外壁塗装のケレン作業について知りたい!重要度、種類、費用相場

外壁塗装を行う際には、塗装作業に先立ちケレン作業と呼ばれる下地処理工程が必要になります。

ケレン作業とは外壁表面に付着した汚れやサビなどの異物を取り除き、塗装面を平滑に均す作業のことで、塗装工程には欠かすことができない工程のひとつです。

この作業をしっかりと行うことで塗料の密着力を高め、塗料のもつ性能を最大限に引き出すことが可能になります。

そこで今回の記事では、ケレン作業の基礎知識や種類、費用相場などを詳しく紹介します。

外壁塗装の際に行うケレン作業とは

外壁塗装のための養生と足場

外壁塗装工事では、塗装前に高圧洗浄機による外壁の洗浄を行います。外壁に付着した汚れやカビなどを洗い流しますが、外壁に付着した古い塗膜やサビなどは洗浄しただけでは落とせないことがあります。

これらの剥がれかけた古い塗膜などが残っていると、そのまま上から塗装しても塗料の付着が悪くなり、塗膜が剥がれる原因になってしまいます。

そのため、高圧洗浄で残った汚れを電動工具などを使用して除去していく作業のことをケレン作業といいます

ケレン作業の目的は塗装の完成度を上げるため

外壁塗装に先立ち、ケレン作業が不可欠である理由には次の2つがあります。

  • 外壁表面の下地を整える
  • 塗料の密着性を高める

いずれも塗装の完成度を上げるためには欠かせない作業といえます。

それぞれの理由について説明します。

外壁表面の下地を整える

どんなに高性能の塗料を使用しても、サビや汚れなどの異物の上から塗装してしまうと長持ちせずに仕上がりも悪くなってしまいます。

ケレン作業を行うことで外壁に付着しているサビや古い塗膜を完全に除去し、新たに塗装した塗膜の剥がれを防ぐことができます。

塗料の密着性を高める

ケレン作業でサビや汚れを撤去しても、塗装する面がツルツルしている状態だと塗料が付着しにくくなってしまいます。

特に下塗り塗料が外壁にしっかりと密着していなければ塗膜がきちんと形成されず、その上から塗装する中塗り塗料や上塗り塗料も耐久性が低くなってしまいます。

そこで目荒らしと呼ばれる作業で塗膜が密着しやすい塗装面を形成します。目荒らしにより外壁の塗装面に細かい傷をつけ、新たな塗料が密着しやすい状態にしてから外壁塗装を行います。

ケレン作業は見積もり書の最重要確認項目!

ケレン作業は、外壁塗装の作業工程の中では省かれやすい工程のひとつといえます。

しかし塗料の持つ耐用年数やさまざまな機能を十分に発揮させ住宅を長く維持していくためには、決してケレン作業を軽視することはできません。

塗装の仕上がりの程度を左右する工程でもあるので、業者に外壁塗装を依頼する際には見積もり書にケレン作業の項目があるかどうかを必ず確認しておきましょう

一方で、本来ケレンとは主に鉄部に対して行う「素地調整」を意味する言葉です。鉄部のサビを落とす作業のことを言うものなので、業者によっては外壁のケレン作業を「素地調整」、「下地調整」、「下地処理」、「下地補修」などと見積もり書に表記していることがあります

万が一ケレン作業の項目が見積もり書になかった場合には、ケレン作業の有無について業者に確認しておくことが大切です。

ケレン作業の種類は4種類

ケレン作業には、1種から4種までの4種類の作業方法があります

それぞれの作業方法の主な特徴は次の表のようになります。

ケレン作業の種類 特徴
1
  • ブラスト法で行われる
  • 大規模建築物や橋、船舶などで用いられ、一般住宅向きではない
2
  • 電動工具などを使用してサビや汚れなどを落とす
3
  • 手作業を中心に行われ、塗膜は除去しない
  • 一般住宅でよく行われる
4
  • サンドペーパーを用いて軽微なサビや汚れを除去する

ケレン作業の種類ごとの作業内容の詳細は、次のようになります。

ブラスト法を用いたケレン作業(ケレン1種)

1種とはブラスト法で行われるケレン作業になります。

ブラスト法は鉄部が非常に激しく腐食した状態の塗装に対して行われ、研削材(白けい砂、銅粒など)を圧縮した空気や遠心力で吹き付けて、金属面のサビや塗膜を除去していく方法です。

ただし設備や環境保全(粉塵や騒音など)の面から一般住宅における外壁塗装で採用されることはなく、主に橋や船舶などで行われています。

一般住宅の外壁塗装でケレン1種が必要になるほど腐食が著しい場合には、部材の交換が必要になってしまうため費用が高額になることがあります。

電動工具によるケレン作業(ケレン2種)

電動工具や手動工具を用いて旧塗膜の劣化やサビによる腐食を取り除くのがケレン2種になります。

主に鉄骨造の建物を対象とし、「ディスクサンダー」「パワーブラシ」「ワイヤーホイール」などの電動工具を使用してサビや旧塗膜を完全に除去するほか、ボルト締めの折板屋根のボルト部分のサビや金属屋根のサビを落とす場合などに用いられます。

電動工具が使用できない場所は手動工具を使用しますが、費用が高めになります。

手動工具によるケレン作業(ケレン3種)

サビの範囲が少なく電動工具による大掛かりな作業を必要としない場合には、ケレン3種になります

部分的で軽度なサビや汚れを除去する場合が多く、主に「ワイヤーブラシ」「スクレーパー(かわすき)」「ヤスリ」などの手動工具を使用します。下地処理を行う面積が広い場合には、作業効率を高めるために「ディスクサンダー」などの電動工具を併用する場合があります。

これらの方法は最も多く採用されている作業方法で、ケレン3種の場合にはまだ十分な密着力を維持している塗膜(活膜)は残しておくのが一般的です。主に一般住宅の外壁や屋根で行われています。

ワイヤーブラシやほうきなどによるケレン作業(ケレン4種)

サビや旧塗膜の劣化が非常に少ない状態の場合に行われる方法で、傷や汚れのある古い塗膜のみを除去します。

「サンドペーパー」や「研磨スポンジ」「ほうき」などを使用して手作業で行い、サビがない場合には表面の洗浄作業にとどまるケースもあります。(高圧洗浄を第4種ケレンに含める場合があります)

尚、雨戸や戸袋などの金属部分を塗装する際のサンドペーパーがけも第4種ケレンに該当します。

ケレン作業にレーザーを用いることも

ケレン作業は方法によっては費用が高額でしたが、近年ではレーザーによるサビ除去の技術が開発され低価格化が進んでいます。しかしレーザーによるケレン作業は一般住宅にはほとんど採用されていません。

ケレン作業にかかる費用相場

ケレン作業にかかる費用相場は、次の表のようになります。

※1種ケレンは戸建住宅に利用されないため省いています。

ケレン作業の種類 費用相場(1㎡あたりの単価)
2種 1,500円~2,000円/㎡
3種 500円~1,000円/㎡
4種 200円~400円/㎡

各種ケレン作業の費用は、工具を使用したり薬品を使用したりするほど高額になります。

第2種と第4種では5倍以上違うので、一般的な戸建住宅の場合でも10万円程度の差が生じることもあります。費用を抑えるためにも、劣化を放置することなく早めにメンテナンスを行うことが大切です。とくに金属製サイディングの外壁や金属屋根の場合には注意が必要です。

ケレン作業で知っておきたい注意ポイント

この章ではケレン作業で注意すべきポイントを紹介します。

ケレン作業は手抜きされやすい

業者の見積もり書の中にケレン作業を行うことがきちんと記載されていたとしても、ケレン作業は非常に手抜き工事が行われやすい工程なので注意が必要です

ケレン作業をしっかりと行った上で塗装作業に着手すれば、塗料のパフォーマンスをほぼ100%発揮させることができて期待通りの耐用年数を確保することができます。

しかし塗装工事業者が手抜きをしてしまうと本来の塗料の機能を発揮させることができず、数年で塗膜が剥がれてしまうなどといった不具合が発生することにもなりかねません。

そして業者がたとえケレン作業を行わなくても、塗装してしまえばどのような下地処理を行ったのかまでは素人には分からず、プロであっても判別は難しいといわれています。

そのため、わからない工事中の工程をしっかりと確認することが重要です。

また、自分で工程を確認するのが難しい場合には業者に依頼してケレン作業の写真を撮っておいてもらうなどといった工夫が必要になります。

ケレン作業の有無と見積もり書の確認を!

いくら工事中に在宅していたとしても、業者が行っているケレン作業の内容を逐一確認することはほぼ不可能といえます。

そこで前述したように事前に見積もり書の項目を良く確認して、ケレン作業がどの場所に対して行われるのか、どのような方法で行われるのか(2種ケレンなのか3種ケレンなのか)などを知っておくことが大切です。

ケレン作業で業者による手抜きを防ぐ方法

業者の手抜き工事を防ぐためには、信頼できる業者を探して工事を依頼することが重要になります。

この章では、手抜き工事を防ぐ業者の選定方法について紹介します。

複数の業者から相見積もりを取る

ケレン作業は、業者によって必要となる作業方法(2種か3種かなど)や作業範囲の見解が異なることが少なくありません。そしてそれによって当然見積もり金額が異なります。

一般の方が自分で必要となるケレン作業の範囲や作業方法を判断するのは難しいため、1社のみではなく複数の業者(3社程度が望ましい)から相見積もりを取ること大切です。

そして複数の業者の見積もり内容を比較して各社の担当者の見解を聞くことで、ある程度の必要なケレン作業がわかるようになります。外壁塗装を依頼する際の相見積もりの正しい取り方については、以下の記事を参考にして下さい。

 

業者が保有している資格を確認する

契約金額が税込み500万円未満の外壁塗装工事は許可や資格がなくても請け負うことができるため、塗装業者の中には無許可、無資格の塗装業者も数多く存在しています。

そんな中で、建設業の許可を持っていたり塗装技能士の資格を持った職人が数多く在籍していたりする会社であれば、比較的信頼のおける業者といえると思います。

必要になるケレン作業についても適切なアドバイスを受けることができることが期待できるでしょう。塗装工事業者が保有している資格の重要性については、以下の記事をご覧ください。

 

依頼を検討している業者の口コミを確認する

評判の高い業者であればその業者の意見は非常に信頼性が高いといえるので、ケレン作業についてもベストな提案をしてもらうことが期待できます。

そこで地元に依頼を検討している業者があるのであれば、業者の口コミを確認すると良いでしょう。特に近隣住民から入手した情報であれば、非常に信憑性が高いといえます。

また、インターネットの口コミサイトなども参考にすると良いでしょう。しかしこうしたサイトの中には塗装業者を探している人と塗装業者をマッチングさせることで利益を得ているサイトもあるので、そこで得られる情報は参考程度にとどめておいた方が良いかもしれません。

そしてすでに依頼を検討している業者がある場合には、インターネットで「塗装業者名 評判」で検索すると、さまざまな情報を入手できる場合があります。外壁塗装の口コミの正しい見方については、以下の記事を参考にして下さい。

まとめ

ケレン作業は塗装作業前に行う重要な工程のひとつです。

ケレン作業では鉄部のサビ落としや、木部の剥がれかけた旧塗膜を剥がすことが多いのですが、前回の塗装から時間が経ちすぎて脆弱になった窯業系サイディングの塗膜をスクレーパー(かわすき)を使って剥がし、下地を露出させることもあります。

塗装面の下地を整え塗料の密着性を高めるために非常に重要な作業なのですが、一方では業者に手抜きをされやすい作業でもあります。

手抜き工事を防ぐためには、信頼できる業者を探して工事を依頼することが欠かせません。大切な住まいを長持ちさせるためにも、しっかりとケレン作業を行う優良業者を選定することが大切です。

この記事のライター:亀田 融
東証一部上場企業の不動産・建設会社の建築部門に33年間勤務。 13年間の現場管理経験を経て、取締役事業部長に就任。 事業部内で年間1000件以上のリフォーム工事を手掛けるなかで、中立的立場でのコンサルティングの必要性を実感し、独立を決意。 現在はタクトホームコンサルティングサービスの代表として、住まいに関する専門知識を生かし、多岐にわたり活躍している。 (保有資格:一級建築施工管理技士、宅地建物取引士、マンション管理士、JSHI公認ホームインスペクター、インテリアコーディネーター、マンションリフォームマネジャー、日本不動産仲裁機構ADR調停人)

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