塩害から外壁を守る方法とは?おすすめの外壁塗装、対策

海からの潮風の影響で建物が劣化を起こすことを「塩害」と呼びます。

この塩害は沿岸から約3~5キロほど離れた場所でも起きると言われており、海辺や海の近くにある建物にさまざまな影響を与えています。

塩害は避けられないものですが、外壁塗装で塩害対策を事前に行うことにより塩害の被害の程度を減らすことが可能です。

この記事では、建物の劣化が塩害によるものかを判断する方法や外壁塗装による対策方法、ご自身でできるメンテナンス方法などを詳しく紹介します。

海から5キロ圏内の建物に発生する塩害とは?

海辺のメンテナンスが必要な家

塩害とは海水が蒸発して塩分が含まれている空気が建物などに付着することで、サビが発生して建物の劣化を進行させることをいいます。

風の流れや台風の際の強風などによっては海から3~5キロ程度の距離までは発生する恐れがあると言われているため、海沿いや沿岸の建物には塩害対策が不可欠です。

自然現象である以上塩害は避けることができないので、このような地域に建つ建物には定期的なメンテナンスが欠かせません。

塩害が発生する原因、発生しやすい箇所

外壁のサビや劣化

国内では海岸から500m以内の地域を重塩害地域と呼び、塩害被害を受けやすい地域と指定しています。

塩害は海風に乗って運ばれてきた塩化物イオンが金属系素材でできた外壁などに付着することで発生します。

しかし鉄筋コンクリート造の建物の場合もコンクリート自体の吸収性が高いため、塩分を含んだ水分が徐々に浸透し、内部の鉄筋にサビを発生させます。また、塩害は外壁や屋根のほかに玄関ドア、シャッター、サッシ、雨戸、給湯器、フェンス、門扉など家のさまざまな場所で発生します。

塩害が発生しやすい建物

塩害は一戸建て住宅やマンションをはじめ、アパート、工場、倉庫、店舗、ビルなどのあらゆる建物で発生します。

特に鉄筋コンクリート造の建物の場合には、塩害によって構造躯体に大きなダメージを受ける恐れがあります。

金属系サイディングは塩害の影響を受けやすい

塩害が発生しやすい素材には、スチール、トタン、サイディングなどがありますが、サイディング材の中でも金属系サイディングは素材自体が金属なので、塩害被害を受けやすいといえます。

塩害対象地域を確認する方法

海辺の街

塩害は前述したように海から5キロ程度離れていたとしても風の流れによっては発生することがあります。

お住まいの地域が塩害対象地域であるかどうかを確認するには、次の点をチェックする方法があります。

  • 家の周辺で潮の香りがするかどうか

海から多少離れていても潮の香りがする場合には、塩害を発生させる原因となる空気が流れている恐れがあります。

  • 周辺の建物にサビが多く発生している

周辺の建物にサビが多く発生している場合には、塩害が発生する可能性が高いといえます。

この場合には車にもサビが発生する恐れがあるので、車が錆びやすい場合には塩害が発生しているといえます。

塩害が発生しやすい都道府県を確認

日本は四方海に囲まれているので、ほとんどの県が塩害被害を受ける恐れがあるといえます。

しかし特に塩害被害が多いといわれているのは、千葉県、東京都、神奈川県、茨城県、静岡県、愛知県、愛媛県です。

一方、塩害被害が少ないと言われているのが福島県、栃木県、群馬県、埼玉県、長野県、岐阜県、奈良県などの山に囲まれている県です。山に囲まれている県は塩害の影響を受けることはありません。

塩害が原因で起こる住まいの劣化症状

金属製玄関ドア

この章では、塩害が原因で起こる住まいの劣化症状を紹介します。

塩害による劣化症状は外壁の材質によって変わるので、外壁材の種類ごとに分けて紹介します。

外壁材の種類が不明な場合は、以下の記事で確認することができます。

 

金属系サイディングに発生する劣化症状

外壁材の中で最も塩害被害を受けやすいのが金属系サイディングになります。

金属系サイディングは当初は外壁塗装により形成された塗膜により表面が保護されていますが、経年と共に徐々に塗膜が劣化して、塩分を含んだ雨水や風が当たると表面にサビが発生するようになります。

発生したサビをそのまま放置し続けると更に塗膜の内部にまで塩分が侵入してしまうので、次第に腐食が始まるようになります。

同じ金属系サイディングの中でもガルバリウム鋼板やアルミサイディングは錆びにくい素材ではありますが、表面に傷が付くと次第にサビが発生するようになります。

窯業系サイディングやモルタルに発生する劣化症状

窯業系サイディングやモルタルの場合には、塩分を含んだ雨水の影響を長い間受け続けると、初期症状として外壁の表面に白い粉のようなものが付着するようになります。

これは塗料の顔料が粉状になって表面に浮き出てくるもので、チョーキング現象と呼ばれています。

チョーキング現象は沿岸部の建物の方が内陸部にある建物よりも進行が早いので、そのまま放置し続けると最悪の場合には雨漏りや構造躯体の腐蝕などにつながってしまうことがあります。

チョーキング現象については、以下の記事でも詳しく紹介しています。

 

付帯部に起きる劣化症状

雨戸や面格子、手摺、換気扇フードなどの鉄部の塗膜が劣化すると次第にサビが発生するようになり、そのまま放置し続けると穴があいて交換が必要になってしまうことがあります。

塩害対象地域の建物には外壁塗装による塩害対策がおすすめ

塗料

塩害対象地域にある建物は一般的な地域に建つ建物よりも経年劣化が進行しやすいので、少しでも対処が遅れてしまうと手遅れになってしまいかねません。

また、塩害対象地域では塗料の耐用年数も2年~3年ほど短くなることが多く、こまめなメンテナンスを行う必要があります。

そこで外壁塗装によるメンテナンスを行う際には耐候性の高い塗料を使用することで、塩害の影響を抑えて次のメンテナンス時期を先延ばしすることが可能になります。

塩害対策におすすめできる塗料はフッ素系塗料や変性無機系塗料

塩害対策には、耐候性や耐塩性に優れた塗料を使用することが求められます。

こうした条件を満たす塗料として、フッ素系塗料や変性無機系塗料があります。

フッ素系塗料は、蛍石(ホタル石)という天然石を原料としたフッ素樹脂を配合した塗料のことをいい、高価でありながらも汚れを寄せ付けない、紫外線や酸性雨に強いといった優れた耐久性や耐候性を持った塗料です。

一般住宅だけではなく、高層ビルやタワーなどの大型建築物や航空機、フライパンなどにも使用されています。

価格は塗装面積1㎡あたり3,500円~5,000円と高額ですが、耐用年数は15~20年と塗料の中でも長いため、総合的に見ると非常にコストパフォーマンスに優れた塗料といえます。

フッ素塗料についての詳しい特徴やおすすめメーカーなどについては、以下の記事で詳しく解説しています。

 

一方、変性無機塗料はセラミックやケイ素などの無機物を主成分とした塗料で、外装用塗料の課題であった「紫外線による塗膜の劣化」を解決するために開発された塗料です。

無機塗料には雨の力を借りて自然に外壁の汚れを落としてくれるセルフクリーニング機能などもあるため、塩害地域の外壁の劣化緩和に役立ちます。

価格は塗装面積1㎡あたり4,500円~5,500円が費用相場となっています。

無機塗料についての詳しい特徴やおすすめメーカーなどについては、以下の記事で詳しく解説しています。

 

付帯部にも塗装を忘れずに!

住まいの中には雨戸や面格子、ドア、手摺、換気扇フード、シャッターボックスなど、金属(スチール)でできた付帯部がたくさんあります。

これらは外壁よりも早くサビが発生してしまう可能性が高く、付帯部分だけ先に傷んでしまうことが少なくありません。

そのため、塩害が発生しやすい地域では付帯部にも耐候性や耐塩性に優れた塗料を用いることが大切です。

樹脂系サイディングへの張り替えもおすすめ

耐候性や耐塩性の高い塗料を使って外壁を塗り替えるだけでは塩害被害に対して十分ではないという場合には、外壁自体を樹脂系サイディングなどの耐候性・耐塩性の高い外壁材に張り替えてしまう方法があります。

樹脂系サイディングは塩化ビニル樹脂製であることからサビたり腐食したりすることがなく、もともと素材に色(顔料)が加えられているため、塩害により色落ちを起こす心配がありません。

国内ではシェア率が1%〜2%と施工実績は多くありませんが、海外ではメンテナンスフリーの外壁材としてよく使われており、特に北米では多くの家が樹脂系サイディングを採用しています。

また、窯業系サイディングのようにシーリング材を使用することもないので、将来的なメンテナンス費用を削減することができるのもメリットのひとつです。

色柄の種類が窯業系サイディングのように豊富ではないのが難点ですが、外壁材の劣化などにより張り替えによるメンテナンスを検討しているのであれば、おすすめできる商品といえます。

樹脂系サイディングについては、以下の記事で詳しく解説しています。

外壁塗装で塩害対策を行う時の注意点

外壁の塗装作業

外壁の塩害対策としては外壁材を塩害に強いものに張り替える方法がありますが、一般的には外壁の塗り替えの際に何らかの塩害対策を講じることがほとんどです。

そこでこの章では、外壁塗装で塩害対策を行う際の注意点を紹介します。

サビや腐食がすでに発生している場合は下処理をしっかりと行う

建物が海沿いなどにあってすでにサビや腐食が生じている場合には、高圧洗浄で付着している塩を洗い流した上で下処理をしっかりと行い、塗装前にサビをきれいに取り除く必要があります。

下処理の際は、ワイヤーブラシやサンドペーパー、ディスクサンダーなどの工具を使って、サビの発生箇所を研磨してサビを除去します。下処理が十分でない場合は残ったサビから腐食が拡大するため、しっかりとサビを除去することが重要です。

また、サビによる腐食が著しく進行している場合には最悪のケースでは外壁材の張り替えが必要になることもあるので、業者に相談しましょう。

塩害対策に有効な塗料を選択する

塩害対策のために外壁塗装を行う場合は、塩害に強い塗料を選択する必要があります。

塩害対策に有効な塗料にはフッ素系塗料や変性無機系ありますが、これらを外壁塗装に用いることで塩害による影響を最低限に抑えることができます。

少しでも工事費用を安く済ませようと安価な塗料を選択した場合は塩害対策にならず、すぐにサビが再発してしまう可能性もあります。

塗膜の上からのガラスコーティングもおすすめ

車にガラスコーティングをすると、汚れが固着しにくくなって水で流れ落ちるようになります。

無機系塗料にも同じようなセルフクリーニング機能が備わっているため、汚れや塩が固着しにくくなります。

また、一般的な塗料の上から液体ガラス塗料と呼ばれる特殊な塗料を塗布する「ガラスコーティング」と呼ばれるオプションをつけることで塩害を防ぐ方法もあります。

このガラスコーティングは塩害を防ぐだけではなく、紫外線による劣化から建物を守ってくれる効果もあります。

信頼できる優良業者に施工を依頼する

塩害地域における外壁塗装工事では、使用する塗料の選定をはじめ、「既存の外壁材がどの程度の塩害被害を受けているのか?」といった事前の調査などが非常に重要になります。

また、周辺の地域で塩害の被害が多く発生しているのであれば、塩害について熟知していて以前から塩害対策の工事実績が多い業者に依頼すると安心です。

塩害被害を最小限に防ぐためには

外壁のセルフメンテナンス

塩害の症状はいきなり現れるものではなく、時間の経過と共に少しずつ現れるものです。

そのため、日頃からご自身で定期的に外壁に付着した塩分をスポンジやブラシなどを使って水で洗い流すことで、サビが発生するのを防ぐことができます。

ただし家庭用の高圧洗浄機を頻繁に使用すると塗膜を傷めてしまう可能性があります。

また、屋根や高所などの掃除が行き届かない部分はあらかじめ塩害対策に効果的な塗料を使用しておくことをおすすめします。

塩害を進行させないためにも早め早めの対策を!

点検作業

沿岸部や海から5キロ圏内の地域の建物は、塩害の被害を受ける可能性が高いといえます。

塩害が生じているにもかかわらずそのまま放置し続けると、外壁材の張り替えが必要になってしまうばかりでなく、建物全体の耐久性が著しく低下してしまう恐れがあります。

また、別荘やセカンドハウスとして建物を利用している場合にも注意が必要です。

塩害がある地域では、早め早めのメンテナンスを行うことが建物を長持ちさせる一番の秘訣になります。

そしてメンテナンスを行う際には外壁材等の状態を良く見極めた上で、適切な塩害対策を施すようにしましょう。

まとめ

塩害でのサビ

外壁塗装にとって塩害は大敵です。

塩害対策をおろそかにしてしまうと、住宅の寿命を縮めてしまうことにもなりかねません。

大切な住まいを塩害から守るためにはまずは必要な知識を身に付けて、早めに適正な塩害対策を施すことが大切です。

本記事を外壁塗装で塩害を防ぐことに役立てていただけたら幸いです。

この記事のライター:亀田 融
東証一部上場企業の不動産・建設会社の建築部門に33年間勤務。 13年間の現場管理経験を経て、取締役事業部長に就任。 事業部内で年間1000件以上のリフォーム工事を手掛けるなかで、中立的立場でのコンサルティングの必要性を実感し、独立を決意。 現在はタクトホームコンサルティングサービスの代表として、住まいに関する専門知識を生かし、多岐にわたり活躍している。 (保有資格:一級建築施工管理技士、宅地建物取引士、マンション管理士、JSHI公認ホームインスペクター、インテリアコーディネーター、マンションリフォームマネジャー、日本不動産仲裁機構ADR調停人)

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