外壁塗装のラジカル塗料(ラジカル制御型塗料)のメリット・デメリット、 価格、注意点
外壁塗装で使われる塗料の中でも、最新の塗料として注目を集めているラジカル塗料。
2012年に新たに登場したラジカル塗料は、最新技術の高機能な塗料として注目を集めるようになりました。
外壁塗装を行う際、定評のあるシリコン塗料と比較してどちらを選んだら良いのかお悩みの方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、ラジカル塗料のメリット・デメリット、シリコン塗料や他の塗料との違い、費用相場、ラジカル塗料を選ぶ際の注意点などを詳しく解説します。
目次
外壁塗装のラジカル塗料は今注目の高性能塗料
ラジカル塗料は、正確には「ラジカル制御型塗料」といいます。
従来のアクリル塗料やウレタン塗料、シリコン塗料などのように、塗料の主成分である樹脂に由来する名称ではないのが特徴です。
したがってラジカル塗料には、アクリル樹脂ベースのものやシリコン樹脂ベースのものが存在しています。
シリコン塗料以上の耐候性の高さを持ちながらも、価格はフッ素塗料ほど高くはないので、今後需要を伸ばしていくことが期待されています。
ラジカル塗料のグレードは5段階で上から2番目
ラジカル塗料が登場するまでは、塗料のグレードは4段階で表されることが一般的でした。
しかしラジカル塗料の登場で、塗料のグレードは5段階で表されるようになりました。
表にすると次のようになります。
塗料のグレード | 塗料名 |
1位 | フッ素塗料 |
2位 | ラジカル(制御型)塗料 |
3位 | シリコン塗料 |
4位 | ウレタン塗料 |
5位 | アクリル塗料 |
ラジカル塗料のグレードは、フッ素塗料とシリコン塗料の間に位置付けられます。
ラジカル塗料の注目成分は「高耐候酸化チタン」・「光安定剤」
「ラジカル」とは、塗料に含まれている顔料が酸素や水、紫外線などに触れることによって発生する劣化因子のことをいいます。
そしてラジカルが発生すると、塗膜に「チョーキング現象(塗膜の表面に顔料がチョークの粉のようになって現われること)」が起きてしまいます。
このラジカルの発生を制御する塗料がラジカル塗料です。
ラジカル塗料には主に「高耐候酸化チタン」と「光安定剤」が配合されていて、それぞれの役割は次のようになります。
高耐候酸化チタン
ラジカルを外へ放出させない効力があります。
光安定剤
発生したラジカルの動きを抑制してラジカルの活動を抑えます。
ラジカル塗料は、高耐候酸化チタンと光安定剤の相互作用によって塗膜の劣化を防いでいます。
外壁塗装のラジカル塗料のメリット・デメリット
ラジカル塗料のメリットとデメリットをわかりやすくまとめると次のようになります。
ラジカル塗料のメリット
チョーキングが起こりにくい
ラジカル塗料は、もともと塗膜の劣化事象のひとつであるチョーキング現象の発生を抑えるために開発された塗料です。
防カビ、防藻効果がある
バイオ技術によって塗膜にカビや藻が付着するのを防ぎます。
汚れが付着しにくい
親水性に優れているため、雨水による汚染を防ぐ効果があります。
下地を選ばない
サイディングやモルタル、コンクリート、木部、アルミなどのさまざまな素材に塗布することができます。
塗装時の光沢が持続する
汚れに強く変色しにくいため、塗装したときの光沢が持続します。
塗料の伸びが良く簡単に施工できる
塗料の伸びが良いのでローラーで塗装しやすく、塗装作業がスムーズに進みます。
ラジカル塗料のベースになっているのは、あくまでも従来のアクリル塗料やシリコン塗料です。
従来の塗料に特殊な成分を配合することで、ラジカル塗料と呼ばれています。
そのため価格は従来の塗料と大きく変わらないものの塗料の性能が高性能なため、コストパフォーマンスが非常に高い塗料といえます。
ラジカル塗料のデメリット
濃い色は効果が発揮できない
ラジカル塗料の主成分である「高耐候酸化チタン」は白色顔料なので、製品によっては濃い色を選ぶことができません。
たとえ選べたとしても、ラジカル塗料特有の期待する効果を発揮することができません。
このため、外壁を濃い色にしたい方には、ラジカル塗料は適さないといえます。
濃色の塗料を使用して塗装する場合には、耐候性の高い樹脂系塗料を選ぶようにしましょう。
最新塗料のため精度がまだわからない
ラジカル塗料は発売されてから10年経過していないため、実際の耐用年数の実績がまだほとんどありません。
したがって現時点での耐用年数は、あくまでも理論上の数字になります。
製品数が少ない
商品化されてから日が浅いため、各塗料メーカーが販売しているラジカル塗料の種類は多くありません。
そのため他の種類の塗料のように、多くの製品の中から比較検討して選ぶことができません。
ラジカル塗料とシリコン塗料の違い
前述したように、アクリル系、シリコン系、フッ素系などの何らかの樹脂とラジカル制御型酸化チタンを使用した塗料のことをラジカル(制御型)塗料といいます。
シリコン樹脂とラジカル制御型酸化チタンを組み合わせたものが「ラジカル制御型シリコン塗料」です。
そこでこの章では、ラジカル制御型シリコン塗料と一般のシリコン塗料の違いについて解説します。
「ラジカル制御型シリコン塗料」は「シリコン塗料」より耐候性が高い
塗料の耐候性は「樹脂」によって決まります。
一般的にはアクリル<ウレタン<シリコン<フッ素の順に耐候性が高くなりますが、それぞれの樹脂にラジカル制御型酸化チタンを組み合わせることで、耐候性をより高めることができます。
したがってラジカル制御型シリコン塗料は、一般的なシリコン塗料よりも耐候性が高い塗料といえます。
「ラジカル制御型シリコン塗料」は「シリコン塗料」よりも値段が高い
ラジカル制御型シリコン塗料は、ラジカル制御型酸化チタンという高品質の顔料を使用しているため、通常のシリコン塗料よりも価格が高くなります。
しかし耐候性が高いため、耐用年数と価格のコストパフォーマンスの面からはラジカル制御型シリコン塗料の方がおすすめです。
ラジカル塗料と他の塗料の比較表:耐用年数、価格、特徴
屋根や外壁の塗装に使用する塗料の中には、ラジカル塗料のほかにもさまざまな塗料があります。
それぞれの塗料のおおまかな特徴は次の通りです。
アクリル塗料
軽量なので重ね塗りがしやすく光沢があって安価だが、耐用年数が短い
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ウレタン塗料
柔らかい素材なので密着性に優れているため、複雑な形状の外壁にも塗装しやすい
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シリコン塗料
耐用年数や価格などの総合的なバランスに優れているため、現在最も人気の高い塗料
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光触媒塗料
塗料に含まれている酸化チタンが太陽光から放出される紫外線にあたって化学反応を起こすことで、壁面に付いた汚れを分解する効果がある
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フッ素塗料
あらゆる気候に対応できる上に耐用年数が長いので、高層ビルや陸橋、鉄塔などの塗装に多く使用されている
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無機塗料
有機物の含有量が少ないためチョーキングなどの劣化が起こりにくいのが特徴、最も高価なフッ素塗料より価格が高い反面、塗膜が長持ちするため耐久性に優れている
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次に塗料ごとの耐用年数と施工単価は以下になります。
塗料 | 耐用年数 | 施工価格(単価) |
アクリル塗料 | 5~8年 | 1,000~1,800円/㎡ |
ウレタン塗料 | 7~10年 | 1,500~2,500円/㎡ |
シリコン塗料 | 10~15年 | 1,800~3,500円/㎡ |
ラジカル(制御型)塗料 | 12~15年 | 2,200~4,000円/㎡ |
光触媒塗料 | 12~20年 | 3,800~5,500円/㎡ |
フッ素塗料 | 15~20年 | 3,500~5,000円/㎡ |
無機塗料 | 20〜25年 | 4,500~5,500円/㎡ |
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ラジカル塗料のおすすめメーカー・商品
ラジカル塗料のおすすめメーカーには、以下のようなメーカーがあります。
日本ペイント
国内売上高とシェアが№1の塗料メーカーで、建築物用だけでなく自動車の補修用塗料などの製造・販売も行っています。
2012年に国内で最も早くラジカル(制御型)塗料「パーフェクトトップ」を販売したメーカーです。
エスケー化研
建築仕上塗材に限れば国内№1の塗料メーカーで、ほかに断熱材や耐火塗料などの開発・販売を行っています。
関西ペイント
塗装業界全体での国内売上高とシェアが№2の塗料メーカーで、塗料のほかバイオ関連商品や電子材料関連の製造・販売を行っています。
アステックペイントジャパン
塗料の輸入・製造加工・製造開発・販売を行う企業で、2014年より自社工場での国内生産を開始しています。
ラジカル塗料のおすすめメーカーの代表的な商品:外壁用
メーカー | 商品名 | 溶媒 | 樹脂 | 特徴 |
日本ペイント | パーフェクトトップ | 水性 | アクリル系 | 耐候性 低汚染性 |
エスケー化研 | プレミアムシリコン | 水性 | シリコン系 | 耐候性 低汚染性 |
関西ペイント | アレスダイナミックTOP | 水性 | シリコン系 | 耐候性 低汚染性 |
※横にスクロールしてください。
ラジカル塗料のおすすめメーカーの代表的な商品:屋根用
メーカー | 商品名 | 溶媒 | 樹脂 | 特徴 |
日本ペイント | ファインパーフェクトベスト | 弱溶剤 | アクリル系 | 低汚染性 |
日本ペイント | パーフェクトクーラーベスト | 水性 | アクリル系 | 耐候性 遮熱性 |
アステックペイントジャパン | 低汚染リファイン500Si‐IR | 水性 | シリコン系 | 耐候性 遮熱性 低汚染性 |
※横にスクロールしてください。
ラジカル塗料がおすすめのケース
この章では、ラジカル塗料はどのような人におすすめなのかをまとめてみましたので、是非参考にしてください。
費用は高くても良い塗料を選びたい場合
ラジカル塗料は最も需要が多いシリコン塗料よりも少し高額な塗料になりますが、費用は少し高くなっても耐久性の高い塗料をお求めの方にとってはおすすめの塗料といえます。
コストと性能のバランスは他の塗料と比較しても決して悪くはないので、費用対効果を求める方には適しているといえるでしょう。
汚れにくい外壁にしたい場合
ラジカル塗料は一般的なシリコン塗料よりも耐久性が高く、塗膜が汚れにくい塗料です。
特に淡彩色系の色での塗り替えを検討している方にとっては最適な塗料といえます。
汚れにくさを重視して塗料選びをする場合にはおすすめです。
外壁塗装でラジカル塗料を選ぶ時に気をつけたいこと
外壁塗装でラジカル塗料を選ぶ際にはどのような点に注意すれば良いのでしょうか。
注意点を3つまとめてみました。
「どのような樹脂を使っているのか」を必ず確認
ラジカル塗料の主成分はアクリル、ウレタン、シリコン、フッ素など従来の分類で分けられている4つの樹脂のいずれかです。
これらの樹脂とラジカル制御型チタンを組み合わせたものがラジカル塗料なので、ベースとなる樹脂に何が使用されているのかによって効果や機能が変わります。
したがってラジカル塗料を選ぶ時には、どのような樹脂がベースとして使用されているのかを確認しておくことをおすすめします。
しかし、ベースとなる樹脂を公表していないメーカーもあります。
ツヤを抑える塗料を使用すると耐久性がやや落ちる
ラジカル塗料は、光沢を加減して塗装することができます。
しかしツヤを抑える際には添加剤(ツヤ消し材)を混ぜるため、塗料の耐久性がやや落ちてしまう傾向があります。
したがってより長持ちさせたい場合には、光沢をあまり落とさずに「ツヤあり」で施工してもらうことをおすすめします。
最新塗料のため施工実績のある業者を選ぶ
ラジカル塗料は2012年に初めて登場し、2016年に国内3大メーカー全てから商品が出揃ったばかりの比較的新しい塗料なので、施工実績が豊富な業者はまだそれほど多くありません。
また耐久性の面でも多少不安の残る塗料なので、施工実績の多い業者に依頼するのはもちろんのこと、複数の業者に見積もりを依頼して建物の状態やコストに見合った塗料を提案してもらうと良いでしょう。
複数の提案内容や見積金額を比較して、最も納得のいく助言や提案が得られる業者を選ぶことが大切です。
まとめ
ラジカル塗料は国内で最も人気の高いシリコン塗料よりも優れた耐久性を持つといわれながらも、価格はそれほど大きく変わりません。
したがって今後は次第に需要が増えていくものと思われます。
一方でまだ施工実績がそれほど多くはなく商品数も少ないため、信頼性の面では不安が残るのも事実です。
しかし大手塗装メーカーの商品であれば発売前には厳格な耐久試験を行っているはずなので、必要以上に不安になる必要はありません。
この記事でラジカル塗料の特徴をよく理解した上で依頼していただけたらと思います。
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