外壁塗装のセルフクリーニング機能とは?費用、効果、おすすめ塗料を紹介
外壁塗装に使用される塗料にはさまざまな種類があり、種類ごとに機能や耐用年数が異なります。
その中でも最近ではセルフクリーニング機能がついている塗料の人気が高く、外壁塗装に使用する方が増えています。
そこでこの記事では、セルフクリーニング機能の基礎知識やセルフクリーニング機能がついた塗料の代表例をはじめ、使用できる条件や費用相場などを紹介します。
目次
セルフクリーニング機能とは?
セルフクリーニング機能とは、雨水を利用して汚れを洗い落とす機能で、雨が降れば汚れを勝手に落としてくれる効果のことをいいます。
人体に悪影響を及ぼすこともないので安心して使用することができます。
このようなセルフクリーニング機能がついた塗料は「低汚染塗料」と呼ばれ、低汚染塗料の中にはナノコンポジットエマルション樹脂などが含有されています。
ナノコンポジットエマルション樹脂は従来のエマルション樹脂と比べて遥かに小さく、塗膜の隙間から内部に汚れが侵入するのをブロックして、降雨により汚れを洗い流します。
セルフクリーニング機能の仕組み
外壁には非常に汚れが付きやすく、日々のチリやホコリ、排気ガスなどの汚れが付着します。
セルフクリーニング機能がついた低汚染塗料は塗料の表面部分に特別なコーティングが施されているため、塗膜の隙間から汚れが入りにくくなっています。
また、塗膜のきめ細かさだけでなく雨水とコーティングが馴染みやすい構造であることから、降雨により外壁に付着した汚れが落ちる仕組みになっています。
この仕組みがセルフクリーニング機能の仕組みとなっており、セルフクリーニング機能がついた塗料で外壁塗装を行うことで、外壁そのものに汚れが付着しにくくなります。
セルフクリーニング機能付き塗料で塗装すると外壁の寿命が延びる
外壁の劣化は、日々紫外線を受け続けることや汚れが付着することにより引き起こされます。
セルフクリーニング機能がついた低汚染塗料で外壁塗装を行うと、外壁に汚れが付きにくくなります。
外壁に汚れが付きにくくなると美観が長く保持できることから、結果的に外壁の機能が守られて寿命を延ばすことにつながります。
セルフクリーニング機能付き塗料のメリット
ここではセルフクリーニング機能付き塗料のメリットを具体的に紹介します。
遮熱性に優れている
外壁の温度上昇の原因の一つは、外壁に付着している汚れが熱を吸収してしまうことによるものです。
セルフクリーニング機能が付いた低汚染塗料は汚れが付着しにくいので遮熱性能が高く、赤外線を反射して高い省エネ性能を発揮します。
これにより夏は涼しく冬は暖かいといった快適な室温を保つことができるようになり、冷暖房費の削減につながります。
耐久性が高くひび割れしにくい
低汚染塗料は劣化しにくいため耐久性が高く、地震発生の際にもひび割れが発生しにくいのが特徴です。
ただし同じ低汚染塗料と呼ばれるものの中でも、光触媒塗料やフッ素塗料、無機塗料は塗膜が硬いため、ひび割れしやすくなることもあります。
外壁を美しく保ちメンテナンスの手間がかからない
低汚染塗料にはセルフクリーニング機能があるため、長期間外壁を美しい状態に維持することができ、メンテナンスを頻繁に行う必要がありません。
そのため、今まで必要だった外壁洗浄等のメンテナンスの手間や費用を省くことができます。
セルフクリーニング機能付き塗料のデメリット
セルフクリーニング機能付き塗料には、従来の塗料にはなかったさまざまなメリットがある一方でデメリットもあります。
セルフクリーニング機能付き塗料のデメリットには次のようなものがあります。
施工が難しく専門業者による施工が必要
セルフクリーニング機能付き塗料は施工する際に注意すべき点が多いため、施工業者には高い専門性と技術が求められます。
したがってセルフクリーニング機能付き塗料を使って外壁塗装を行う場合には、業者の選定に注意が必要です。
過度な汚れには対応できない
低汚染塗料が持つセルフクリーニング機能は、どんな汚れに対しても対応できるわけではありません。
鳥の糞や樹液などの過度な汚れや、さびや黄砂などの無機質系の汚れが付着した場合には効果を発揮しないので、このような汚れを見つけた場合には自分で除去することが必要になります。
そのため、山に隣接して建っている家や海沿いに建つ家では十分な効果が発揮できないことがあります。
太陽光や雨が当たりにくい場合は効果を感じにくい
低汚染塗料の中でも代表的な光触媒塗料は、太陽光(紫外線)や雨にあたることでその機能を発揮することができるので、太陽光や雨が当たりにくい場所では役割を十分に果たすことができません。
そのため、日当たりの悪い場所や北側の外壁では効果が発揮されないこともあります。
色のバリエーションが少ない
セルフクリーニング機能を持つ塗料の原料は白色顔料であるため、選択できる色は白に近い淡い色が多くなります。
そのため、濃い色を選択することが難しく、選択可能な色のバリエーションは少なくなってしまいます。
セルフクリーニング機能付き塗料の代表格は光触媒塗料
低汚染塗料と呼ばれる塗料にはさまざまな種類がありますが、現在流通している低汚染塗料の中で最もメジャーなもののひとつに光触媒塗料があります。
光触媒塗料とは、太陽光に含まれる紫外線によって化学反応を起こすことで外壁に付着した汚れを浮かせ、降雨により汚れを洗い流すことができる塗料のことをいいます。
また、紫外線を吸収することで活性酸素が発生し、汚れや有害物質などを分解することができます。
太陽光だけではなく蛍光灯の明かりでも化学反応が起きるため、外壁塗装のみならず内装にも使用されています。
セルフクリーニング機能でカビも軽減
光触媒塗料は原料として含まれている酸化チタンが紫外線によって化学反応を起こし、塗膜表面についた汚れだけでなく、カビや藻、細菌なども分解してその発生を抑制することができるといわれています。
近年ではその特徴から、コロナウイルスに対しても有効な室内塗料として注目されているようです。
大気中の有害物質を分解するため環境にも優しい
外壁塗装に光触媒塗料を使用することにより、太陽光があたることで発生する活性酸素が空気中に含まれている窒素酸化物を酸化させ、大気中から除去するといわれています。
窒素酸化物とは車の排気ガスや工場の排煙に含まれる有害物質のことなので、光触媒塗料は地球環境や人体にも優しいといえます。
光触媒塗料を外壁に使用する場合の条件
光触媒塗料が効果を発揮するためにはいくつかの条件がありますが、「紫外線」や「雨」にあたることが条件になっています。
そのため、紫外線や雨にあたりにくい部位や立地の場合には十分な効果が得られません。
このような理由から、光触媒塗料を使用する場合は隣接する建物との間の距離が1メートル以上あると良いといわれています。
立地条件によっては太陽光がよくあたる場所だけしか効果が発揮されない可能性もあり、日陰になる場所の汚れが目立ってしまうこともあります。
さらに山に隣接して建っている場合や海沿いに建っている場合には汚れやもらいサビが発生しやすいので、光触媒塗料の効果が実感できない可能性もあります。
また、外壁がモルタルの場合も、モルタルのひび割れに塗膜が追随できずにひび割れが表面化してしまうので、一般的に光触媒塗料は適しません。
このように光触媒塗料には向き・不向きがあるので、採用する際には注意が必要になります。
光触媒塗料で外壁塗装をする場合の費用相場
この章では、光触媒塗料で外壁塗装をする場合の費用相場を紹介します。
光触媒塗料の施工単価の相場は1㎡あたり3,800~5,500円程度で、延べ床面積30坪程度の2階建住宅の場合には総額90~140万円程度になるのが一般的です。
見積もり書の内訳の例は次のようになります。
項目 | 数量 | 単価 | 金額(円) |
足場 | 230㎡ | 900 | 207,000 |
飛散防止ネット | 230㎡ | 200 | 46,000 |
高圧洗浄 | 130㎡ | 250 | 32,500 |
養生 | 130㎡ | 200 | 26,000 |
シーリング打ち替え | 200m | 1,000 | 200,000 |
下地補修 | 1式 | 25,000 | |
外壁塗装 光触媒塗料 |
100㎡ | 4,000 | 400,000 |
軒天塗装 | 30㎡ | 1,100 | 33,000 |
破風板塗装 | 35m | 700 | 24,500 |
廃棄物処分 | 1式 | 20,000 | |
諸経費(10%) | 101,400 | ||
合計 | 1,115,400 |
※軒天、破風板の塗装には光触媒塗料を使用していません
※横にスクロールしてください
外壁塗装に使用される他の塗料との価格差
外壁塗装に使用される主な塗料の施工単価の相場は次の通りです。
塗料の種類 | 単価の相場 |
アクリル塗料 | 1,000~1,800円/㎡ |
ウレタン塗料 | 1,500~2,500円/㎡ |
シリコン塗料 | 1,800~3,500円/㎡ |
ラジカル(制御型)塗料 | 2,200~4,000円/㎡ |
光触媒塗料 | 3,800~5,500円/㎡ |
フッ素塗料 | 3,500~5,000円/㎡ |
無機塗料 | 4,500~5,500円/㎡ |
表からもわかるように光触媒塗料の価格は高級塗料と呼ばれているフッ素塗料とほぼ同じです。
各塗料の特徴などは、以下の記事で詳しく紹介しています。
光触媒塗料の代表メーカーと商品例
この章では光触媒塗料の代表的なものを紹介します。
エヌティオ(日本特殊塗料株式会社)
これまでの光触媒塗料は樹脂(有機物)に混合していたため光触媒100%の塗料化は困難とされてきましたが、日本特殊塗料が製品化したエヌティオは光触媒100%の塗料です。
光触媒効果を最大限に発揮することができ、優れた防汚性、抗菌性、脱臭性をもつ外壁を実現します。
また、排気ガスなどの大気中の有害物質を分解することから、外気の浄化作用にも優れています。
ピュアコート(株式会社ピュアレックス・テクノロジーズ)
ピュアコートはフッ素樹脂が骨格となっているため優れた耐候性を示し、促進耐候試験では20年以上の耐候性となっています。
外壁の色あせの原因となる紫外線をカットし伸張性にも優れているので、弾性塗膜やシーリング材の挙動にも追従することが可能です。
また、塗膜自体がイオン伝導性を持っていることから静電気を防ぎ、冬場の乾燥状態でもチリ・ホコリ等が付着しにくくなります。
NU-COAT-AP(株式会社ニュートラル)
NU-COAT-APは外装用光触媒トップコート剤です。
JIS規格である光触媒性能基準を高水準でクリアし、従来の光触媒塗料では不可能であった1工程での施工が可能です。
また、活性酸素の分解力によりカビや藻などの細菌の繁殖を抑え、光触媒の施工で心配されるクラックも発生しにくくなっています。
施工はスプレーで塗布するだけで、気温が20度の環境下で施工後約3時間で乾燥します。
光触媒塗料が使用できない場合はフッ素塗料や無機塗料がおすすめ
隣接する建物との距離が近くて太陽光があたりにくかったり山や海に近かったりする場合には、光触媒と同等グレードのフッ素塗料がおすすめです。
フッ素塗料がおすすめな理由
フッ素塗料は優れた耐久性や耐候性を持っている低汚染塗料で、耐用年数も約15~20年と、光触媒塗料とほぼ同じになります。
このような理由から、高層ビルや大型の商業施設などの頻繁に塗り替えができない建物に数多く使用されています。
セルフクリーニング機能は光触媒塗料に劣るものの、親水性があるので雨と一緒に汚れを洗い落としてくれます。
また、防カビ、防藻性にも優れていて光沢が長持ちするので、長期間美観を維持することができます。
フッ素塗料については、以下の記事で詳しく解説しています。
無機塗料がおすすな理由
また、無機塗料はフッ素塗料や光触媒塗料よりも施工単価が高いものの、耐用年数や機能面では最もグレードの高い塗料といわれています。
塗料の原料に石やガラスなどの炭素を含まない無機物を配合した塗料なので紫外線で劣化しにくく、優れた耐久性を持っているのが特徴です。
親水性も高くセルフクリーニング機能もついていることから、費用が高くなっても外壁を長く綺麗な状態に保ちたいという方におすすめの塗料です。
無機塗料については、以下の記事で詳しく解説しています。
セルフクリーニング機能付き塗料はこんな方におすすめ!
この章では、セルフクリーニング機能付き塗料をぜひおすすめしたい方について解説します。
都市部や幹線道路沿いなどの排気ガスの影響を受けやすい地域の方
セルフクリーニング機能がついた低汚染塗料は、都市部にお住まいの方や幹線道路沿いにお住まいの方など、車の排気ガスの影響を受けやすい地域にお住まいの方に最もおすすめできる塗料です。
セルフクリーニング機能により外壁の洗浄頻度を減らしたい方
セルフクリーニング機能は外壁に付着した汚れを雨で勝手に洗い流してくれる便利な機能なので、外壁を自分で洗浄する頻度を抑えたい人におすすめの塗料といえます。
ただしどんな汚れでも落としてくれるわけではないので、外壁の汚れが目立つようになってきたら適宜掃除を行う必要があります。
外壁を白色系にしたい方
セルフクリーニング機能付きの塗料はその性質からカラーバリエーションが少なく、白に近い淡い色が多くなります。
したがって濃い色で塗装したい方には不向きで、白色系のカラーで塗装したい方に向いているといえます。
費用よりも機能面を重視する方
セルフクリーニング機能付きの塗料は、一般的に多く利用されているシリコン塗料やウレタン塗料よりも費用が高額になる傾向があります。
そのため、価格の安さよりも塗料の耐久性や防汚性などの機能面を重視する方に向いている塗料です。
セルフクリーニング機能付き塗料で外壁塗装を行う際の注意点
せっかく高額な費用をかけてセルフクリーニング機能付き塗料で外壁塗装を行うのであれば、施工後に後悔するようなことになるのは避けたいものです。
そこでこの章では、セルフクリーニング機能付き塗料による外壁塗装を成功させるための注意点を紹介します。
セルフクリーニング機能付き塗料についての知識を持っておく
セルフクリーニング機能付き塗料の中でも光触媒塗料などは、施工に必要な条件や不向きな例などがあり、条件によっては塗料の持つ性能を十分に発揮することができないことがあります。
しかし業者によっては受注金額を引き上げたいために、こうした条件などを考慮しないで高額な塗料をすすめてくることがあります。
使用する塗料を選定する際には専門的な知識が必要になるので、ある程度業者に任せてしまうのはやむを得ませんが、できる限り自分でも塗料についての知識を事前に身に着けておくことで失敗するリスクを減らすことができます。
すすめたい塗料のメリットばかり強調し、デメリットについては説明しない業者もいるので、業者のセールストークを信用しすぎないことが大切です。
施工実績がある業者に依頼をする
高性能、多機能で高価な塗料になるほど施工する際には業者に専門的な知識や技術力が必要です。
一般的な塗り方では塗料が持っている性能を100%発揮させることができないことがあるので、注意が必要です。
また、塗料によっては塗料メーカーが施工業者を指定していることもあります。
このような専門知識や技術力があるかどうかを判断するには、過去の施工実績を調べてみることをおすすめすすします。
業者のホームページや会社案内、知人からの口コミ情報などで必ず確認しておくことが大切です。
できれば施工中の現場や引き渡し後の現場などに案内してもらうと良いでしょう。
複数の業者から相見積もりを取得する
外壁塗装工事に限らず建築工事を適正な価格で業者に発注するためには、複数の業者に同じ工事内容で相見積もりを依頼して、各社の見積もり書の内容を比較・検討することが大切です。
その際には単に見積もり金額の高い安いのみで判断するのではなく、見積もり書に記載されている工事項目や数量、単価などを細かくチェックすることが重要です。
たとえ見積もり金額が安い場合であっても、工事内容が明確になっていない場合には後から高額な追加工事費用を請求されたり手抜き工事をされてしまったりすることもあります。
外壁塗装の相見積もりの正しい取り方や見積もり書の比較方法は、以下の記事で詳しく紹介しています。
まとめ
セルフクリーニング機能付き塗料は単に塗料の性能が優れているだけでなく、環境への配慮がされていることも多いので、おすすめの塗料といえます。
しかし工事費が高額になる点や、施工するのに高い技術力が求められる点、悪質な業者によって手抜き工事が行われることもあるなど、注意すべき点が多いのも事実です。
そのため、信頼できる業者に工事を依頼することが非常に重要になるといえます。
本記事では、セルフクリーニング機能付き塗料の基礎知識や代表的な塗料、使用できる条件、実際に塗装工事を行う際の注意点などを詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしていただけたら幸いです。
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