外壁の汚れの落とし方|洗浄方法、汚れを防ぐ方法をプロが解説

建物の外壁は新築後数年が経過すると汚れが目立つようになりますが、汚れが目立ってくると見た目が悪くなったり、外壁の劣化が進行する原因になったりします。

また、汚れの中にはプロの業者にお任せした方が良いものもあるほか、外壁の塗り替えが必要な汚れもあるため、しっかりとした見極めが必要です。

そこでこの記事では外壁の汚れを落とす方法や洗浄方法の種類をはじめ、外壁の塗り替えをした方が良い場合の判断方法などを紹介します。

外壁の汚れの種類と原因

金属製玄関ドア

外壁の汚れいくつかの種類があり、その種類ごとに原因が異なります。

基本的に築年数が経過するほど汚れが付着しやすくなりますが、汚れが固着してしまうとDIYでは落としにくくなってしまいます。

そこで初めに、外壁に付着する汚れの種類と原因から紹介します。

汚れの種類 原因 特徴


排気ガス
空気中のホコリ
排気ガス
外壁全体のくすみ
油汚れ
コケ汚れ 日当たりの悪さ
湿気
外壁が緑色になる
カビ汚れ 日当たりの悪さ
湿気
外壁に黒ずみが発生する
サビ汚れ 経年劣化による酸化 白サビや赤サビの発生
金属部分の腐食
雨汚れ 雨などの水分
経年劣化
外壁表面の黒い筋やシミ
塗料の色あせ チョーキング現象 外壁表面に白い粉が発生

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塵・埃・排気ガスによる外壁の汚れ

大気中の塵や埃、排気ガスが外壁の凹凸のある部分に入り込んでしまうと、家全体がくすんだように茶色っぽく見えるようになります。

また、排気ガスの場合には油汚れのようになって、広範囲にわたって少しずつ汚れが広がっていきます。

コケによる外壁の汚れ

外壁の苔

北面の外壁などで湿気が多くなると、外壁面にコケの繁殖による緑色の汚れが目立つようになります。

コケを放置しておくと見映えが悪くなるばかりでなく、コケの胞子が健康被害をもたらすこともあるので、決して軽視することはできません。

特に山が近いエリアなどでは、外壁面に付着したコケが多く見られる傾向があります。また、コケは日光が当たる場所であっても湿気が多くなると発生するため、湿気が多い場所でも発生頻度が高くなります。

カビによる外壁の汚れ

外壁にカビが発生するのはごく稀で、コケや藻に比べると発生頻度はそれほど高くありません。

しかしカビの胞子は空気中に浮遊しており、外壁に付着することもあります。

直射日光が当たらない、湿気が多い、カビにとっての栄養(有機物=汚れ)がある、近くに川や田んぼがあるなどの環境下にあるとカビが発生しやすくなります。

特に日当たりの悪い北面の外壁や風通しの悪い場所、凹凸のある外壁などでは、カビが繁殖して黒っぽい汚れが目立つようになります。

 

サビによる外壁の汚れ

外壁がサビた家

金属製の外壁材や鉄部などでは、表面の塗膜が劣化したり傷ついたりすると酸化してサビが発生します。サビ汁による赤褐色の汚れは美観を損ねるほか、金属が腐食し始めた状態を示すものなので、早急に補修が必要です。

また、金属製の外壁材でない場合でも、外壁に接する金属部分が錆びることで外壁面にもサビ汚れが広がることがあります。

 

雨による外壁の汚れ

雨によって外壁が汚れると、サッシやベランダの手すりの笠木の下などに下方に向かって黒い筋のようなものが付着するようになります。

これは雨で流された埃などが流れ落ちずに残ってしまったもので、雨垂れとも呼ばれています。

そのまま放置しておくと汚れが濃くなり、外壁にこびりついてしまうことがあります。

塗料の色あせによる外壁の汚れ

チョーキング現象

外壁が長期間紫外線を浴び続けると、やがて塗膜が劣化して色あせが生じるようになります。

さらに塗膜の劣化が進行すると防水性を失い、外壁に白い粉が発生する劣化症状であるチョーキング現象が発生するようになります。

外壁にチョーキング現象が発生した場合には外壁の洗浄のみで対応することができないので、外壁塗装の塗り替えが必要です。

色あせ、チョーキング現象については、以下の記事で詳しく解説しています。

外壁の汚れは外壁の劣化につながる危険性がある

外壁は常に雨風や排気ガス、湿気などに晒され続けているため、どんなにグレードの高い塗料を使って塗装したとしても、どうしてもさまざまな汚れが付着してしまいがちです。

近年では光触媒などのセルフクリーニング機能を持つ塗料が開発されていますが、外壁の汚れを完全に防ぐのは難しいので、定期的にブラシやスポンジ、外壁用洗浄剤などを使って洗浄すると共に、汚れを付きにくくする工夫が必要になります。

汚れをそのまま放置し続けると単に建物の見た目が悪くなるだけではなく、外壁の劣化を早めてしまい、雨漏りやシロアリの繁殖、構造躯体の腐朽の原因になってしまう恐れがあります。

そうなってしまうと、建物自体の耐久性や資産価値を著しく下げてしまうことにもなりかねません。

汚れは時間が経つほど落ちにくくなってしまうので、こまめに汚れを落とすことで家のメンテナンス費用を削減することに繋がります。

光触媒塗料についてはこちらの記事を参考にしてください。

 

外壁の汚れの洗浄方法

この章では、外壁の汚れを落とす洗浄方法を紹介します。

ブラシやスポンジを使用して外壁の汚れを落とす

比較的汚れが少ない場合は、どこの家庭でも準備することができる柔らかいブラシやスポンジ、ホース、バケツなどを使って外壁を水洗いします。

その際、硬いブラシなどで強くこすってしまうと表面の塗膜を傷めてしまうので注意が必要です。

また、ホームセンターなどで販売されているなどを使用する場合には、洗剤が残っていると塗膜の劣化を早めることにもなりかねないので、最後に念入りに水で洗い流すことが大切です。

自分で外壁を洗浄する方法は最もコストがかからない方法ですが、高所作業が必要になってしまう場合には危険なので、決して無理をしないようにしましょう。

高圧洗浄機を使用して外壁の汚れを落とす

油汚れやカビ・コケなどの菌は、簡単な水洗いだけでは完全に汚れを落とすことができません。

特に外壁の深部に根を張ったものは、菌を残してしまうと洗浄してもすぐに再発してしまいます。

そこでブラシやスポンジでは汚れが完全に落ちない場合には、ホームセンターなどで購入できる家庭用の高圧洗浄機を使って外壁を高圧洗浄する方法があります。

高圧で水を噴出して外壁に付着した汚れを弾き飛ばすことができるので、頑固な汚れでも落とすことができます。

しかし汚れ落ちが良く非常に便利な一方で、隣家に水が飛散してしまう、塗膜を傷つけてしまって外壁の劣化を早めてしまう恐れがある、窓や換気口などから室内に水が入り込むことがある等のデメリットもあるので、取り扱いには十分注意が必要です。

高圧洗浄についてはこちらの記事を参考にしてください。

 

 

業者に依頼して外壁の汚れを落とす

自分ではどうしても落ちない汚れがある、高所で洗浄できない箇所がある、高圧洗浄機の取り扱いが不安といった場合には、プロによる外壁洗浄サービスを利用する方法があります。

プロに依頼することで、足場や飛散防止用ネットを設置して高所で手の届かない部分や頑固な汚れまで、強力な外壁洗浄剤や業務用の高圧洗浄機を使って隅々まで洗浄してもらうことができます。

また、外壁の塗り替えが必要かどうかを判断してもらうこともできるので、外壁の診断・調査を含めて一度プロの専門業者に相談してみることをおすすめします。

ただし業務用の高圧洗浄機で洗浄した場合、家庭用の高圧洗浄機よりも強力なので塗膜を傷めてしまう可能性があります。

この点も含めて、プロの意見を聞いて見ると良いでしょう。

外壁の汚れを業者に依頼して洗浄する場合の費用相場

業者に依頼して外壁洗浄作業を行う場合には、高圧洗浄作業費用のほかに足場や飛散防止用ネットの設置費用が必要になります。

費用の相場は、足場の設置が700~1,000円/㎡、飛散防止用ネットの設置が100~200円/㎡、高圧洗浄が200~300円/㎡程度で、延べ床面積30坪(約100㎡)程度の木造2階建住宅の場合は総額20万円前後が目安となります。

ただし平屋建てで足場が不要なケースや、足場を組まずに高所作業車を使って作業を行うケースなど、大幅に費用を抑えることができる場合もあります。

また、プロの専門業者が高圧洗浄を行う場合には、近年ではウォータージェット洗浄技術を使った高温高圧洗浄を行い、スチームの効果により細かい汚れまで綺麗に洗い落としたり、環境に配慮した専用のバイオ洗剤を使用したりする業者も増えています。

バイオ洗浄は根を張ったカビやコケを取り除くことができるので、再発防止対策としても有効です。

ただし費用は300~450円/㎡と、通常の高圧洗浄よりも若干高めになります。

以上のように外壁の洗浄はDIYでも可能とはいえ、仕上がりや効果にはプロと素人では明らかな違いが生じます。

また、家庭用の高圧洗浄機も新たに購入するとなると最低でも2~3万円はするので、外壁の洗浄にしか使わないのであれば業者に依頼することをおすすめします。

外壁の汚れを防ぐ方法

前述したように外壁の汚れを落とすのは決して楽ではないので、塗り替えの際にはできるだけ汚れにくい塗料汚れが目立たない色で塗り替えることをおすすめします。

そこでこの章では、外壁の汚れを防ぐ方法を紹介します。

耐汚性の高い塗料を選択する

外壁塗装に使用される塗料にはさまざまな種類があり、種類によって機能や耐久性が異なります。

外壁の汚れをできるだけ防ぎたいのであれば、カタログに防汚性・防藻性・防カビ性などといった言葉が記載されている塗料や、光触媒などのセルフクリーニング機能を持った塗料がおすすめです。

これらの塗料を使用しても汚れが付着するのを完全に防ぐことはできませんが、外壁の汚れをある程度長期間防ぐことができるようになります。

また、有機塗料と無機塗料を混ぜ合わせて作られるハイブリット塗料であれば光沢が長続きしやすく、親水性が高いもの(雨水が外壁面を覆って汚れを浮かして洗い流すもの)が多いので汚れが落ちやすくなります。

汚れが目立たない外壁を選ぶ

ブラウン系の外壁の家

外壁を塗装する際には、汚れが目立たない色を選ぶことも大切です。

外壁の色として人気がある白系の外壁は、雨垂れやカビ、排気ガスなどによる黒っぽい汚れが目立ってしまいます。

どうしても白系の色で塗装したい場合には、防汚性・防カビ性の高い塗料やセルフクリーニング機能を持った塗料を選択する必要があります。

逆に黒っぽい色の外壁ではホコリやチリなどの汚れが目立ちやすくなるので、気になる汚れの種類や立地条件、周辺環境によって外壁の色決めを行うことが大切です。

一般的に汚れが目立ちにくい色はグレー系やブラウン系なので、色選びで迷ってしまったらこれらの色を選んでおけば無難でしょう。

ただし汚れが目立たなくなると外壁の劣化のサインを見逃してしまうという弊害もあります。

外壁塗装で人気の色や色選びのポイントなどは、以下の記事で詳しく解説しています。

 

汚れにくい外壁材を選択する

樹脂系サイディングの壁

外壁材の中でも、モルタルや窯業系サイディングは汚れが付きやすい外壁材といえます。

外壁材の材質により汚れが目立ってしまう場合は、外壁材自体を汚れにくいものに張り替えてしまうという方法もあります。

汚れにくい外壁材として代表的なものには、金属系サイディング、樹脂系サイディング、タイルなどがあります

金属系サイディング

金属系サイディング錆びやすいものもあるので注意が必要です。ガルバリウム鋼板やアルミ素材のものであれば安心できるでしょう。

樹脂系サイディング

樹脂系サイディングはメンテナンスフリーの外壁材として知られています。

塩化ビニル樹脂でできているので、汚れても簡単に水洗いすることができることが特徴です。

錆びることや塗膜が劣化することもないので、定期的に水洗いすることで長く綺麗な状態を保つことができます。

さらに外壁を凹凸の少ないデザインにすることも、汚れ防止対策として有効です。

凹凸があるとホコリやチリ、雨水などが凹凸の間に入り込んで溜まりやすくなってしまいますが、フラットな外壁にすればホコリやチリ、水垢などで汚れにくくなります。

金属系サイディング、樹脂系サイディング、タイル外壁についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。

 

 

外壁の汚れはプロに任せた方が安心

外壁の点検

前述したように、外壁に付着した汚れはDIYで落とすことも可能です。

しかし手の届かない場所や高所作業となってしまう場所もあって非常に危険であるため、素人ではすべての汚れを取り除くことはできません

また、市販されている高圧洗浄機などは使い方を間違えてしまうと塗膜を傷つけてしまったり、壁内や部屋の中に水が侵入してしまったりすることがあります。

そのため、自分で汚れを落とす時には決して無理をせず、安全に作業を行うことができる範囲にとどめておくことが大切です。

汚れが広範囲に渡っていたり高い所にあったりする場合や、頑固な汚れがある場合には業者に外壁の洗浄を依頼して、洗浄前に外壁の劣化状況をチェックしてもらっておくと良いでしょう。

まとめ

外壁が汚れてしまうのは、ホコリやチリ、排気ガス、雨垂れ、サビ汁、カビ、コケ、藻の繁殖などさまざまな原因があります。

これらの汚れを長い間放置し続けると汚れが徐々に塗膜を劣化させて、雨漏りやシロアリ被害の原因になってしまうこともあります。

そのため、汚れが目立つようになったらできるだけ早めに水洗いして汚れをきれいに洗い流しましょう。

そして外壁を一度綺麗に水洗いしてもすぐに汚れてしまうようであれば、塗り替え時期が迫っていることが考えられるため、外壁塗装業者に外壁の劣化診断・調査を依頼しましょう。

建物を長持ちさせるためには適切な時期に外壁のメンテナンスを行うことが不可欠なので、決して放置することがないようにしてください。

この記事のライター:亀田 融
東証一部上場企業の不動産・建設会社の建築部門に33年間勤務。 13年間の現場管理経験を経て、取締役事業部長に就任。 事業部内で年間1000件以上のリフォーム工事を手掛けるなかで、中立的立場でのコンサルティングの必要性を実感し、独立を決意。 現在はタクトホームコンサルティングサービスの代表として、住まいに関する専門知識を生かし、多岐にわたり活躍している。 (保有資格:一級建築施工管理技士、宅地建物取引士、マンション管理士、JSHI公認ホームインスペクター、インテリアコーディネーター、マンションリフォームマネジャー、日本不動産仲裁機構ADR調停人)

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