外壁塗装は必要ない?どんな時にメンテナンスが必要なのか

業者に外壁塗装を勧められているが、本当に必要なものなのかどうかがわからないという方が案外多いのではないでしょうか。

しかし自分の判断だけでそのまま放置しておくと住まいの資産価値が下がってしまうばかりか、そのうち雨漏りが発生して高額な補修費用がかかってしまうことにもなりかねません。

外壁塗装が必要かどうかは外壁の種類にもよりますが、ほとんどの外壁材は定期的な塗り替えを行う必要があります。

そこで本記事では、外壁塗装の必要性や外壁塗装が必要でない外壁の種類、外壁の劣化を防いでメンテナンス工事を先送りする方法などを紹介します。

目次

外壁塗装は本当に必要ない?

塗装作業

外壁塗装の目的は、単に時間の経過とともに劣化した外壁の汚れや傷みを補修して新築当時のような美観に回復させるだけでなく、防水性を維持することで外壁を長持ちさせ、結果的に住まいの資産価値を維持することにあるといえます。

また外壁塗装が必要かどうかは使用されている外壁材によりますが、基本的には国内のほとんどの住宅の外壁材は定期的な塗り替えが必要になります。

外壁塗装の必要がある外壁材と必要のない外壁材とは

外壁塗装によるメンテナンスが必要な外壁材と必要でない外壁材にはどのようなものがあるのかを紹介します。

■外壁塗装によるメンテナンスが必要な外壁材

外壁塗装によるメンテナンスが必要な外壁材には次のようなものがあります。

  • モルタル
  • 窯業系サイディング
  • 金属製サイディング
  • 木質系サイディング
  • ALC  など

国内では上記の外壁材が住宅に使用されていることが多く、ほとんどの外壁材は外壁塗装によるメンテナンスが必要です。

■外壁塗装によるメンテナンスが必要ない外壁材

一方で外壁塗装によるメンテナンスが不要な外壁材には次のようなものがあります。

  • タイル
  • レンガ
  • 樹脂系サイディング

タイルやレンガは素材自体に30年以上の耐久性があり、基本的に塗装する必要のない外壁材です。

しかしメンテナンスが必要でないわけではなく、外壁材をつないでいるシーリングの打ち替えや外壁材の部分的な張り替えなどが必要になります。

また、樹脂系サイディングは素材自体に顔料が練り込まれているため色褪せすることがなく、再塗装が不要とされています。しかし国内でのシェア率はわずか1%程度とあまり普及していません。

コーティングされている外壁材は塗装の必要がないことも

一般的なサイディング外壁は定期的な塗り替えが必要になりますが、製品化される際にコーティング処理が行われているものは再塗装をするのが難しいとされています。

例えば無機コーティングや光触媒コーティング、フッ素コーティングなどが施されているものは原則として再塗装が不要です。

このようなコーティングがされている外壁は表面に新しい塗料が付着しにくく、無理に塗装してしまうと早期に剥がれてしまうことがあるので注意が必要です。

また、ご自宅の外壁にコーティングがされているかどうか不明な場合は、外壁塗装業者に判断を仰いだ方が良いでしょう。

外壁塗装によるメンテナンスが必要な理由

塗料

外壁塗装の目的には美観の維持、外壁材の保護などがありますが、メンテナンスを行わずに放置し続けると以下のような問題が発生します。

  • ‌見栄えが悪くなる(住宅の資産価値の低下)
  • 住まいの耐久性が低下する
  • 雨漏りが発生する恐れがある
  • 構造躯体の腐蝕やシロアリ被害につながる恐れがある
  • 補修費用が増加する恐れがある

こうした問題が発生するのを防ぐためにも、定期的な外壁塗装工事が不可欠といえます。

次に外壁塗装が必要な理由を詳しく紹介します。

外壁材を保護するため

外壁塗装で形成される塗膜は、外壁を紫外線や雨風から保護しています。

住宅の寿命を延ばして快適な暮らしを長く続けていくためには定期的に外壁塗装を行うことが不可欠で、結果として建物の資産価値を維持することにも繋がります。

雨漏りを防ぎ防水機能を維持するため

外壁は塗膜によって防水性が保たれています。外壁に現れる塗膜の経年劣化は単に見た目を悪くするだけではなく、防水性が失われかけているサインともいえます。

そのため汚れや傷みが生じている外壁をそのまま放置し続けると、次第に外壁材に雨水が浸みこむようになり、加速度的に劣化が進行して建物内に雨漏りが発生します。

こうした事態を防ぐためにも外壁に汚れや傷みが目立つようになったら早めに外壁塗装工事を行い、外壁材を雨風から保護する必要があります。

■防水機能が落ちてしまった住宅はとても危険

外壁の塗膜の防水機能が低下すると雨水が浸みこむようになって、外壁にひび割れやカビ、藻などが発生するようになります。

やがて雨水が建物内部にまで侵入するようになると雨水の通り道が出来てしまうので、降雨のたびに雨漏りするようになってしまいます。

木造の構造躯体は湿気によって腐食しはじめ、さらに湿気を含んだ木材にはシロアリが繁殖してしまうので、建物の耐久性が著しく低下してしまいます。そうなってしまうと、大きな地震の際には倒壊してしまうことにもなりかねません。

補修費用を抑えるため

外壁塗装には100万円前後の費用がかかりますが、費用を惜しんでそのまま放置し続けると構造躯体の腐蝕やシロアリ被害の拡大などが発生し、外壁塗装費用以上の高額な補修費用がかかるようになってしまいます。

補修費用をなるべく抑えるためにも、適切な時期の補修が大変重要です。

■メンテナンスを怠ると大損害を被ることも

外壁のメンテナンスを怠ったことにより雨漏りが発生してしまうと、単に雨漏りの原因箇所の修繕のみでなく、構造躯体の補修・補強工事(大工工事)やシロアリ駆除工事、内装工事などが別途必要になってしまうことが少なくありません。

最悪の場合には建て替えが必要になってしまうことがあり、その場合には外壁塗装費用の10倍を大きく超える費用がかかってしまうことになります。

美観を守り資産価値を落とさないようにするため

同じ築年数や同じ床面積の家であっても、「定期的に外壁塗装などのメンテナンスが行われている家」と「新築したままの状態の家」とではどちらの資産価値が高いのかは明らかです。

その判断基準は「今後も長く住み続けることができるかどうか」になり、定期的なメンテナンスは資産価値の維持の面にも大きく影響します。

外壁塗装は我が家に必要? 外壁塗装が必要かどうかの見分け方

この章では、外壁塗装が必要かどうかの見分け方や見分けるためのチェックポイントなどを紹介します。

ご自宅の外壁の種類を確認する

この記事の最初に紹介したように、外壁塗装の必要のない家があります。

外壁材が「タイル」や「レンガ」の家では外壁塗装は必要ないので、はじめにご自宅の外壁の種類を確認しておくことが大切です。

これらの素材は耐用年数が30年を超えるものがほとんどなので、塗装してしまうと10~15年程度で塗膜が劣化してしまい、非常に見栄えが悪くなってしまいます。

ご自宅の外壁材がタイルやレンガかどうかが見ただけではわからない場合には、新築時の図面や仕上げ表などで確認してみると良いでしょう。

新築後または前回の塗り替えからの年数を確認する

近年の新築住宅の外壁材として最も多く使用されている窯業系サイディングは、定期的な塗り替えが不可欠になります。

一般的には新築後または張り替え後10年前後を目安として塗り替えが必要です。

塗膜の剥がれやひび割れなどといった劣化症状が発生している場合は、外壁塗装によるメンテナンスを行いましょう。

また、塩害地域や紫外線の多い地域などは10年を待たずに劣化症状が早く発生することがあります

耐用年数はあくまでも目安ですので、ご自宅の状態に応じた適切な時期にメンテナンスを行うと良いでしょう。‌

ご自宅の外壁塗装を行う適切な時期の判断方法については、以下の記事を参考にして下さい。

 

前回使用した塗料の耐用年数を確認する

外壁塗装では塗装してから10年前後が次の塗り替え時期の目安といわれていますが、実際には前回どんな塗料を使用して塗装したのかによって次の塗り替え時期が異なります。

塗料の種類ごとの耐用年数の目安は以下の通りです。

塗料の種類 耐用年数の目安
アクリル塗料 5~8年
ウレタン塗料 7~10年
シリコン塗料 10~15年
ラジカル(制御型)塗料 12~15年
光触媒塗料 12~20年
フッ素塗料 15~20年
無機塗料 20~25年

塗料の耐用年数はあくまでも目安に過ぎないため、現在の塗膜の劣化状況と併せて判断することが大切です。

外壁に劣化症状が起きていないか確認する

外壁塗装が必要かどうかを判断する上では、現在どのような劣化症状が発生しているのかが非常に重要になります。

外壁塗装が必要となる劣化症状には、塗膜の色褪せ、カビ・コケの発生、チョーキング、ひび割れ、浮き・剥がれなどがあります。

このような劣化症状が起きている場合は、必要に応じて外壁塗装を行う必要があります。

しかし劣化症状の中にはすぐに補修の必要がない劣化症状もあるので、ご自宅に発生した劣化症状の状態などから補修の必要性を判断すると良いでしょう。‌

外壁塗装の劣化症状の詳細は以下の記事を参考にして下さい。

外壁塗装に必要な費用と節約する方法

この章では、外壁塗装の費用相場と費用を節約する方法について紹介します。

外壁塗装の費用相場

外壁塗装費用は住まいの大きさ(延べ床面積)や形状、劣化具合、立地条件などによって変動しますが、延べ床面積が30坪の一般的な木造2階建住宅で外壁がサイディングの場合、60~100万円前後が目安になります。‌

外壁塗装には各項目ごとに費用相場があるので、その費用相場を事前に知っておくと良いでしょう。

外壁塗装の適正価格の見極め方や見積もり額のチェックポイントなどについては、以下の記事を参考にして下さい。‌

また屋根や付帯部分(軒天、破風板・鼻隠し、雨樋、雨戸、戸袋等)を同時に塗装することで、足場代を節約することができます。‌

外壁塗装の費用を節約する方法

外壁塗装費用を少しでも節約したい場合には、次の方法があります。

■塗料のグレードを下げる‌

塗装費用を節約したい場合は、シリコン塗料を採用すると良いでしょう。

シリコン塗料は塗料の中でもコストパフォーマンスに優れていて、アクリル塗料やウレタン塗料より初期費用は高いものの、ある程度の耐用年数を確保することができます。

グレードの高いフッ素塗料や無機塗料などには性能や耐用年数は及びませんが、ベーシックな塗料として人気が高い塗料です。

■屋根塗装も同時に行う

外壁塗装に併せて屋根塗装も同時に行うことで足場の架設が1回ですむので、足場代(約15~20万円)を節約することができます。

しかし屋根塗装と外壁塗装のタイミングが異なることがあるので、メンテナンスの時期が同じかどうかを判断する必要があります。

屋根修理が必要なタイミングや劣化症状、修理方法や費用相場などについては、以下の記事を参考にして下さい。‌

 

■外壁塗装業者の閑散期に工事を行う

夏と冬は外壁塗装業者の閑散期にあたり、この時期に工事を依頼すると工事費を値引きしてもらえる場合があります。

特に夏は外壁塗装工事の作業時間が他の季節より多いため、場合によっては他の時期よりも外壁塗装に適した時期といえるでしょう。

夏の外壁塗装工事については、以下の記事を参考にして下さい。‌

 

また、冬の外壁工事は敬遠されがちですが、気象条件を守ることで問題なく施工可能です。

冬の外壁塗装工事については、以下の記事を参考にして下さい。‌

 

■自治体の助成金・補助金制度を利用する

お住まいのある自治体によっては、住宅リフォームの中のひとつである外壁塗装工事に対して助成金・補助金制度を設けていることがあります。

工事着工前に申請して条件を満たせば助成金・補助金が支給されるので、お住まいの自治体に確認しておくとよいでしょう。‌

外壁塗装のメンテナンス時期を延ばす方法

外壁塗装工事にはまとまったお金がかかるので、できるだけメンテナンス周期を長くして外壁塗装の頻度を減らしたいという方が多いと思います。

そこでこの章では、外壁塗装工事を先延ばしにする方法について紹介します。

耐用年数が長い塗料を外壁塗装に使う

外壁塗装工事のメンテナンス周期を伸ばす場合には、できるだけ耐用年数の長い塗料を使用することが重要です。

塗料の耐用年数は先述した通りグレードにより異なり、例えばウレタン塗料の場合は7年〜10年が耐用年数になります。しかしグレードが高いフッ素塗料や無機塗料を使用すれば約2倍の耐用年数になり、メンテナンス周期を大幅に伸ばすことができます。

塗料の選び方や各塗料の耐用年数については、以下の記事を参考にして下さい。

 

汚れや傷みが目立ちにくい色で外壁塗装を行う

外壁は色によって汚れや傷みが目立ちやすくなる傾向があり、白や黒などは非常に汚れが目立つ色といえます。

そこで外壁塗装の際にベージュやアイボリー、グレーなどの中間色を選ぶことで汚れや傷みが目立ちにくくなり、塗り替え時期を先送りできるようになります。しかし劣化症状も目立たなくなるので、定期的な点検を必ず行う必要があります。

外壁塗装が必要ない外壁材を採用する

定期的に外壁塗装を行うのは手間がかかって面倒だという場合には、外壁をタイルやレンガ、樹脂系サイディングなどにリフォームしてしまう方法があります。

ただしこれらの外壁材はいずれも初期費用が高額で、その上リフォームすれば完全にメンテナンスフリーになるわけではありません。

タイルやレンガでも目地やシーリングは経年により劣化を起こすため、10年又は20年ごとに点検を行って必要なメンテナンス工事(目地のシーリング打ち替え、浮きや剥がれ補修など)を行わなければなりません。

また、近年ではタイルにクリア塗装を行う方も多いようです。タイルにクリア塗装を行うことにより美観を保ち、傷や汚れからタイルを保護することができます。

タイルへのクリア塗装については、以下の記事を参考にして下さい。

 

優良業者に外壁塗装を依頼する

優良業者には腕の良い職人が数多く在籍していることが多く、そのような職人が塗装することで塗料の性能を100%引き出すことができるようになります。

また、腕の良い職人が外壁塗装を行うと外壁に起きる劣化症状の発生が遅くなるため、優良業者に工事を依頼することが非常に重要です。

以下では、優良業者に依頼を行う上での重要なポイントを紹介します。

■相見積もりの重要性

優良業者に工事を依頼するためには、複数の業者から同じ条件で相見積もりをとることが大切です。

最低でも2~3社に見積もり依頼を行い、各社の見積もり書に記載された内容を良く比較検討して最も信頼できそうな業者を選定する必要があります。

また、その際には価格の安さや値引きの金額だけで業者を決めてしまうことがないようにすることが大切です。‌

相見積もりの正しい取り方や比較方法、見積もり書の注意点などは以下の記事を参考にして下さい。‌

 

■悪徳業者の手口を知っておくことでトラブルを防止する

外壁塗装業者の中には、いまだに悪徳業者が数多く存在しています。

悪徳業者に依頼してしまうと、高額な追加工事費用を請求される、引き渡しが終わってすぐに塗膜が剥がれるなどの不具合が発生する、引き渡し後に不具合が発生しても手直し工事に応じてもらえないなどといったトラブルが発生します。

こうした業者に引っかからないようにするためには、悪徳業者の手口を知っておくことが大切です。

悪徳業者の特徴については、以下の記事を参考にして下さい。

まとめ

外壁塗装が必要なタイミングは、現在使用されている塗料の種類や施工品質、建物の周辺環境などによって異なるので、実際には現在どのような劣化症状が発生しているのかを良く見極めた上で判断することが大切です。

また、タイルやレンガなどの塗装が必要でない外壁材もありますが、決してメンテナンスが必要でない訳ではありません。

どんな外壁材であったとしても、適正なメンテナンスを行わなければさまざまな不具合が発生してしまう恐れがあります。

本記事の内容を参考にして、適切なメンテナンス時期を見逃すことがないようにしていただけたら幸いです。

この記事のライター:亀田 融
東証一部上場企業の不動産・建設会社の建築部門に33年間勤務。 13年間の現場管理経験を経て、取締役事業部長に就任。 事業部内で年間1000件以上のリフォーム工事を手掛けるなかで、中立的立場でのコンサルティングの必要性を実感し、独立を決意。 現在はタクトホームコンサルティングサービスの代表として、住まいに関する専門知識を生かし、多岐にわたり活躍している。 (保有資格:一級建築施工管理技士、宅地建物取引士、マンション管理士、JSHI公認ホームインスペクター、インテリアコーディネーター、マンションリフォームマネジャー、日本不動産仲裁機構ADR調停人)

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