のひび割れ・反り 外壁張り替え
外壁材の剥がれ 外壁張り替え

各劣化症状の詳細については、以下の記事で詳しく紹介しています。

外壁工事の種類と各費用相場

この章では前述した4つの外壁メンテナンス工事の概要と各工事の費用相場を紹介します。

外壁塗装工事

外壁塗装工事とは、外壁を塗り替える工事を指します。

外壁塗装工事の際は単に古い塗膜の上に新しい塗料を塗り重ねるだけでなく、高圧洗浄による汚れの除去や下地の補修などを併せて行うので、外壁本来の機能を取り戻すことができるようになります。

外壁塗装は外壁工事の中でも最も安価な工事ですが、劣化が進行してしまうと外壁塗装では対応することができず、大がかりな工事が必要になることがあります。

費用は延べ床面積30坪程度の家で80~100万円程度になり、工期は約1~2週間です。

外壁塗装工事については、以下の記事で詳しく解説しています。

 

外壁の重ね張り工事

外壁の重ね張り工事とは、既存の外壁材の上に新しい外壁材を張り付ける工事のことをいい、カバー工法とも呼ばれています。

既存の外壁材を撤去しない分張り替えよりも費用が安価で工期も短く、住みながら工事を行うことができます。

また、重ね張りには構造躯体に負担をかけないように軽量な金属製サイディングが使用されることが一般的です。

外壁が二重になるため、遮音性と断熱性が向上するというメリットがあります。

一方で下地の補修を行うことができないため、既存の下地や構造材が劣化している場合には劣化が進行してしまうというデメリットがあります。

サイディングの重ね張りにかかる費用の相場は120~200万円程度で、工期は約10日~2週間です。

外壁の重ね張り工事については、以下の記事で詳しく解説しています。

 

外壁の張り替え工事

外壁の張り替え工事は、既存の外壁材をすべて撤去して新しい外壁材に張り替える工事です。

モルタルの外壁などをサイディングや別の外壁材に自由に変更できるため、築年数が経過して外壁の劣化が著しく進行している場合や、雨漏り・構造躯体の腐蝕のリスクが疑われる場合におすすめの外壁工事といえます。

外壁の張り替え工事ではサイディングが用いられることが多く、同時に傷んだ防水シートや下地材・構造材の補修・交換ができるので、外壁を新築に近い状態まで復元することができます。

状況によっては部分的に張り替えを行うことも可能ですが、工事中は基本的に仮住まいが必要です。また既、存の外壁材を撤去するため、外壁工事の中では最も費用と工期がかかるのがデメリットになります。

外壁の張り替え工事にかかる費用の相場は150~250万円程度で、工期は約2~3週間ですが、下地や構造躯体の劣化が激しい場合は費用と工期が増える可能性もあります。

外壁の張り替え工事については、以下の記事で詳しく解説しています。

 

外壁の部分的な補修工事

コーキングの注入作業

外壁は、シーリング(コーキング)の打ち替えやひび割れの補修、塗膜の剥がれの補修といった部分的な補修が必要になることがあります。

シーリングは5~10年程度経過すると膨れや剥がれ、亀裂などが発生することがありますが、簡単なものであればDIYで補修することができます。

詳しいDIYの方法などは、以下の記事で詳しく解説しています。

 

また、外壁面に発生する幅3mm未満のひび割れや軽微な塗膜の剥がれの場合も、DIYでの補修が可能です。

外壁面に不具合を発見したら、できるだけ早いうちに補修しておくことで耐用年数を延ばすことができるようになります。

外壁のクラック補修やメンテナンス方法については、以下の記事で詳しく紹介しています。

 

外壁工事の工期や工事の流れ

足場

外壁工事の工期は次のようになります。

外壁工事の種類 一般的な工期
外壁塗装工事 1~2週間
外壁重ね張り工事 10日~2週間
外壁張り替え工事 2~3週間
外壁の部分的な補修工事 1日~1週間

外壁工事を行う際には事前に現場近隣住民への挨拶を行い、足場の設置や養生などを行ったうえで外壁塗装などの工事に着手します。

外壁工事の一般的な工期は上記の表のようになりますが、業者の中には人件費を削減するために工事期間を短縮して手抜き工事を行う業者もいるので注意が必要です。

このような悪質な業者に騙されないためにも、適切な工事期間が設けられているかどうかを工事を発注する前にきちんと確認しておくことが大切です。

外壁塗装工事の工期や各工程、塗装の流れについては、以下の記事で詳しく解説しています。

 

 

 

外壁工事におすすめの時期や季節は?

外壁に劣化症状が見られるようになった場合はできるだけ早めに修繕工事を行うのがベストですが、外壁工事は屋外での作業になるので、天候が不安定になる時期は避けた方が無難です。

1年の中でも、降雨や降雪、台風が発生しやすい時期、日照時間が短い時期などは予定通りのスケジュールでは工事が進まないことが多く、工期が延長しがちになります。

また、外壁塗装を行う場合には気温が5℃以上で湿度が80%以下である必要があるため、真冬の寒い時期や梅雨時の湿度が高い時期には施工することができない場合があります。

このような理由から、できるだけスムーズに工事を行うことができるベストシーズンは、春か秋であるといわれています。

しかしお住まいの地域の天候などによっても、外壁塗装のベストシーズンが異なります。

外壁塗装工事におすすめの時期については、以下の記事で詳しく紹介しています。

 

外壁工事は他の工事と同時に行うとお得!

外壁工事を行う際には足場の設置が不可欠になるため、工事中に足場が必要になる屋根工事や太陽光パネルの設置工事などを併せて行うことにより、足場の設置費用15~20万円程度を節約することができます。

ただし一般的には屋根の方が外壁よりも劣化しやすいため、屋根には外壁よりも耐久性の高い塗料を使用するばど、次回のメンテナンス時期が同時期となる工夫をすると良いでしょう。詳しくは、以下の記事で紹介しています。

 

外壁工事を依頼する前に知っておきたい注意点

外壁工事を業者に依頼する際は、いくつかの注意点を知っておいたうえで業者を選定すると良いといわれています。

この章では、業者に外壁工事を依頼する前に知っておくべきことを紹介します。

業者選定の際は複数の業者から相見積もりを取得する

業者選びは外壁工事に限らず、建築工事すべてを成功させるための最も大切なポイントといっても過言ではありません。

工事を依頼する業者を決定する前には必ず複数の業者に同じ工事内容で見積もり依頼を行い、提出された各社の見積もり書の内容を十分比較検討することが大切です。

その際には単純に工事総額の高い安いのみで判断するのではなく、必要な工事が漏れなく見積もりに含まれているかどうかや、見積もり書の内容がわかりやすく記載されているかどうかなどといったことまで注意深くチェックするようにしましょう。

複数の業者から相見積もりを取得する方法や比較方法などは、以下の記事で詳しく紹介しています。

 

外壁工事の費用相場を把握しておく

外壁工事にはそれぞれ費用相場があるため、相場よりも格安な業者が必ずしも良いというわけではありません。

相場よりも大幅に安い業者は、本来必要な工程を省いている可能性があります。

そのような業者に騙されないようにするためには、それぞれの工事の費用相場をあらかじめ把握しておく必要があります。

安すぎる業者だけではなく、高すぎる業者にも注意しましょう。

特に外壁塗装に関しては悪質な業者が多数存在しているので、使用する塗料の施工単価の相場をあらかじめ知っておくと良いでしょう。

塗料の種類ごとの施工単価については、以下の記事で詳しく紹介しています。

 

悪徳業者の手口を事前に把握しておく

前述したように建築業界には悪徳業者と呼ばれる悪質な業者が存在しているので、それらの業者の手口を知っておくことが大切です。

悪徳業者は突然訪問してきて工事の緊急性を煽り、当日の契約を迫ってくることが多いようです。

そして見積もり書には「○○工事 一式 ○○円」といった記載が多く、数量明細がないことがほとんどです。

また、当日中に契約することを条件に大幅な値引きを行なったり、足場を無料にするといってきたりすることがあります。

しかし値引き後の金額も決して安いわけではないので、このような業者には絶対に騙されないようにしなければなりません。

悪徳業者の手口や騙されない方法などについては、以下の記事で詳しく紹介しています。

 

業者が持っていると安心な資格を確認しておく

外壁工事を行う業者に中には資格や免許(許可)を持っていない業者もいますが、無資格・無免許で営業していても決して違法ではありません。

しかし外壁工事を依頼する業者を選定する際には、業者が資格や免許を持っていることがひとつの判断基準といえるでしょう。

外壁工事業者が持っているべき資格には、建設業の許可(外壁塗装の場合であれば塗装工事業許可)のほかに足場の組み立て等作業主任者、塗装技能士、窯業系サイディング施工士などがあります。

これらの資格や免許を持っている業者であれば、信用ができる業者であるといえるでしょう。

業者が所有すべき資格については、以下の記事で詳しく紹介しています。

 

まとめ

今回の記事では、外壁工事を行うのが初めての方に対して、外壁工事にはどんな工事があるのか、どんな場合にどんな工事を行なえば良いのかということや、実際に工事を行うにあたっての注意点などを紹介しました。

外壁を定期的にメンテナンスすることは雨漏りを防いで建物を長持ちさせ、資産価値を保つ上でも非常に大切なことです。

本記事の内容を参考にして、適切なメンテナンス工事を行っていただけたら幸いです。

この記事のライター:亀田 融
東証一部上場企業の不動産・建設会社の建築部門に33年間勤務。 13年間の現場管理経験を経て、取締役事業部長に就任。 事業部内で年間1000件以上のリフォーム工事を手掛けるなかで、中立的立場でのコンサルティングの必要性を実感し、独立を決意。 現在はタクトホームコンサルティングサービスの代表として、住まいに関する専門知識を生かし、多岐にわたり活躍している。 (保有資格:一級建築施工管理技士、宅地建物取引士、マンション管理士、JSHI公認ホームインスペクター、インテリアコーディネーター、マンションリフォームマネジャー、日本不動産仲裁機構ADR調停人)

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