外壁を塗り壁にしたい!種類やメリット・デメリットを解説

建物の外壁にはさまざまな種類がありますが、その中でも近年では古くから外壁に採用されている「塗り壁」の人気が再燃しています。

塗り壁は塗り方次第で仕上がりのイメージを変えられることから、和風建築だけでなく、洋風建築の一軒家に取り入れる方も増えているようです。

そこでこの記事では塗り壁の種類や特徴をはじめ、施工相場や塗り壁の仕上げ方を紹介します。

また、家の外壁を塗り壁にするメリットとデメリットやメンテナンス方法も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

塗り壁の外壁とは

白い外壁

塗り壁とは下地の上に土や砂などの天然素材・自然素材を塗って仕上げた壁のことをいいます。

外壁材や内装材として古くからお城や民家の外壁などに使われていましたが、近年の一般的な塗り壁はモルタルの下地の上から職人が手作業で土や砂、石灰をベースとする仕上げ材を塗って完成させたものが多くなっています。

自然素材の外壁材であるため人や環境に優しく、風合いが感じられるデザインであることが特徴です。

サイディング外壁材やタイルとの違い

一般的に外壁にはサイディング材やタイルが用いられていますが、外壁に塗り壁を選択する理由は、仕上がりのデザインや外壁のイメージなどさまざまです。

ここでは塗り壁とサイディング外壁材、タイルとの違いを解説します。

仕上がりのデザイン

近年の住宅の外壁はサイディング張りやタイル貼りが主流となっていますが、これらはあらかじめ色柄やデザインが決められていることが多く、施工の上手下手は多少あったとしても職人による仕上がりの差がほとんどないからです。

一方で塗り壁はすべて職人の手作業で仕上げることから職人の個性や技量が反映することが多く、オリジナリティのある外観を求める場合には最適な外壁材といえます。

外壁のイメージ

サイディングやタイルが工場で生産された既製品なのに対して塗り壁は独自の風合いを持ち、自分の好きな仕上げ方を選ぶことができるので、唯一無二の外壁に仕上げることができます。

また、施主の希望によっては壁に貝殻や石、ビー玉を埋め込む、子供の手形をつけるといったことが可能になります。

メンテナンスの頻度と施工費用

サイディング外壁では使用している塗料の種類によって耐用年数が異なり、一般的に使用されているシリコン系塗料の場合には、約10年に1度の割合で外壁の塗り替えが必要になります。

一方、塗り壁は時間の経過と共に浮きや剥がれが発生したりコケ、カビなどが生えたりするので、10~15年程度に1度の割合で塗り直しが必要になります。

塗り直しの施工費用はサイディングの塗り替えよりも高額になることが多く、サイディングの1.3~2倍程度、1㎡あたり4,000円~6,000円が一般的な費用相場です。

また、近年では高い施工技術が求められる塗り壁の施工業者の数が減少しているため、施工費用もより高額になる傾向があります。

ただし塗り壁は定期的にチェックしておくことで、小さなひび割れ程度であればDIYで簡単に補修することが可能です。

外壁に使用される塗り壁の種類

塗装用の塗料

ひと口に塗り壁といっても、外壁に使用される塗り壁にはさまざまな種類があります。

そこでこの章では、外壁に使用される代表的な塗り壁の種類を紹介します。

土塗りの塗り壁

土壁

土塗り壁は国内に古くから存在する代表的な塗り壁のひとつで、藁やすさ(塗り壁の材料に混入する繊維質のつなぎ材)などを各地の土と混ぜて塗り固めた壁のことをいいます。

土を材料としているので、防火性(耐火性)や調湿性、断熱性に優れていて、化学物質を使用していないために人に健康被害を及ぼす恐れもありません。

さらに日本の気候に合っていることや、配合する土や砂の量を調整することで仕上がりの印象を変えられることなどが特徴です。

風合いのあるデザインになることから近年人気がありますが、施工できる職人が少なく、汚れが落ちにくいことがデメリットといえます。

漆喰の塗り壁

漆喰も古くから城や土蔵などの外壁でお馴染みの塗り壁のひとつで、消石灰に砂と糊、ひび割れを防ぐためのすさなどを加えて水で練り上げたものです。

見た目が白くて綺麗な外壁になるので、近年人気が再燃しています。

耐火性が高く調湿性や殺菌機能にも優れているので、カビがつきにくいのが特徴です。しかし一方では色が白いため、汚れが目立ってしまうことも少なくありません。

中には色土や顔料を加えたものや墨汁を入れて黒く仕上げる「黒漆喰」という施工法もありますが、色ムラが生じてしまうケースも見受けられます。

また、漆喰壁は破損がなければ最長で30年ほど補修が不要ですが、ほかの素材よりも工期がかかり、費用が高額になることがデメリットといえます。

モルタルの塗り壁

※ジョリパット仕上げによるモルタルの塗り壁

セメントに砂と水を加えて混ぜたものを外壁に塗布し、乾燥後に表面を塗装して仕上げるものを「モルタル」と呼びます。

安価なので古くから住まいの外壁材として数多く使われてきましたが、表面にひび割れが発生しやすく施工後8年~10年程度経過すると塗り替えが必要になります。

塗膜の性能により塗り替え時期は異なるものの、モルタル自体には防水性能がないので、ほかの塗り壁材よりも耐久性が低いといえます。

しかし近年では「ジョリパット」のような、モルタル壁にも使用できる壁面仕上げ用の塗料なども開発されています。

塗り壁の中でも注目度が高いジョリパットとは

ジョリパットはアイカ工業株式会社が製造・販売している「壁面仕上げ用の塗材」の商品名で、モルタル外壁の上に吹き付け塗装をする際には、塗料と砂を混合して吹き付けます。

塗料自体に粘りがあるため、コテやハケ、ローラーなどでさまざまな模様をつけて仕上げることが可能で、カラーバリエーションも180色以上と豊富であることが特徴です。

近年は塗り壁の中でもジョリパットの注目度が高まっていて、ジョリパットを使って外壁の塗り替えを行う方が少なくありません。

モルタルに塗装する一般的な塗料よりも厚みがあるため耐久性に優れ、耐火性、防火性、耐候性なども期待できる塗料として注目されています。

代表的な塗り方のパターン・仕上げ方法

コテ塗り

塗り壁材の仕上げのパターンや仕上げ方法にはさまざまな種類がありますが、この章ではジョリパットにもよく使われている代表的な仕上げ方法を紹介します。

コテ波

塗り壁コテ並み

コテ波仕上げは、コテで塗った跡を自然な形で残す最も標準的な仕上げパターンです。

職人によってそれぞれの味が出ますが、模様の付け方で意匠が大きく変わってしまうので、人によって好みが分かれます。

そのため、コテ波仕上げを希望する場合には施工当日に立ち会い、コテ跡のパターンをあらかじめ確認しておくことをおすすめします。

ハケ引き

塗り壁ハケ引き

ハケ引き仕上げは、塗り壁材を平滑に塗った後にブラシ状のハケやほうきなどを使って表面を目荒らしする工法です。

使用する道具の種類や線を正確な直線で引くかラフに引くかなどによって、仕上がりの印象が異なります。

おうぎ

塗り壁おうぎ

おうぎ仕上げ(扇仕上げ)は、半円を描くようにコテを動かすことで扇状の模様を付ける仕上げ方です。

等間隔に均一できれいな半円の跡を残す方法や、ある程度ランダムに仕上げる方法がありますが、均一にきれいな模様を描くには職人の高い技術が必要です。

スタッコ

スタッコ仕上げ

スタッコ仕上げとは、本来はモルタルなどの塗り材を塗り付けてコテや木片で叩いて引き起こす仕上げ方法でしたが、近年ではセメント系や合成樹脂エマルジョン系などの厚塗り塗材を専用のスプレーガン等で吹き付け、表面に凹凸模様をつけることをいいます。

左官で施工する場合にはコテや木で表面をケバ立たせて模様を作るようになるので、高い技量が求められる施工方法といえます。

スポンジローラー

塗り壁ローラー仕上げ

ホームセンターなどでも入手可能な、スポンジローラーを転がしながら仕上げる方法です。

誰でも比較的簡単に模様付けができるためDIYでも施工可能ですが、壁が平滑になっていないと「それなり」の仕上がりになってしまうので、綺麗に仕上げたいのであればプロに依頼することをおすすめします。

スパニッシュ

塗り壁スパニッシュ

スパニッシュという名前の通り、ヨーロッパ風の西欧住宅によく似合う模様です。

少し厚塗りした上にコテの後ろの部分を使い、エッジを効かすような跡を残して仕上げる方法ですが、エッジを効かせすぎてしまうと下地が見えてしまうので施工には注意が必要です。

綺麗に仕上げたい場合には、プロに依頼した方が良いでしょう。

外壁を塗り壁で仕上げるメリット

この章では外壁を塗り壁で仕上げるメリットを紹介します。

仕上がりが美しく、個性があるデザインにすることができる

外壁を塗り壁で仕上げる最大のメリットは、サイディングやタイルなどと違って既製品ではないので、オリジナルな外壁にすることができるということです。

壁面にビー玉や貝殻を埋め込んだり、子供の手形を付けたりすることも可能で、オリジナリティ溢れた外壁にすることができます。

塗り壁はすべてが職人の手作業によって施工されるので、同じものはこの世にひとつとして存在せず、細かいデザインや色味を自由に選択することができます。

また、複雑な形状の家や曲面がある家であっても施工が可能で外壁に継ぎ目ができないことも、防水性や断熱性などの住宅性能の面で大きなメリットといえます。

塗り壁の原材料は人体や環境に優しい

塗壁の原材料は土や砂などの自然素材であるため人体や環境に優しく、柔らかな雰囲気でどんなテイストの建物にも良く馴染みます。

また、塗り壁にはさまざまな仕上げ方法があるので、仕上げ方法の違いで建物のイメージを大きく変えることができます。

他の外壁よりも防火性や耐久性に優れている

塗り壁は下地材も表面の仕上げ材も共に不燃材であるため、防火性能に優れています。

また、目地部分が劣化しやすいタイルや材料自体が重くて建物の構造躯体に負担がかかりやすいサイディングと比較して、耐久性にも優れているといえるでしょう。

外壁を塗り壁で仕上げるデメリット

塗り壁にはメリットばかりではなくデメリットも存在するので、塗り壁を採用しようとする際には事前にデメリットについてもよく知っておくことが大切です。

この章では、外壁を塗り壁で仕上げるデメリットを紹介します。

汚れが目立ちやすい

塗り壁は表面に凹凸が多いため、その部分にホコリや雨水がたまって、黒ずみ・コケ・カビなどが、サイディングと比べ発生しやすいです。

また、ホコリがたまった状態の時に雨が降ると雨垂れが生じてしまうことがあります。

そのため、壁を塗り壁で仕上げる際にはあらかじめこのような汚れ防止対策を講じておくことが大切です。

例えば、セルフクリーニング機能を持った塗料で塗装することで雨が汚れの下に入り込んで汚れを洗い流してくれます。

また、定期的に汚れを水で洗い流すことも、長期間塗り壁の外壁を綺麗な状態に保つためには必要なです。

ひび割れを起こしやすい

サイディングの外壁は外壁材同士の間に隙間をあけてシーリング材を充填することでひび割れを防いでいますが、塗り壁には外壁材のつなぎ目がなく一体化しているため、乾燥収縮によるひび割れが発生しやすくなります。

また、地震による揺れや大型車両の通行などでも外壁にひび割れが発生することがあります。

ひび割れした建物は単に見栄えが悪いだけでなく、雨水が侵入して雨漏りや構造躯体の腐蝕、シロアリ被害の発生などの重大な被害を受ける恐れがあります。

早期にひび割れを発見することができれば簡単に補修することも可能なので、塗り壁の建物の場合は特に定期的なチェックが欠かせません。

職人の技量が仕上がりに影響しやすい

塗り壁の外壁は既製品を現場で張り付けていくサイディングやタイルなどと違って全て職人の手作業によって施工されるので、施工する職人の腕の差で仕上がりの品質に大きな差が生じやすいといえます。

また、手作業であることから仕上がりのデザインにも職人のセンスの違いが現れるようになります。

施工が完了するまで仕上がりがどのようになるのかがわからないため、完成後に思っていたイメージと違っていたといったクレームも、サイディングやタイルよりも起きやすいといえます。

そのため、施工する前には入念な打ち合わせを行い、施工する業者と完成後のイメージのすり合わせをしっかりと行っておくことが大切です。

また、必ず塗り壁の施工実績が豊富な業者に依頼するようにし、できれば過去に施工した現場や施工実例写真などを見せてもらうと良いでしょう。

外壁に塗り壁を採用した家の施工例

外壁を塗り壁にする場合の注意点

塗料

この章では外壁を塗り壁にする場合の注意点を紹介します。

デザインを慎重に検討する

塗り壁は独特の風合いが人気ですが、さまざまな仕上げ方法(工法)があることからデザインや色柄も数多く存在しているので、採用する際には慎重に検討する必要があります。

デザインや色味は事前にサンプル帳で確認することができますが、実際に壁全体が仕上がってしまうとサンプルよりも面積が大きくなるため、想定していたイメージと異なってしまうことがあります。

想定していたイメージとの差異を無くすためには、サンプルよりも少し濃い目の色を選んでおく必要があります。

汚れがつきやすいというデメリットを考慮して採用する

また、塗り壁はサイディングよりも汚れが付きやすいといったデメリットがあるので、メリットとデメリットについても事前によく考慮しておかなければなりません。

特にメンテナンスのしやすさは施工後の満足度に大きく関わってしまうので、注意が必要です。

メンテナンスにあまり時間を割きたくないのであれば、サイディングを選択した方が無難といえます。

サイディング外壁の特徴や種類などは、以下の記事で詳しく解説しています。

経験豊富な職人が在籍している業者に依頼を行う

塗り壁は、未熟な職人に依頼してしまうと思った通りの仕上がりにならないことがほとんどです。

そのため、塗り壁を希望する際には施工経験豊富な職人が在籍している業者に依頼することが不可欠です。

また、業者に仕上げパターンの希望を伝えておいたとしても職人によって個性が出るので、実際に塗り始める際には施工現場に立ち会い、自分の目で確認しながら職人とデザインのすり合わせを行うようにしましょう。

業者選定の際は優良業者に依頼を行う

技術力が高くて経験豊富な職人は優良業者に在籍していることが多い傾向があるため、工事を発注する際には、優良業者に依頼することが大切です。

数多くの業者の中から優良業者を探すためには、必ず複数の業者に同じ工事内容で相見積もりを依頼して、各社の見積もり書の内容をよく比較検討した上で業者の選定を行うようにしましょう。

相見積もりの正しい取り方や比較方法については、以下の記事で詳しく解説しています。‌

まとめ

塗り壁はすべて職人の手作業で仕上げられるので、「他にはない個性的な仕上がりの外壁にしたい」という方にとっては最適なものといえます。

デザイン性が高く、オリジナル性に溢れた理想の外壁に近付けることができるでしょう。

一方では職人の技量が仕上がりに大きく影響する、汚れやひび割れが目立ちやすいといったデメリットがあるので、事前にこれらのデメリットについても良く知っておくことが大切です。

本記事では塗り壁のメリットばかりでなくデメリットについても詳しく紹介しているので、家の外壁を塗り替える際に参考にしていただけたら幸いです。

この記事のライター:亀田 融
東証一部上場企業の不動産・建設会社の建築部門に33年間勤務。 13年間の現場管理経験を経て、取締役事業部長に就任。 事業部内で年間1000件以上のリフォーム工事を手掛けるなかで、中立的立場でのコンサルティングの必要性を実感し、独立を決意。 現在はタクトホームコンサルティングサービスの代表として、住まいに関する専門知識を生かし、多岐にわたり活躍している。 (保有資格:一級建築施工管理技士、宅地建物取引士、マンション管理士、JSHI公認ホームインスペクター、インテリアコーディネーター、マンションリフォームマネジャー、日本不動産仲裁機構ADR調停人)

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