外壁塗装のアクリル塗料のメリット・デメリット、他の塗料との比較

アクリル塗料は安価で使いやすい塗料ですが、現在は内装の塗装で使用されることが多く外壁塗装ではあまり使われていません

しかしホームセンターでよく販売されているので、「DIYで使用しても大丈夫?」「他の塗料とは何が違うの?」と思っている方も少なくないでしょう。

そして従来のアクリル塗料は外壁塗装ではあまり使われなくなったものの、現在は進化版のアクリル塗料も登場しています。

この記事では従来のアクリル塗料の特徴やメリットとデメリット他の塗料との違い新しいタイプのアクリル塗料について解説します。

アクリル塗料は外壁塗装では現在はほぼ使用されていない

アクリル樹脂そのものは透明な物質で、加工がしやすいのが特徴です。

アクリル塗料は安価で発色が良い塗料として昔は人気でしたが、現在は住宅の屋根・外壁の塗装で使われることは少なくなりました。

塗料の価格自体は安くても耐久性が低いので、5~8年に一度は塗り替えが必要になるためです。

ただし扱いやすくて施工が簡単なので、DIY向けの塗料としても人気があります。

「アクリルシリコン塗料」と「弾性アクリル塗料」は別物

アクリルという名前が付く塗料はたくさんありますが、これらの中にはアクリル塗料でないものもあります。

耐用年数や塗料の特徴がアクリル塗料とは異なるので、混同しないようにすることが大切です。

またアクリル塗料に様々な機能を付加した塗料もあります。

そこで、ここではその代表的なものを2つ紹介します。

アクリルシリコン塗料

アクリルシリコンという名前がついていますが、アクリル塗料ではなく、シリコン塗料のことです。

アクリルとシリコンを反応させて作った塗料のことをシリコン塗料と呼んでいますが、シリコン塗料はアクリル樹脂とシリコン樹脂両方の長所を合わせ持った塗料になります。

シリコン塗料(アクリルシリコン塗料)は、現在、住宅の外壁に使用される塗料の7~8割程度のシェアを占めているといわれています。

弾性アクリル塗料

弾性アクリル塗料とは、アクリル塗料に「弾性機能」を加えた塗料のことをいいます。

「弾性機能」とはゴム状に伸び縮みして下地の乾燥収縮をカバーする機能です。弾性塗料は外壁のひび割れを防ぎ、塗膜の防水性を確保します。

また、塗膜が伸びる力を若干抑えた微弾性塗料というものもあります。

しかし基本的な耐候性に関してはアクリル塗料と変わらないので、耐用年数は5~8年と短くなります。

外壁塗装のアクリル塗料のメリット・デメリット

現在の外壁塗装で使用する塗料はシリコン塗料が主流ですが、アクリル塗料が全く使われなくなったわけではありません。

そこでアクリル塗料のメリットとデメリットを紹介します。

アクリル塗料のメリット

アクリル塗料のメリットは次のようになります。

価格が安い(主要な塗料の中では最も低価格)

主要な塗料の中では最も低価格の塗料です。
何よりもとにかく施工費用を安く抑えたい場合には最適な塗料といえるでしょう。

発色が良く、ツヤがある

アクリル塗料の一番の特徴は、発色が良くて塗膜にツヤがあることです。

カラーバリエーションが豊富

カラーバリエーションが豊富なので、好みの色を探しやすいというメリットがあります。

また長い歴史を持つ塗料なので、商品自体の数が多いことも特徴です。

透湿性に優れている

塗膜の透湿性に優れているため、湿気がこもりやすい場所への塗装に最適です。

DIYに適している

アクリル塗料はほとんどが1液型の塗料なので、素人にも扱いやすいことが特徴です。
施工時の失敗が少ないため、DIYによる補修にも適しています。

アクリル塗料のデメリット

次にアクリル塗料のデメリットを紹介します。

耐用年数が短い

現在国内で流通している主要な塗料の中で、最も耐用年数が短いというデメリットがあります。塗り替え周期が短くなるので、その都度工事を行う必要があります。長期的にみると必ずしもメンテナンスコストが節約できるとはいえないでしょう。

紫外線に弱い

他の塗料よりも紫外線に弱いため、数年でツヤがなくなり色あせしてしまうという特徴があります。

ひび割れしやすい

塗膜が硬くなりやすいため、塗装面にひび割れが発生しやすいこともデメリットの一つです。

ただし、「弾性アクリル塗料」や「微弾性アクリル塗料」を使用することで、ひび割れの発生をある程度抑えることが可能です。

長期的なコストパフォーマンスに劣る

1回あたりの修繕費用は安くなっても、長期的に考えると塗り替え回数が増えてしまうため非効率といえるでしょう。

アクリル塗料と他の塗料の価格・耐用年数の違い

外壁の塗装に使用する塗料の中には、アクリル塗料のほかにもさまざまな塗料があります。

それぞれの塗料のおおまかな特徴は次の通りです。

ウレタン塗料

柔らかい素材で密着性に優れているため、複雑な形状の外壁にも塗装しやすい

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シリコン塗料

現在最も人気の高い塗料であり、耐用年数や価格などの総合的なバランスに優れている

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ラジカル(制御型)塗料

チョーキング現象の発生を抑えるために開発された比較的新しい塗料である

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光触媒塗料

塗料に含まれている酸化チタンが太陽光から放出される紫外線があたって化学反応を起こすことで、壁面に付いた汚れを分解する効果がある

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フッ素塗料

あらゆる気候に対応できる上に耐用年数が長いので、高層ビルや陸橋、鉄塔などの塗装に多く使用されている

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無機塗料

有機物の含有量が少ないためチョーキングなどの劣化が起こりにくい、最も高価なフッ素塗料より価格が高い反面、塗膜が長持ちするため耐久性に優れている

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次に塗料ごとの耐用年数と施工単価を表にまとめてみました。

塗料 耐用年数 施工価格(単価)
アクリル塗料 5~8年 1,000~1,800円/㎡
ウレタン塗料 7~10年 1,500~2,500円/㎡
シリコン塗料 10~15年 1,800~3,500円/㎡
ラジカル(制御型)塗料 12~15年 2,200~4,000円/㎡
光触媒塗料 12~20年 3,800~5,500円/㎡
フッ素塗料 15~20年 3,500~5,000円/㎡
無機塗料 20〜25年 4,500~5,500円/㎡

※横にスクロールしてください。

大手メーカーの代表的なアクリル塗料

この章では国内大手塗料メーカーが製造・販売している主なアクリル塗料を紹介します。

日本ペイント

日本ペイントは国内売上高とシェアが№1の塗料メーカーで、建築物用だけでなく、自動車の補修用塗料などの製造・販売も行っています。

代表的なアクリル塗料には「オーデグロス」があります

密着性に優れた1液型水性塗料で、透湿性、防藻・防カビ機能があり、乾燥が早く作業性に優れているのが特徴です。

エスケー化研

エスケー化研は建築仕上塗材に限れば国内シェア№1の塗料メーカーで、建築仕上塗材のほかに、断熱材や耐火塗料などの開発・販売も行っています。

代表的なアクリル塗料には「水性コンポアクリル」があります

1液型水性塗料なので作業性に優れ、ムラなく仕上げることができます。

また塗膜表面はチリや埃を寄せ付けず、特殊設計によりカビや藻類などの微生物に対して強いのが特徴です。

関西ペイント

関西ペイントは塗装業界全体での国内売上高とシェアが2位の塗料メーカーで、塗料のほかバイオ関連製品や電子材料関連の製造・販売も行っています。

アクリル塗料には「アレスアクアグロス」があります

水性塗料でありながら、同種の溶剤系アクリル塗料と比較して、耐水性・耐久性・耐薬品性に優れているのが特徴です。

アクリル塗料が採用されるケース

他の塗料と比較して耐用年数の低さが目につくアクリル塗料ですが、その特性を利用した賢い使い方もできます。

そこでこの章では、アクリル塗料の賢い利用方法を紹介します。

数年で解体予定の建物の外壁塗装

アクリル塗料は耐久性に難があるためコストパフォーマンスが悪く、長く住むための住宅の塗り替えには適しません。

しかしあと数年(5年以内)で取り壊したり売却したりする予定であれば、採用することを検討してみるのも良いでしょう。

塗装費用が安く済むので、コストを節約することができます。

外壁塗装以外

アクリル塗料は安価でかつ取り扱いが容易なので、DIYでは人気の塗料です。

どこのホームセンターでも販売されているので、簡単に手に入れることができます。

そのため外壁塗装以外では、さまざまな用途で使用されています。

室内の壁や天井、家具などの塗装であれば、紫外線や風雨の影響を受けることが少ないので劣化もそれほど早くはなく、低価格で大きく雰囲気を変えることができます。

また趣味の日曜大工で製作した本棚やテーブル、椅子などのほか、プラモデルやちょっとした小物などの塗装にも利用できます。

色の種類が豊富なので、お気に入りの色の塗料がきっと見つかると思います。

今注目の新タイプのアクリル塗料!

従来のアクリル塗料の使用頻度は非常に少なくなりましたが、近年では以前のアクリル塗料とは異なるタイプの新たなアクリル塗料が登場しています。

そこで、新しいタイプのアクリル塗料を紹介します。

ピュアアクリル

今注目の「ピュアアクリル塗料」は、オーストラリアの塗料メーカーであるアステックペイントが独自の技術で開発したもので、耐久性と透明度が高く飛行機の窓水族館の大水槽などにも使用されています。

しかし一般的にはまだそれほど普及しているものではなく価格も高めなので、国内の大手塗料メーカーが製造しているフッ素塗料やシリコン塗料と比較すると、まだ信頼性の面で不安が残ります。

耐用年数はフッ素塗料にも匹敵する15年〜20年といわれていますが、国内の大手塗料メーカーでは製造していません。

ラジカル制御型塗料(日本ペイント「パーフェクトトップ」)

ラジカル制御型塗料とは、アクリル系、シリコン系、フッ素系などの何らかの樹脂とラジカル制御型チタンを組み合わせて使用する塗料のことをいいます。

日本ペイントの「パーフェクトトップ」は、2012年に国内ではじめてラジカル制御型塗料として発売された塗料で、水性アクリル樹脂とラジカル制御型チタンを使用しているので厳密にはアクリル塗料の一種ともいえます。

アクリル樹脂系塗料でありながら、塗膜の劣化の症状のひとつであるチョーキングの原因になるラジカルの発生を抑え、シリコンとフッ素の間の耐久性を持っています。

ラジカル制御型塗料には他にエスケー化研の「プレミアムシリコン」などがありますが、こちらはシリコン塗料に塗膜劣化を防ぐラジカル制御機能を持たせたものになっています。

パーフェクトトップについてはこちらの記事を参考にしてください。

まとめ

アクリル塗料は住宅用の塗料としては最も安価な塗料ですが、近年では高価でもより耐久性の高い塗料が数多く出回っているため、アクリル塗料の需要は少なくなっています。

しかしメリットも多く、使用箇所や使用方法次第ではおすすめできるケースも少なくありません。

また近年では新しいタイプのアクリル塗料も出ているので、状況に応じて使い分けると良いでしょう。

塗料の選択に迷ったら決してひとりで考えずに、信頼できる塗装業者に相談するようにしてください。

この記事のライター:亀田 融
東証一部上場企業の不動産・建設会社の建築部門に33年間勤務。 13年間の現場管理経験を経て、取締役事業部長に就任。 事業部内で年間1000件以上のリフォーム工事を手掛けるなかで、中立的立場でのコンサルティングの必要性を実感し、独立を決意。 現在はタクトホームコンサルティングサービスの代表として、住まいに関する専門知識を生かし、多岐にわたり活躍している。 (保有資格:一級建築施工管理技士、宅地建物取引士、マンション管理士、JSHI公認ホームインスペクター、インテリアコーディネーター、マンションリフォームマネジャー、日本不動産仲裁機構ADR調停人)

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