外壁塗装でウレタン塗料を使っても大丈夫?メリット、デメリット、注意点
近年では「安価な塗料」として紹介されることが多くなったウレタン塗料。
「ウレタン塗料は安いけど、選んでも本当に大丈夫?」「品質に問題はないの?」と不安になる方も多いのではないでしょうか。
しかし10年程前まで、外壁塗装ではウレタン塗料が主流といわれており、多くの住宅の塗り替えの際にはウレタン塗料が使われていました。
そこで本記事では、ウレタン塗料のメリット・デメリット、他の塗料との違い、採用する際の注意点について詳しく解説します。
目次
外壁塗装のウレタン塗料とは?
ウレタン塗料とは、塗料を構成する樹脂、添加剤、顔料、溶剤(または水)の中の樹脂にウレタンが含まれている塗料のことをいいます。
現在主流になっているシリコン塗料よりも安価でアクリル塗料よりも耐久性が高いため、シリコン塗料が広く普及するまでは最も多く使われていました。
したがってウレタン塗料を選んでも基本的に問題はありませんが、その特徴をよく理解しておくことが大切です。
そこでこの章では、ウレタン塗料の種類やウレタン塗料があまり使われなくなった理由などを紹介します。
ウレタン塗料の種類
ウレタン塗料には3種類があり、用途や価格によって使い分けられています。
それぞれの特徴は次のようにようなります。
水性(水性1液型)
塗料はそのまま使用することはできず、使用する前には規定の量の液体(水またはシンナー)で希釈する必要があります。
その際に水で希釈する塗料のことを水性塗料といいます。
近隣にシンナー臭が発生しないのがメリットですが、一般的に耐久性は油性塗料よりも劣る傾向があります。
油性(溶剤1液型)
塗料はさらに1液型と2液型に分かれ、そのまま水やシンナーで希釈するものを1液型、主剤と硬化剤を混ぜてから水やシンナーで希釈するものを2液型といいます。
そのままシンナーで希釈して使うものを油性(溶剤1液型)塗料と呼びます。
油性(溶剤2液型)
主剤と硬化剤を混ぜ合わせ、シンナーで希釈して使用するものを油性(溶剤2液型)塗料といいます。
2液型は主剤と硬化剤を規定通りに混ぜ合わせる工程が必要になるため扱いが難しく、経験や技術を要するため1液型に比べて金額が少し高くなります。
しかしその分塗料の性能は1液型よりも優れていることが多いようです。
ウレタン塗料とウレタン防水は違うもの
ウレタン塗料とよく似た呼び名のものにベランダや屋上の防水工事などでよく使用されるウレタン防水がありますが、この2つは全く別のものです。
ウレタン防水は液体状のウレタン樹脂を塗り付けて、塗布したものが硬化することでゴム状で弾性のある防水膜が出来上がる防水工法のことです。
外壁塗装でウレタン塗料が使われなくなった理由
ウレタン塗料は以前は主流の塗料でしたが、より耐久性の高いシリコン塗料の普及と共に次第に両者の価格差が少なくなりました。
そのため耐久年数の差の割に価格差が少ないシリコン塗料の方が、コストパフォーマンスの上で有利になっています。
外壁塗装のウレタン塗料のメリット・デメリット
塗料の中では2番目に安価なことで知られるウレタン塗料ですが、他にはどんな特徴があるのでしょうか。
ウレタン塗料のメリット・デメリットをまとめてみました。
ウレタン塗料のメリット
価格が安い
最大のメリットは、過去には多くの施工実績がありながらも価格が安いことです。
ウレタン塗料を選択することで、外壁塗装の費用を安く抑えることができます。
ひび割れしにくい
ウレタン塗料は塗膜が柔らかくて弾性があるので、塗装後にひび割れしにくいのがメリットです。
したがってひび割れしやすい建物には非常に適した塗料といえます。
(ただし近年では、他の塗料でも弾性タイプのものはひび割れしにくくなっています)
密着性が高く付着力に優れている
塗装する素材に対して密着性が非常に優れているため、複雑な形状の建物にも塗装しやすく、塗膜が剥がれにくいのがメリットです。
DIYでも扱いやすく、失敗しにくい塗料といえます。
種類が豊富
以前はメインの塗料だったので種類が豊富です。
水性をはじめ弱溶剤型、1液型、2液型など、塗布する場所や用途に合わせてよう々な塗料の中から選択することが可能です。
また、特殊な機能が付け加えられた商品もあるので、選択肢が広いのがメリットといえます。
扱える業者が多い
過去に多くのシェアを占めていたため、ほとんどの塗装業者が取り扱いに慣れています。
したがって施工業者を探すのも手間がかかりません。
ウレタン塗料のデメリット
耐久性が低い
ウレタン塗料の耐用年数は一般的に7~10年といわれており、立地条件や周辺環境によってはそれ以下になってしまうことも少なくありません。
現在の多くの塗料の耐用年数が10年以上といわれているため、平均耐用年数よりも劣る塗料となります。
人体に有害な物質が含まれている
ウレタン塗料に含まれているイソシアネートには強い毒性があります。
そのため、現代の塗料としてはあまり向かない塗料といえます。
紫外線に弱く変色しやすい
ウレタン塗料の中のイソシアネートは紫外線に弱く、黄色く変色しやすい性質があります。
そのため外壁塗装で使用する際にはデメリットになります。
防汚性に劣る
ウレタン塗料の塗膜には汚れが付着しやすい欠点があります。
ただし近年では低汚染性の機能を持ったウレタン塗料もあるので、このような塗料を選ぶことが可能です。
光沢保持率が低い
ウレタン塗料の光沢保持率はシリコン塗料の8割程度といわれており、経年劣化による光沢の減少速度が早い塗膜といえます。
そのため紫外線による劣化が激しく、耐候性に欠けます。
ウレタン塗料と他の塗料の価格・耐用年数の違い
屋根や外壁の塗装に使用する塗料の中には、ウレタン塗料のほかにもよう々な塗料があります。
それぞれの塗料のおおまかな特徴は次の通りです。
アクリル塗料
軽量なので重ね塗りがしやすく光沢があって安価だが、耐用年数が短い
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シリコン塗料
耐用年数や価格などの総合的なバランスに優れているため、現在最も人気の高い塗料
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ラジカル(制御型)塗料
チョーキング現象の発生を抑えるために開発された比較的新しい塗料
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光触媒塗料
塗料に含まれている酸化チタンが太陽光から放出される紫外線があたって化学反応を起こすことで、壁面に付いた汚れを分解する効果がある
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フッ素塗料
あらゆる気候に対応できる上に耐用年数が長いので、高層ビルや陸橋、鉄塔などの塗装に多く使用されている
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無機塗料
有機物の含有量が少ないためチョーキングなどの劣化が起こりにくいのが特徴、最も高価なフッ素塗料より価格が高い反面、塗膜が長持ちするため耐久性に優れている
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次に塗料ごとの耐用年数と施工単価を表にまとめてみました。
塗料の種類 | 耐用年数 | 施工価格 |
アクリル塗料 | 5~8年 | 1,000~1,800円/㎡ |
ウレタン塗料 | 7~10年 | 1,500~2,500円/㎡ |
シリコン塗料 | 10~15年 | 1,800~3,500円/㎡ |
ラジカル(制御型)塗料 | 12~15年 | 2,200~4,000円/㎡ |
光触媒塗料 | 12~20年 | 3,800~5,500円/㎡ |
フッ素塗料 | 15~20年 | 3,500~5,000円/㎡ |
無機塗料 | 20〜25年 | 4,500〜5,500円/㎡ |
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外壁塗装にウレタン塗料を検討しても良いケース
ウレタン塗料は現在ではあまり使われることがなくなりましたが、状況によっては採用を検討しても良いケースがあります。
どんな場合におすすめなのかを紹介します。
建物の付帯部分を塗装する場合
ウレタン塗料は塗膜が柔らかくて付着力に優れていることから、現在でも建物の木部や鉄部、雨樋などの付帯部分の塗装に使われることが多くなっています。
それほど耐久性が必要でない場合
数年後に転居や建て替えを予定していて長期的に住む予定のない住宅の場合には、ウレタン塗料は安価なので費用を抑えて塗り替えることができます。
建物全体の塗り替え周期を合わせたい場合
建物全体の塗り替え周期をできるだけ合わせたい場合には、紫外線による劣化が激しい屋根にはシリコン塗料、外壁にはウレタン塗料を使用することで、次回のメンテナンス時期を同じにすることができる場合があります。
ひび割れしやすい外壁の場合
ウレタン塗料は塗膜が柔らかくて弾力性があるため、ひび割れが発生しにくいというメリットがあります。
したがって軟弱地盤や周辺道路の交通量が多い敷地に建つモルタル外壁の住宅などでは、シリコン塗料よりも柔軟性のあるウレタン塗料の方が適している場合があります。
外壁塗装でウレタン塗料を選ぶ前に考えること
ウレタン塗料は他の多くの塗料と比較して価格は低く設定されていますが、耐用年数の面では劣ります。
またウレタン塗料にはよう々なメリットとデメリットがあるので、採用する前までに良く検討してから決定することが大切です。
ただし、次の2点だけは忘れないようにして欲しいと思います。
頻繁に塗り替える必要がある
ウレタン塗料は価格は安くても耐用年数が短いので、頻繁に塗り替えが必要になります。
また塗り替えの際にはその都度10~15万円ほどの足場代がかかります。
したがってウレタン塗料は長期的にみると割高になってしまうことが多いので、長期間の使用にはあまり適していません。
ウレタン塗料とシリコン塗料で迷ったらシリコン塗料がおすすめ
ウレタン塗料とシリコン塗料を比較した場合、一般的に価格差に比べて耐用年数に3〜5年の大きな差があるため、シリコン塗料の方がウレタン塗料よりもコストパフォーマンスが高いといえます。
ウレタン塗料かシリコン塗料かで迷ったら、シリコン塗料がおすすめです。
しかし前述したように、同じウレタン塗料の中にもよう々な種類があり、水性1液型シリコン塗料と弱溶剤2液型ウレタン塗料を比較した場合、弱溶剤2液型ウレタン塗料の方が耐久性が高くなります。
必ずしもウレタン塗料だからといって耐久性が低いとは言い切れないので注意が必要です。
まとめ
ウレタン塗料は、比較的安い費用で施工できる塗料として外壁塗装ではかつては高いシェアを持っていました。
弾性があり、ひび割れに強いのが特徴です。
しかし耐用年数が他の塗料よりも短いため、塗り替え頻度が増えてしまうデメリットがあります。
塗料選びでは、このようなメリット、デメリットをよく理解して行うことが大切です。
その際には本記事をぜひお役立てください。
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