外壁をタイル張りにしたい方必見!外壁タイルの種類、費用相場、施工事例

家の外壁に使われる外壁材にはサイディング材の他にも、モルタルやALC、タイルなどさまざまな種類があります。

その中でもタイルの外壁は他の外壁材と比べてメンテナンスの手間がかからないことや耐久性が高いことから、家の外壁材として取り入れる方が多いようです。

そこで今回は外壁に使われるタイルの特徴やメリット、デメリットをはじめ、外壁をタイルにする場合の費用相場や施工事例を紹介します。

タイル張りの外壁はどんな外壁?

タイルとは、粘土や無機質の原料からなる生地を成型して高温で焼き固めた板状の建材のことです。床材や内壁、浴室などの内装材として用いられていますが、外壁材としても適しています。

外装材としてのタイルは建物に高級感や重厚感を与えると共に、紫外線や雨風から建物を守る役割があります。

また、メンテナンスの頻度がほかの外壁材と比べて低いとされ、タイルそのものの耐用年数は40年以上といわれています。

外壁用のタイルは種類が豊富

タイルが外壁材として適している理由としては、サイディングの外壁やコンクリートの外壁、塗り壁などと比べて耐久性・耐候性に優れていることなどが挙げられます。

しかしそれだけではなく、タイルは色柄やサイズなどの種類が豊富なので、選択次第で自分の好みにあった外壁にデザインできることがあります。

また、単に色や形状、大きさの違いだけではなく、釉薬(ゆうやく、うわぐすり)の種類によっても表面の色や光沢などが異なるほか、釉薬をかけずに焼かれた素焼きタイルもあります。

これらの違いによって、建物ごとに独特の風合いを持った高級感のある外観に仕上げることができるのが大きな魅力といえます。

外壁タイルの主な種類

タイルの素地(釉薬がかかっていない元の材質)には焼成した温度の違いによって3種類あり、それぞれ硬さや吸水性が異なります。

タイルの「素地」の種類ごとの特徴は次の表のようになります。

タイルの種類 吸水率 特徴
磁器質 1%以下
  • 1,250℃以上の高温で焼成したもの
  • 固くて耐水性が高いため最も外壁に適している
せっ器質 5%以下
  • 1,200℃前後で焼成したもの
  • 磁器質よりも加工しやすく、外壁にもよく使用される
陶器質 22%以下
  • 1,000℃~1,200℃で焼成したもの
  • 吸水性が高いため外壁には不向きで、内装用タイルとして使用される

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陶器質のタイルは吸水性が高いため凍害を起こしやすく、外壁に使用すると早期に劣化してしまいます。

そのため、外壁にタイルを用いる際には「磁器質」か「せっ器質」のタイルを選ぶ必要があります

また、外壁の平らな面に張る平物タイルには、素地による違いのほかにサイズによって主に4つの種類があります。

主なサイズの種類ごとの特徴は次のようになります。

45二丁タイル

45二丁タイルは50二丁とも呼ばれ、安価で、約30cm四方のシートでまとめ張りすることが特徴です。

サイズは50角タイルを2枚並べて目地幅を加えた45mm×95mmになります。

落下防止のためマンションの外壁などで採用されることが多く、コストを重視する方におすすめのタイルといえます。

小口平タイル

二丁掛けタイルの半分のサイズで、108mm×60mmのタイルです。

外壁タイルとして使用しやすいサイズなのでかつてはよく使用されていましたが、近年では45二丁タイルが主流となっているため、あまり使われなくなっています。

小口平タイルは東京駅に使用されていることがよく知られています。

二丁掛けタイル

最もオーソドックスなタイルで、標準的なサイズは2枚の小口平タイルに目地幅を加えた227mm×60mmになります。

元々は積レンガのサイズがベースとなっています。

さまざまな種類があることが二丁掛けタイルの特徴で、ホームセンターやインターネットで手軽に入手できることから、DIY商品としても人気が高いタイルです。

高級感や重厚感を重視したい方におすすめのタイルといえます。

ブリックタイル

ブリックタイルは特に寸法が決まっておらず、さまざまなサイズが展開されています

軽量セメントに砕いたレンガや石材を混ぜて薄いタイル状にしたものなので、レンガ調や石目調など本格的な質感があります。

種類が豊富で、二丁掛けタイルと同様に高級感や重厚感を重視したい方にはおすすめのタイルです。

建物の外壁に使用されているタイルのサイズには、これらの他に50角タイル(45mm️×45mm)、ボーダータイル(227mm×30mm)や、三丁掛けタイル(227mm×90mm)、四丁掛けタイル(227mm×120mm)などの大型タイルもあります。

このようにサイズが豊富であるため、選択肢が非常に多いのがタイルのメリットのひとつといえます。

外壁をタイル張りにすることで得られるメリット

ブラウンなどの同系色でまとめた外壁

外壁をタイル張りにすることで、色柄や形状の選択肢が非常に多くなるほかにもさまざまなメリットがあります。

この章では外壁をタイル張りにするメリットを紹介します。

傷が付きにくく耐久性・耐火性が高い

タイルは粘土や石などの無機質素材を原料として高温で焼成したものなので非常に硬い性質があり、耐久性や耐火性に優れているのが特徴です。

表面に傷が付きにくく色褪せもしにくいので、長期間に渡って紫外線や雨風から建物を保護し、美観を保ちます。

その上外壁に使用されるタイルは耐水性が高いため、凍害の影響を受けにくい素材となっています。

このような特徴から、正しく施工すれば他の外壁材のように塗り替えや張り替えの必要もなく、定期的なメンテナンスの手間を削減することができるコストパフォーマンスに優れた外壁材であるといわれています。

デザイン性が高く、高級感や重厚感が出る

タイルの外壁には立体感があり、サイディングやモルタルなどのほかの素材では味わうことができない独特の風合いがあります。

このような高級感や重厚感が、タイル外壁の大きな魅力のひとつです。

特に重厚感はタイルならではの魅力で、年々違った表情を見せてくれます。

外壁は建物の印象を決める重要な場所のひとつなので、デザイン性の高い住宅や高級感のある住宅に仕上げたい場合にはおすすめの外壁材といえます。

外壁をタイル張りにする際のデメリット

耐久性・耐火性・デザイン性が高く、高級感や重厚感がある外壁に仕上げることができるタイル張りですが、デメリットもあります。

この章では外壁タイル張りのデメリットを紹介します。

タイル外壁は初期費用が高め

外壁タイル張りの最大のデメリットは、ほかの外壁材と比較して初期費用が高くなりがちな点といえます。

タイルは素材自体がほかの外壁材よりも高い傾向があり、かつ施工にも手間がかかってしまうので、材料が比較的安価で施工も容易なサイディングと比べるとどうしても初期費用が高くなってしまいます。

使用するタイルの種類や工法によっても異なりますが、一般的にはサイディング張りにする場合の2倍程度のコストがかかるといわれています。

しかし後々のメンテナンス費用まで含めたトータルコストで比較すれば、実際にはそれほど高いものではありません。

職人の腕により耐久性に差がでることがある

タイルは1枚ずつ外壁にタイルを張り付けていく工法で施工することがほとんどなので、施工する職人の腕によって仕上がりや耐久性に差が出ることがあります。

そのため、外壁をタイル張りにする際には施工業者の選定に細心の注意が必要です。過去の施工実績や実際に施工した現場を確認するなどした上で、慎重に業者を選ぶようにしましょう。

モルタル外壁から剥離することがある

外壁をタイル張りにする場合は、タイルの剥離に注意が必要です。

施工品質が良くない場合には、タイルの浮き、剥がれといったトラブルが発生しやすくなります。

稀にマンションの外壁からタイルが落下して、通行人が怪我をしたなどといったニュースを目にしたことがある方も決して少なくないのではないでしょうか。

外壁タイルの剥離や落下は決して珍しくはないので、知っておく必要があります。

基本的に正しく施工されていればそれほど問題はないのですが、特にモルタルの外壁に昔ながらの湿式工法(モルタルなどを使ってタイルを下地に貼り付けていく工法)でタイル張りを行う場合は、将来剥離する危険性があるので要注意です。

近年では外壁タイル張りの施工方法も進化しているので、乾式工法(水を使わずに施工する工法)を採用して外壁タイル用の弾性接着剤を用いて張り付けたり、特殊な下地にタイルを引っ掛けて施工したりすると良いでしょう。

タイル張りの費用相場

外壁をタイル張りにする際の費用は新築時とリフォーム時では差があるものの、一般的な2階建ての木造戸建住宅の場合、外壁のタイル張りのみで総額200万円~400万円ほどかかります。

施工面積(施工する外壁の面積)1㎡あたり10,000円~50,000円程度が相場ですが、建物の形状や立地条件、工法、使用するタイルの種類などによっても費用が大きく異なります。

リフォームの場合は上記の費用以外に、既存外壁の撤去費用や下地補修の費用などがかかります。

また、リフォームの場合は下地の劣化状況によっても更に費用が異なります。

タイル張りの外壁のメンテナンス方法

家を新築した際に担当の営業マンから、「外壁タイルはメンテナンスフリーなのでメンテナンスコストがかかりません」などと言われて、外壁をタイル張りにすることをすすめられた方も多いのではないでしょうか。

確かにタイル自体は無機質の外壁材なので、紫外線や雨風の影響を受けても変色や劣化を起こしにくい素材といえます。

しかし年月の経過とともに接着が弱くなってタイルが浮いてしまったり、継ぎ目のシーリング(コーキング)が劣化してしまったりするので、定期的な点検とメンテナンスを欠かすことはできません

この章では、タイル張りの外壁のメンテナンス方法を紹介します。

洗浄

タイルは汚れが付着しにくい素材とはいっても長く屋外で雨風に晒し続けられると、雨垂れや砂埃などの汚れが目立つようになります。

タイルに汚れが目立つようになったら、柔らかいスポンジやブラシ、市販のタイル用洗剤などを使って外壁を洗浄しましょう。

タイルの洗浄は1年に1回程度が望ましいとされています。基本的には水洗いで問題ありませんが、汚れが酷い場合にはホームセンターなどで販売されている高圧洗浄機などを使用して洗浄すると良いでしょう。

ただし高所などの手が届かない部分は危険なので決して無理をせずに、専門業者に依頼するようにしましょう。

シーリング(コーキング)の充填

タイル間のつなぎ目には緩衝材や防水としての役割を持つシーリング(コーキング)材が使用されています。

しかし経年劣化によりシーリング材にひび割れや剥がれ、破断、硬化などの症状が見られるようになると、タイルの破損や雨漏りにつながってしまうことがあります。

そのためこのような症状が見られるようになったら、既存のシーリング材を撤去して新たなシーリング材を充填しておく必要があります。

シーリングは紫外線の影響を受けて劣化してしまうので、5年~8年を目安に点検を行い、劣化している部分の補修(打ち替え、増し打ち等)が必要になります。

タイルの浮きの補修

タイルはメンテナンスフリーといわれていますが、タイル自体はメンテナンスフリーであっても、実際には年月の経過と共に接着が弱くなってタイルが浮いてしまうことがあります。

そのまま放置し続けるとタイルの落下事故に繋がってしまうので、定期的にタイルの浮きを調査して、必要に応じて適切な補修工事を行う必要があります。

タイルの浮きの点検、調査も5~8年ごとに行うのが一般的です。

尚、タイルの浮きの補修方法には張り替えのほか、エポキシ樹脂注入工法やアンカーピンニング工法、ピンネット工法などがあります。

タイルの交換

外壁タイルの定期的な点検・調査で、比較的広範囲にわたって浮きの症状が見られる場合タイルにひび割れや欠損などが見られる場合には、タイルの交換が必要になります。

交換したいタイルをヘラなどを使って剥がし、新しいタイルを接着剤で同じ場所に張り付けていきます。

ただし定期的にすべてのタイルを交換する必要はなく、ひび割れや欠け、浮きなどが発生している部分だけ張り替えを行います。

外壁をタイル張りにする際の注意点

この章では外壁をタイル張りにする際の注意点を紹介します。

タイル張りの外壁は完全にメンテナンスフリーではない

タイルは基本的に傷が付きにくく耐久性の高い素材ですが、決して完全にメンテナンスフリーの外壁材ではありません。

たとえばタイルの目地部分のシーリング(コーキング)は経年劣化を避けることができず、タイル自体も時間の経過とともに汚れが目立つようになるほか、浮きや剥がれなどの不具合が発生することがあります。

これらの症状が見られるようになったら、メンテナンスを行う必要があります。

価格を重視する場合はタイル調の外壁材を選択するのも良い

タイルは初期費用が高額になるため、予算的に厳しい場合にはタイル調のサイディング張りを選択する方法があります。

本物のタイルよりもリーズナブル(タイルの1/2以下)でかつ軽量なため、建物の構造躯体にも負担をかけにくいことがメリットとなります。

また、見た目はほとんどタイルと変わらず、色・デザインともに多くの選択肢があるので、自分好みの外壁に仕上げることが可能です。

ただしタイルと比較してメンテナンスの頻度が高く、塗り替えの際にも2色でタイル部分と目地の部分を塗り分ける場合には高額な塗り替え費用がかかります。

クリア塗装でタイルを保護する方も増えている

タイルの保護や撥水、美観の向上などを目的として、タイルの上にクリア塗装を行う方が増えています。

クリア塗装とは透明な塗料を外壁材などに塗布することをいい、無色透明な塗料を使って塗装するので、通常の塗料のように外壁材の素材感を損なうことなく保護、艶出し効果が期待できます。

クリア塗装に用いる塗料にはさまざまな種類があり、塗料のグレードによって性能も異なるので、検討する場合には専門業者に相談した上で慎重に塗料の選定を行うことが大切です。

タイル面のクリア塗装については、以下の記事で詳しく解説しています。

 

タイル表面に劣化が起きた場合は早急に対応することが大切

タイルがどんなに耐久性に優れた素材であったとしても、万一不具合が生じたときには早急に対応する必要があります。

発生した不具合や劣化症状をそのまま放置してしまうと、ほかの劣化症状を引き起こしたり建物の構造躯体にも悪影響を及ぼしたりすることにもなりかねません。

また、高所からタイルが落下して通行人にケガを負わせてしまう危険性もあります。特に地震の際などは非常に危険であるといわれています。

そのため、タイルの浮きや剥がれ、ひび割れ、タイル目地の欠落などを見つけた場合には、早急にメンテナンスを行う必要があります。

タイル張りの外壁は高級感や重厚感を求める方におすすめ

外壁をタイル張りにする場合にはほかの建材を使用する場合よりも初期費用が高額になりますが、長く住むほどメンテナンス費用を含めたトータルコストは安くなる傾向があります。

そのため、長期に渡って住む場合には耐久性の高いタイルはおすすめの外壁材といえます。

また、タイル張りの外壁は単に耐久性が高いだけではなく色や質感も落ち着いているものが多いことから、ほかの外壁材では出しにくい重厚感や高級感を演出することができます

タイルは、デザイン性と耐久性を両立させたい人におすすめの外壁材といえるでしょう。

まとめ

タイル張りの外壁は、重厚感や高級感を演出できることが最大の魅力といえます。

品質の高いタイルを使って正しく施工することで、ほかの外壁材を使用するのと比べてメンテナンス性に優れた耐久性の高い外壁を実現することができます。

一方では初期費用が高額になるというデメリットがあり、使用するタイルの選定ミスや業者の施工不良によってタイルに浮きや剥がれ、剥落などが生じてしまうこともあります。

そのため外壁のタイル張りを検討する場合には、タイル張りのメリットとデメリットを良く理解した上で、慎重に施工業者を選ぶことが大切です。

この記事のライター:亀田 融
東証一部上場企業の不動産・建設会社の建築部門に33年間勤務。 13年間の現場管理経験を経て、取締役事業部長に就任。 事業部内で年間1000件以上のリフォーム工事を手掛けるなかで、中立的立場でのコンサルティングの必要性を実感し、独立を決意。 現在はタクトホームコンサルティングサービスの代表として、住まいに関する専門知識を生かし、多岐にわたり活躍している。 (保有資格:一級建築施工管理技士、宅地建物取引士、マンション管理士、JSHI公認ホームインスペクター、インテリアコーディネーター、マンションリフォームマネジャー、日本不動産仲裁機構ADR調停人)

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