外壁の断熱リフォームとは?外壁塗装で断熱性能をUPさせる方法

日本には1年を通して寒暖差も大きいため、夏の暑さや冬の寒さなどを解消するために断熱リフォームをしたいという方も多いと思います。

断熱リフォームにはいくつかの種類があり、外張り断熱や内張り断熱といった方法が多く採用されています。

しかし外壁塗装によるメンテナンスの際、塗料を断熱性があるものに変えるだけで家の中の温度を快適に保てることをご存知でしょうか。

外壁塗装に使用する塗料にはさまざまな性能があり、その中でも断熱性に優れた商品が多数販売されています。

そこでこの記事では、家の中の暑さを外壁塗装で解消する方法をはじめ、塗装以外の断熱リフォームについて詳しく紹介します。

断熱リフォームとは?

「断熱」には「熱を断つ」という意味があります。

断熱リフォームには夏場の室内の温度上昇や冬場の冷気から室内を守り、室内の温度を快適に保つ目的があります。

断熱リフォームを行うことによって「夏は涼しく冬は暖かい」状態に保つことが可能になるため、快適な暮らしに断熱は欠かすことができません。また、断熱リフォームを行うことで建物内外の熱の移動が防げるようになるので、光熱費を削減しながら快適な住環境を実現することが可能です。

外壁に用いる断熱材の種類

ナチュラルで自然な外観の住宅

 

外壁に用いる断熱材にはいくつかの種類があり、その種類により効果が変わります。

ここでは外壁に使用される主な断熱材の種類を4つ紹介します。

無機繊維

無機質材を原料とした繊維素材で、ガラスを原料とした「グラスウール」や岩石を使用した「ロックウール」があり、低価格な上に防音性と防火性に優れています。

断熱材の中では最も良く知られているものですが、シックハウス症候群などを引き起こす恐れがあるともいわれています。

天然繊維

天然の素材を原料とした断熱材です。

羊毛を原料とした「羊毛断熱材」や、新聞紙を使った「セルロースファイバー」などがあります。

無機繊維と比べて高価ですが、天然素材から作られているため有害物質などの心配はなく、防音や吸湿性に優れています。

発泡プラスチック

プラスチック成分を発泡させた微細な独立気泡構造をもつ断熱材です。

「硬質ウレタンフォーム」や「押出法ポリスチレンフォーム」「ビーズ法ポリスチレンフォーム」「フェノールフォーム」の4つに分類できます。

湿気に強く耐水性があり、軽量で建物への負担が少ないことがメリットですが、断熱材の中でも高価なことがデメリットです。

断熱塗料

断熱塗料は、熱を遮断する断熱効果がある塗料の総称です。

外壁や屋根の塗装を行う際に耐候性の高い断熱塗料を使用することで外壁表面の補修と断熱を同時に行い、室内の住環境を改善することができます。

しかし断熱材よりも薄いことから、断熱材と同等の断熱効果を期待できないことがデメリットになります。

外張り断熱工法

外壁の断熱工法には外張り断熱(外断熱)、内張り断熱(内断熱)と断熱塗装があります。

この章では、外張り断熱工法について紹介します。

外張り断熱は「外断熱」とも呼ばれ、建物をすっぽりと覆うように外壁面や屋根面などに断熱材を張り付けていく断熱工法です。

使用する断熱材は発泡プラスチック系の断熱材であることが多く、また建物全体を断熱材で覆うので、隙間ができにくく高い断熱効果が期待できます。

外張り断熱工法のメリットとデメリット

外張り断熱工法のメリットとデメリットは次のようになります。

メリット

外張り断熱工法は建物の外側から隙間がないように断熱材で囲う工法です。

そのため気密性が高く、外気の侵入を防ぐことが可能です。

また、結露防止対策としても有効だといわれているほか、気密性が高いことから光熱費の節約にもつながります。

外張り断熱工法は建物に居住しながらリフォームが可能であるため、外壁塗装の際にリフォームをする方も多いようです。

デメリット

外壁面の外側に断熱材を貼り付けていくことから、外壁が厚くなるといわれています。

そのため、敷地にゆとりがない狭小地や住宅密集地では施工が困難になることがあります。

また、使用する断熱材の量が多く、費用が高額になりがちなのがデメリットといえます。

外張り断熱工法の工期と費用相場

外張り断熱工法によるリフォームの工期は約2週間~1か月程度で、費用相場は延べ床面積約30坪(約100㎡)の木造住宅の場合で100万円前後になります。(外壁、屋根、床の断熱工事の資材費のみ)

その他施工費(人件費)や足場代、屋根や外壁の仕上げ工事、諸経費(交通費など)が別途でかかります。

リフォーム費用は建物の立地や構造、形状によっても異なるので、外張り断熱工法によるリフォームを希望する際には複数の業者から相見積もりを取得して、各社の見積もり書の内容を十分に比較検討することをおすすめします。

内張り断熱工法

内張り断熱は「内断熱」とも呼ばれ、外壁面の柱の間や小屋裏などにグラスウールやロックウールなどの断熱材を充填して断熱層を作る工法のことをいいます。

国内の木造住宅では昔から数多く採用されていますが、近年では吹き付け工法が採用されるケースもあり、その場合には費用が高額になります。

内張り断熱工法のメリットとデメリット

内張り断熱工法のメリットとデメリットは次のようになります。

メリット

外張り断熱工法と比較して使用する断熱材の量が少なくなるので、価格の安さが最大のメリットといえます。

デメリット

グラスウールの充填工法や吹き付け工法などの内張り断熱工法は断熱材の間に隙間ができやすく、完全に断熱することが難しいのが最大のデメリットです。

また、リフォームの場合には天井や壁、床などを解体して断熱材を入れるため、室内の家具移動や工事中の仮住まいが必要になります。

内張り断熱工法の工期と費用相場

内張り断熱工法によるリフォームの工期は約3週間~1か月程度で、費用の目安は50~150万円程度になることが多いようです。

一方で壁や天井の解体工事が大がかりになってしまう場合や窓の断熱工事を併せて行う場合には、150万円を大きく超えてしまうことがあります。

断熱リフォームには断熱塗料による外壁塗装がおすすめ

外壁の塗装作業

断熱塗料とは太陽熱の熱伝導を抑えて建物の中の温度上昇を防ぐ断熱機能を持った塗料のことをいい、同じように暑さを軽減する機能をもつ遮熱塗料とは異なるものです。

外壁塗装工事を行う際に断熱性に優れた塗料を採用することで、外壁塗装のメンテナンスを行いながらも住宅の断熱性能を向上させることが可能になります。

また、既に断熱材が使用されている場合であっても既存の外壁の上から施工できるので、断熱塗料を塗布することで更なる断熱性能の向上が期待できます。

断熱塗料と遮熱塗料の違い

断熱塗料と同様に、暑さを軽減する効果がある塗料には遮熱塗料があります。

これらは名前が似ているため、同じものだと思っている方が少なくないようです。

しかし機能やメカニズムが異なるものなので、両者の違いを良く理解しておくことが大切です。

前述したように断熱塗料が「屋外からの熱の侵入を防ぎ、屋内の熱を逃げにくくする」のに対して、遮熱塗料は「屋外からの熱の侵入を抑える」という効果があります。

すなわち断熱塗料は暑さ・寒さの両方に対して効果を発揮しますが、遮熱塗料が効果を発揮するのは夏の暑さ対策です。

両者の違いをわかりやすく表にまとめると次の通りです。

塗料の種類 断熱塗料 遮熱塗料
耐用年数 約15~20年 約10~15年
特徴や性能 夏場の暑さや冬場の寒さを抑え、室内の気温を一定に保つ 熱を反射することで、夏場の暑さを軽減する

断熱塗料は遮熱塗料よりも耐用年数が長めで室内の気温を一年中快適に保つのに対して、遮熱塗料は夏場の暑さ対策に対して有効であるため、冬には冷えを感じてしまうことがあります。

断熱塗料による外壁塗装工事のメリット・デメリット

ここでは、断熱塗料を使用して外壁塗装工事を行うメリットとデメリットを紹介します。

メリット

  • 一年中室内の温度を快適に保つことができる
  • 冷暖房の使用頻度を抑えることができるので、光熱費を節約することができる
  • 耐用年数が長い(10~15年)
  • 結露を抑えてカビの発生を防ぐことができる
  • 遮音効果を持つものが多い
  • 耐火性が高く火災時の危険が少ない

デメリット

  • 一般的に外壁塗装に使用される塗料よりも高額であることが多い
  • すでに断熱材を使用している家や熱を吸収しにくい白い壁の家などでは、あまり断熱効果が感じられないことがある

断熱塗料による外壁塗装工事の工期と費用相場

断熱塗料を使用した外壁塗装工事の工期は約10日~2週間程度で、ウレタン塗料、シリコン塗料、フッ素塗料などの一般的な塗料を使った外壁塗装工事の工期と変わりません。

また、住みながらの工事が可能なので、内張り断熱工法による断熱工事のように工事中に仮住まいする必要もありません。

外壁塗装工事の工程や流れについては、以下の記事で詳しく解説しています。

 

また、外壁の断熱塗装を行う場合の費用相場は30坪程度の一般的な戸建て住宅の場合で60~90万円程度になります。

塗装費用は1㎡あたり3,000円~4,500円ほどになるので一般的な塗装工事よりも高額になりますが、その他の必要な足場代や工事費用は通常の塗装工事と同じになります。

外壁塗装の費用相場については、以下の記事で詳しく解説しています。

断熱リフォームにおすすめの遮熱塗料

断熱塗料や遮熱塗料は各塗料メーカーからさまざまな種類の塗料が販売されていますが、それぞれに特徴やメリット、デメリットがあります。

この章では、断熱リフォームの際に外壁塗装におすすめの塗料を紹介します。

遮熱塗料の代表格「ガイナ」

ガイナは遮熱塗料の代表的なもので、国内では圧倒的なシェアを誇っています。

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)がロケットに用いる断熱技術を応用して開発された遮熱塗料で、株式会社日進産業が販売元となっています。

ガイナは戸建て住宅の外壁塗装だけではなく、船舶や工場、屋外プールなどさまざまな場所に使用されています。

価格が高いことと仕上がりのバリエーション(色の種類)が少ないことがデメリットになりますが、耐用年数は12年~15年と比較的長く確かな性能を持っているので、実績を重視したい方にとっては最適な塗料といえます。

ガイナについては、以下の記事で詳しく解説しています。

 

結露防止機能が備わっている「ドリームコート」

ドリームコートは国内の大手塗料メーカーである関西ペイントが販売している断熱塗料です。

ドリームコートは一般的な塗料よりも高価でありながらも遮熱・断熱効果があると共に、防カビ・防藻機能も併せ持っています。

さらに防水・透湿機能に優れているので、梅雨時の湿気などを上手く逃してくれます。

また、弾性機能も高く、ひび割れが起きやすいコンクリートやモルタルとの相性が良いといわれています。

ドリームコートの耐用年数は12年~15年程度となっています。

価格重視の方には「断熱コートEX」

「せっかく塗装するなら断熱塗料を使って塗装したいけど、予算に限度があるのでできるだけ費用を抑えたい」という方には、東日本塗料の「断熱コートEX」がおすすめです。

断熱コートEXは高い防汚機能を持ちながらもトップコートが不要なので、その分費用を節約することができます。

また「艶あり仕上げ」を選択することも可能なので、外壁や屋根にツヤを求める方にもおすすめです。

ただし耐用年数が8年~10年と短いのがデメリットとなります。

断熱リフォームを依頼する業者選びのポイント

この章では、断熱リフォームを依頼する際の業者選びのポイントを紹介します。

複数の業者から同じ工事内容で相見積もりを取得する

工事を発注する前にはほかのリフォーム工事と同様に、必ず業者に見積もり依頼を行います。

ただし1社から見積もりを取得しただけだと、業者の見積金額や工事内容が適正なものなのかどうかがわかりません。

したがって必ず同じ工事内容で複数の業者から相見積もりをとって、各社の見積もり書の内容を十分に比較検討した上で、工事を発注する業者を選定することが不可欠です。

見積もり書の項目に相違がないかを確認する

見積もり書の中に、工事項目や工事に使用する資材等の商品名、数量、施工単価などが具体的に記載されていない業者はあまり信用できません。

しかし優良業者であれば、これらの項目がわかりやすく記載されています。

また、工事に使用する建築資材などに希望する商品などがある場合には、見積もり書の中にメーカー名や商品名が正しく記載されているかどうかを必ず確認しておきましょう。

見積もり書の正しい見方や良い例、悪い例などは以下の記事で詳しく解説しています。

 

悪徳業者の特徴を事前に把握しておく

突然訪問してきた業者はすべてとは言えないものの、悪徳業者の可能性が高いといわれています。

提案された工事内容がたとえどんなに好条件であっても、決してその場で契約することがないようにしてください。

訪問営業を行っているすべての業者に問題があるわけではありませんが、外壁塗装のトラブルでは、訪問営業によるトラブルが頻繁に発生しています。

悪徳業者に騙されない方法や悪徳業者の代表的な手口などは、以下の記事で詳しく紹介しています。

まとめ

夏の暑さは年々厳しくなる傾向があるので、真夏でも家の中で快適に過ごせるようにしたいという方が多いのではないでしょうか。

家の中の暑さや寒さを解消したい時には断熱リフォームが有効ですが、ひとくちに断熱リフォームといっても大掛かりな工事が必要になるものから外壁塗装で断熱効果が得られるようになるものまで、さまざまな工法があります。

どの工法や商品が適しているのかは、予算や建物の構造、工事中の仮住まいの有無、住む人のライフスタイルなどによってさまざまです。

本記事で紹介した代表的な断熱リフォームの方法の中から、ご自身にあった工法を選ぶようにしましょう。

この記事のライター:亀田 融
東証一部上場企業の不動産・建設会社の建築部門に33年間勤務。 13年間の現場管理経験を経て、取締役事業部長に就任。 事業部内で年間1000件以上のリフォーム工事を手掛けるなかで、中立的立場でのコンサルティングの必要性を実感し、独立を決意。 現在はタクトホームコンサルティングサービスの代表として、住まいに関する専門知識を生かし、多岐にわたり活躍している。 (保有資格:一級建築施工管理技士、宅地建物取引士、マンション管理士、JSHI公認ホームインスペクター、インテリアコーディネーター、マンションリフォームマネジャー、日本不動産仲裁機構ADR調停人)

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