メンテナンスフリーな外壁はある?メンテナンスの手間を減らす方法

マイホームの外壁材を選ぶ際に、多少高価でもメンテナンスが不要なものにしておけば「建築したあとに手間も費用もかからなくて良い」と思う方は決して少なくないでしょう。

しかし残念ながら、メンテナンスが一切かからないという外壁材はいまのところ存在していません。メンテナンスフリーを売りにしている商品でも、何らかのメンテナンスが必要になります。

一方では、メンテナンスの手間をできるだけ少なくした外壁材は存在しています。

そこで本記事では、外壁をメンテナンスフリーに近づける方法やメンテナンスをあまり行わなくても長持ちする外壁材などを紹介します。

外壁材に必ずメンテナンスが必要な理由

点検作業

現在日本で流通している外壁材の中で、メンテナンスが完全にフリーといわれている外壁材は存在していません。

外壁材には有機成分が含まれていることがほとんどなので、どんなに高耐久の外壁材であっても定期的なメンテナンスが不可欠になります。

そのため、一般的にメンテナンスフリーと呼ばれている外壁材を使用しても、実際には何らかのメンテナンスが必要になると思っておくことが大切です。

そして例え外壁材の素材がメンテナンスフリーであったとしてもつなぎ目のコーキング(シーリング)部分は経年劣化を起こすため、必ずメンテナンスが必要になる時期が到来します。

サイディング材の寿命は40年前後

サイディングとは工場で製造・加工された外壁材で、現場に運んで職人が張り合わせて使用するものです。

サイディング材には以下の4種類があり、近年の住宅の外壁材として最も多く採用されています。

それぞれのメンテナンス頻度は次のようになります。

サイディングの種類 メンテナンスの周期(頻度)
窯業系サイディング 7年~10年
金属系サイディング 10年~15年
木質系サイディング 7年~10年
樹脂系サイディング 10年~20年
※ただし塗り替えは不要

全てのサイディングの寿命は30年~40年といわれており、その間定期的なメンテナンスを行うことが不可欠になっています。

窯業系サイディングは現在の国内の新築住宅で最も多く採用されていますが、7年~10年ごとに外壁塗装などによるメンテナンスが必要になります。

また、金属系サイディングの中には比較的錆びにくいものもありますが、10年~15年程度で防錆のために再塗装が必要になります。樹脂系サイディングは国内ではあまり普及していませんが、ほかのサイディング材と比較して優れた耐久性を持っているといえます。

外壁塗装やコーキングの補修は必ず必要

外壁の塗装作業

住宅の一般的な外壁材であるサイディングやモルタル壁のメンテナンス方法は「塗装」が基本です。

塗膜が劣化すると雨漏りの原因になるばかりでなく、構造躯体の腐蝕やシロアリの発生などの住宅全体のトラブルにつながる恐れがあります

そのため、定期的に塗り替え工事を行うことが不可欠になります。

メンテナンスが必要な時期は外壁塗装に使用した塗料の耐用年数によって異なります。

塗料の種類ごとの耐用年数の目安は次のようになります。

塗料の種類 耐用年数の目安
アクリル塗料 5年~8年
ウレタン塗料 7年~10年
シリコン塗料 10年~15年
ラジカル(制御型)塗料 12年~15年
光触媒塗料 12年~20年
フッ素塗料 15年~20年
無機塗料 20年~25年

また、サイディングなどの外壁材の場合には外壁材同士を繋いでいるコーキング(シーリング)部分の劣化にも注意する必要があります。

通常は外壁塗装を行う際にコーキング(シーリング)の打ち替え工事等を併せて行いますが、例えタイルや樹脂系サイディングなどのメンテナンスフリーの外壁材であったとしても、コーキングのメンテナンスは必ず必要になります。

メンテナンスの手間がかからない外壁材3種

サイディングの住宅

現時点では完全にメンテナンスが不要な外壁材は存在しませんが、メンテナンス頻度が少ない外壁材は存在しています。

この章では、比較的メンテナンスの手間がかからない外壁材を3つ紹介します。

タイル:最もメンテナンスフリーに近い外壁材

タイルは石や粘土からなる生地を高温で焼成し、釉薬によってデザイン性や機能性を付加した建築材料のことをいいます。

タイル自体は無機質素材であるため基本的に経年劣化することがなく、定期的なメンテナンスは不要です。

しかし部分的にタイルに浮きが発生したりタイル目地が剥がれてきたりするので、10年~20年程度を目安にタイルの浮きの点検・補修や目地の補修が必要になります。

また、近年では外壁タイルにクリア塗装や防水塗装を行って汚れ防止対策としたり、表面を保護して艶出し効果を発揮させたりすることがあります。

詳しくは以下の記事を参考にして下さい。

 

金属系サイディング(ガルバリウム鋼板):種類が豊富で耐用年数が長い外壁材

さまざまな種類がある金属系サイディングの中でも、近年ではガルバリウム鋼板が主流になっています。

ガルバリウム鋼板はアルミニウム55%+亜鉛43.4%+ケイ素1.6%によって構成されていて、金属にもかかわらず錆びにくいという特徴があります。

また、非常に軽量であることから新築住宅だけではなく外壁カバー工法(重ね張り)のリフォームにも使用されています。

ガルバリウム鋼板製のサイディング材はひび割れ等が起きにくく、サビなどが発生していなければ20年近くメンテナンスが不要です。

金属系サイディングの特徴や費用、おすすめメーカーなどは以下の記事を参考にして下さい。

 

樹脂系サイディング:雨や塩害・凍害に強く色褪せがほとんどない外壁材

樹脂系サイディングはプラスチックの仲間である塩化ビニル樹脂を主原料としている外壁材で、北米では50年以上も前から普及しており、そのシェア率は約50%を占めています。

一方国内でのシェア率は僅か1%程度とあまり普及していませんが、凍結によるひび割れやサビ、腐食の心配もほとんどないので、北海道や東北地方などの寒冷地を中心に採用されるようになってきています。

樹脂系サイディングは素材自体に顔料が練り込まれているため色褪せすることがほとんどなく、外壁塗装によるメンテナンスを行う必要がありません。

このような理由から、国内で流通しているサイディング材の中では唯一メンテナンスフリーといわれています。

ただし価格が他のサイディング材と比べて高額であることや、国内で樹脂系サイディングを扱える業者が少ないことがデメリットといえます。

樹脂系サイディング特徴や費用などについては、以下の記事を参考にして下さい。

外壁をメンテナンスフリーに近づける方法

外壁の点検作業

完全にメンテナンスフリーの外壁材は今のところ流通していませんが、少しの工夫でご自宅の外壁材をメンテナンスフリーに近づけることは可能です。

この章では、外壁をメンテナンスフリーに近づける方法を紹介します。

耐候性の高い塗料で外壁塗装を行う

外壁塗装のメンテナンス頻度を少なくするためには、耐候性の高い塗料を使用して外壁塗装工事を行うことが不可欠です。

通常、新築工事や塗り替え工事の際にはシリコン塗料を使用することが多いのですが、これを耐候性の高い塗料に変えることでメンテナンスの頻度を下げることができます。

耐候性の高い塗料には、フッ素塗料や無機塗料があります。それぞれの塗料について詳しく紹介します。

■フッ素塗料

フッ素塗料とは蛍石を原料としたフッ素樹脂を配合した塗料のことで、非粘着性(汚れを弾く)、耐薬品性(酸性雨に強い)、低摩擦性(汚れが付着しにくい)、耐候性(紫外線に強い)といった特徴があります

炭素とフッ素の結合が非常に強固なので、紫外線による破壊を受けにくくなっています。身近な例としてはフライパンや調理器具などがあり、日常品にも数多く使われています。

耐久性が非常に高いため、建築物では短期スパンでの塗り替えが困難な大型建造物や商業施設などに使用されています。

高価なので塗り替え費用は高額になりますが、結果的に建物のライフサイクルコストを削減する効果が見込めます。

フッ素塗料については、以下の記事で詳しく解説しています。

 

■無機塗料

無機物とは石やレンガ、ガラスなど炭素を含まない物質を指し、紫外線で劣化することがなく半永久的に耐久します。

無機成分だけで塗料を作ることができれば半永久的なものになるのですが、無機成分だけだと硬すぎて塗装することができません。

そこで無機物の耐久性を活かしつつ合成樹脂などの有機物を混ぜて塗料としたものが無機塗料です。

無機塗料には劣化の原因となる有機物が含まれているため半永久的に耐久することはありませんが、それでもフッ素塗料を超える高い耐久性を持つ塗料として注目されています。

無機塗料については、以下の記事で詳しく解説しています。

 

コーキング(シーリング)部分に高耐候性シーリング材を使う

コーキングを注入する作業

コーキング(シーリング)とはサイディングなどの部材同士のつなぎ目に充填して雨水の侵入を防ぐためのものですが、通常は経年劣化により10年程度でコーキング材が縮み、ひび割れや剥がれが発生します。

近年では改良が進み耐候性の高いものが出回っているので、このような高耐候性コーキング材(シーリング材)を使うことでメンテナンス頻度を下げることができます

外壁塗装に使用されるコーキング(シーリング)については、以下の記事を参考にして下さい。

 

タイルに吸水防止材を塗布する

外壁のタイル自体は経年劣化することはありませんが、劣化したタイルの目地に雨水が浸みこむようになるとタイルを貼り付けている接着剤が劣化して、タイルに浮きや剥がれが発生するようになります。

吸水防止材はタイル目地に浸透して雨水などの侵入を防ぐほかに、万が一内部に雨水が浸入してもその水分を放出させる通気性を持っています。

そのため、タイル目地に吸水防止材を塗布することがメンテナンスフリーを実現させる上で効果的といえます。

メーカーが開発したメンテナンスフリーの外壁を採用する

各建材メーカーやハウスメーカーもメンテナンス性を向上させるためのさまざまな外壁材や工法を開発しています。ここではその中の2つを紹介します。

■ニチハのメンテナンスフリー外壁材「プレミアムシリーズ」

窯業系サイディングを主体とした内・外装建材メーカーのニチハでは、超高耐候塗料「プラチナコート30」を採用しています。

また、専用のシール材である「プラチナシール」や外壁同士の接合に「ドライジョイント工法」を採用、「塗膜の変色・褪色30年保証」を実現しています。

■積水ハウスのコンクリート外壁「ダインコンクリート」

積水ハウスでは、従来のプレキャストコンクリートを高度に進化させた独自の外壁専用材「ダインコンクリート」に、雨や日光などの自然の力で汚れを洗い落とす防汚塗装「タフクリア-30」を施すことで、メンテナンスサイクル30年を実現させています。

自分でメンテナンスをしないで業者に依頼する

時々外壁リフォームをDIYで行おうとする方がいます。

しかし外壁をメンテナンスフリーに近付けたいのであれば、施工には高度な技術や専門知識、経験が必要です。自分でメンテナンスを行おうとせずに、専門業者に依頼するようにしましょう。

メンテナンスの頻度を下げるために定期点検はしっかりと!

どんなに耐用年数の長い外壁材や塗料であったとしても、立地条件や周辺環境によっては紫外線や雨風、潮風、排気ガスなどの影響を受けて予想以上に早期に劣化してしまうことがあります。

また、台風や地震などによって予期せぬダメージを受けてしまうこともあるでしょう。

ダメージを起きた際に放置してしまうと建物の寿命が短くなってしまいますが、早期に対処することでメンテナンス費用も少なく済み、建物に対する悪影響を最低限に抑えることができます。

劣化による出費を最小限に抑えてメンテナンス頻度を下げるためには定期的に点検を行い、劣化の兆候を発見したら傷が小さなうちに補修しておくことが大切です。

まとめ

現時点では「完全なメンテナンスフリーの外壁」は存在しません。

どんなに耐久性の高い外壁材であっても、長年紫外線や雨風に晒され続けていれば経年劣化することは避けられません。

しかし定期的な点検とこまめなメンテナンスを心がけることで外壁を長持ちさせることができます。

少しでも長く快適に過ごせるように、本記事の内容を役立てていただければ幸いです。

この記事のライター:亀田 融
東証一部上場企業の不動産・建設会社の建築部門に33年間勤務。 13年間の現場管理経験を経て、取締役事業部長に就任。 事業部内で年間1000件以上のリフォーム工事を手掛けるなかで、中立的立場でのコンサルティングの必要性を実感し、独立を決意。 現在はタクトホームコンサルティングサービスの代表として、住まいに関する専門知識を生かし、多岐にわたり活躍している。 (保有資格:一級建築施工管理技士、宅地建物取引士、マンション管理士、JSHI公認ホームインスペクター、インテリアコーディネーター、マンションリフォームマネジャー、日本不動産仲裁機構ADR調停人)

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