金属屋根の補修方法!メンテナンスが必要な劣化症状も解説

金属屋根とは薄く加工した金属板で作られた屋根材を葺いた屋根のことで、勾配の緩い屋根にも対応できるのがメリットです。

軽量地震に強く加工がしやすいため、一般の住宅から工場、倉庫などに至るまで幅広く採用されています。

古くはトタン屋根が人気でしたが、現在は耐久性の高いガルバリウム鋼板の屋根が増えています。

しかし金属屋根も他の屋根と同じように、定期的なメンテナンスが欠かせません。

そこで今回は、金属屋根の基礎知識やメリット・デメリット、補修方法などについて詳しくご紹介します。

基本的な屋根の構造

屋根は基本的に、「小屋組」の上に勾配を付けるための木材である「垂木(たるき)」を乗せ、垂木の上に「野地板(のじいた)」と呼ばれる板を設置して下地を作ります。

更に、雨漏りを防ぐために野地板の上に「ルーフィング」という建築用の防水シートを敷き、ルーフィングの上にさまざまな屋根材が葺かれています。

このルーフィングが、台風や大雨の際に雨水が屋根材の下に入り込んでしまったとしても、室内や屋根裏に雨水が侵入するのを防いでくれます。

つまり二次防水としての重要な役割を果たしているのがルーフィングです。しかし屋根材の劣化が進行して、下のルーフィングまで傷んでしまうと雨漏りが発生してしまいます。

そのためどんな屋根材であったとしても、劣化を防ぐための定期的なメンテナンスが欠かせません。

金属屋根材の種類

金属屋根にはアルミニウムスチール亜鉛合金などの素材が使われていて、使用する素材によってさまざまな種類があります。

ここでは代表的な5つの金属屋根を紹介します。

  • トタン屋根

トタンとは、鉄板を亜鉛でメッキした金属のことです。素材自体が安価で施工も簡単なことから、古くから屋根材として多く使用されています。

しかしサビやすいため、腐食してしまうと雨漏りの原因になるというデメリットがあります。

近年ではより耐久性の高い金属屋根が増えてきたため、使用頻度が減少しています。

  • ガルバリウム鋼板屋根

ガルバリウム鋼板とは、アルミニウム、亜鉛、シリコンからなるアルミ亜鉛合金めっき鋼板のことをいいます。

金属屋根の中では比較的安価でありながらも、耐久性、耐食性が高くて錆びにくいため、近年では幅広く採用されています。

ただし塩害に弱く、海風の影響を受けると年月の経過に伴い錆びてしまうことがあるため、海沿いの地域にはあまりおすすめできません。

  • ステンレス屋根

ステンレスとは、鉄を主成分としてクロムやニッケルを含んだ合金のことをいいます。

耐久性・耐食性・強度に優れていますが、価格が高額なのが難点となっています。

また、施工できる業者が少ないため、まだそれほど普及していません。

体育館やホテルなどの大型施設で使用されることが多い屋根材です。

  • チタン屋根

チタンは耐食性に優れ軽量(和瓦の1/10以下)で強度が非常に高いため、チタンを使用したチタン屋根は金属屋根材の中で最も高い耐久性があります。

しかし高価で加工が難しいため、戸建住宅にはほとんど使用されていません。

神社仏閣の屋根改修工事や、東京ビッグサイトなどの大型物件に使用されています。

  • 銅板屋根

銅は耐久性が高く軽量で柔らかい性質なので、加工しやすいのがメリットです。

また、銅板屋根は新築時から時間の経過とともに徐々に青緑色に変化していく独特の風合いがあります。

これを緑青(ろくしょう)といい、銅内部の腐食を防ぎ、耐久性を高める役割を持っています。

純和風住宅に時々使われていますが、主に神社・仏閣の屋根に使われることが多くなっています。

施工するのに技術を要し、高価なのが難点です。

金属屋根のメリット

この章では金属屋根の3つのメリットについて紹介します。

他の屋根よりも重量が軽い

金属屋根の最大のメリットといえるのが、他の屋根材よりも重量が軽いという点です。

瓦屋根が1㎡あたり60㎏、スレート屋根が1㎡あたり20㎏あるのに対し、金属屋根は1㎡あたりわずか6㎏程度なので、瓦屋根の1/10、スレート屋根の1/3~1/4ほどの軽さです。

屋根材が軽くなれば建物の重心が低くなるので、地震が発生した際に揺れが少なくなり、建物が損傷したり倒壊したりするリスクを減らすことができます。

また、重量が軽いことから加工や運搬などが容易になるというメリットもあります。

安価でデザインが豊富

金属屋根は比較的安価で、多様な形状・デザインの商品が市場に多く出まわっています。

軽量なため重厚感や高級感は劣りますが、シンプルでスタイリッシュなデザインを求める場合にはお奨めの屋根材といえます。

また、勾配が緩い屋根にも施工可能で加工しやすいのがメリットです。

耐火性と防水性・耐候性が高い

金属屋根は燃えにくくて防水性に優れており経年劣化なども少ないので、屋根のメンテナンスコストが抑えられることもメリットのひとつといえます。

金属屋根のデメリット

金属屋根には多くのメリットがある一方で、デメリットも存在しています。

この章では金属屋根のデメリットを紹介します。

遮音性や断熱性に劣っている

金属屋根は薄い金属を成型したものなので、屋根を打つ雨音が室内にまで伝わってしまいがちで、遮音性が低いのがデメリットになります。

また、金属を素材にした屋根材なので熱伝導率が高く、断熱性が低いこともデメリットです。

そのため断熱材が一体になった屋根材を採用したり、屋根裏に断熱対策を施したりするなど、しっかりとした遮音・断熱対策を講じることが必要になります。

塩害に弱くサビやすい

金属屋根の中で近年最も多く採用されているガルバリウム鋼板屋根は、昔からあるトタン屋根よりもサビに強いという特徴がありますが、それでも海沿いや海風の影響を受けるエリアではサビが発生しやすくなります。

そして風で飛んできた物があたると傷や凹みができて、そこからサビが発生します。

そのため金属屋根は、海沿いの風が強い地域には適しません。

また、金属屋根は雨水の侵入箇所となるような継ぎ目を少なくするために屋根材1枚のサイズが大きくなっています。

そのため、風を受ける面積が大きく軽量なので、強風の影響を受けてめくれてしまうことがあります。

このように、風圧には決して強くないこともデメリットのひとつといえるでしょう。

補修が必要な金属屋根の劣化症状

近年では耐久性が高いとして多くのシェアがあるガルバリウム鋼板の屋根であっても、日頃のメンテナンスが欠かせません。

この章では、メンテナンスが必要な金属屋根の劣化症状を紹介します。

傷や凹み

金属は水に弱いため、屋根材として使用する場合には表面を塗膜で保護しています。

しかし風で飛んできたものがぶつかったり物が当たったりすると、塗膜に傷がついたり凹んでしまったりします。

塗装が剥がれてしまった金属は雨水や紫外線の影響を直に受け、やがて錆びてしまいます。

また、凹みが生じた部分には水がたまって錆びやすくなります。

屋根に傷や凹みを発見したら早急に補修しておく必要があります。

浮きや剥がれ

築年数が経過すると屋根材の継ぎ目部分が緩み、浮きが生じることがあります。

そして少しでも浮きが発生すると風の影響を受けて次第に屋根材がめくれ、最終的には剥がれてしまうことにもなりかねません。

金属屋根の棟板金が強風で飛ばされてしまうことが時々あります。

屋根材に浮きやめくれが見られたら、早めに補修を行うことが大切です。

サビ

金属屋根にとってサビは一番の大敵です。

サビを放置しておくと、最悪の場合には屋根材に穴が開いてしまうことにもなりかねません。

ガルバリウム鋼板の屋根は比較的サビに強いといわれていますが、表面が傷つくとサビが発生しやすくなります。

また、屋根材を留め付けているビスや釘、ボルトなどが錆びることによってもらいサビが発生することがあります。

万一サビを発見した際にはすぐに適切な補修を行うことが大切です。

色褪せ

塗装は紫外線に当たると次第に劣化が進行して色が褪せていきます。

色褪せは塗膜が劣化しているサインです。屋根に色褪せが見られたら、屋根塗装を検討する時期です。

金属屋根の補修方法

金属屋根の補修方法には、屋根の劣化具合に応じて部分補修、塗り替え、カバー工法(重ね葺き)、葺き替えがあります。

この章では、それぞれの補修方法について詳しく紹介します。

塗装の塗り替え

金属屋根の中でも比較的耐久性の高いガルバリウム鋼板自体の耐用年数は30年であったとしても、30年間メンテナンスが不要なわけではありません。

新築後10~15年程度が経過したら塗り替えが必要になります。屋根表面の塗膜が色褪せ、撥水性能が落ちてきたら塗り替えが必要な時期です。

サビの発生や傷、凹みなどの明らかな不具合がなくても、早めに塗り替えを行うことで大がかりな補修工事が必要になってしまうのを防ぐことができます。

塗り替え費用や耐用年数は使用する塗料の種類によって異なり、以下の表のようになります。

塗料 施工単価(材工価格) 耐用年数
アクリル塗料 1,000~1,800円/㎡ 5~8年
ウレタン塗料 1,500~2,500円/㎡ 7~10年
シリコン塗料 1,800~3,500円/㎡ 10~15年
フッ素塗料 3,500~5,000円/㎡ 15~20年

※横にスクロールしてください。

尚、屋根は外壁よりも紫外線や風雨の影響を強く受けるので、同じ塗料で塗装した場合でも外壁よりも耐用年数が短くなる傾向があります。

そのため、外壁であれば10年の耐用年数がある塗料で塗装しても、屋根の場合は7~8年程度になる可能性があることを知っておくと良いでしょう。

部分補修

屋根の表面にできた小さな傷や凹みなどは、気が付いたらできるだけ早い時期に補修しておくことが大切です。

特に傷はサビが発生する原因になり、サビは時間が経つと広がったり穴が開いたりしてしまうので、早急に取り除く必要があります。

部分的な修理の方法には、シーリングによる穴埋めや、防水テープによる応急処置などがあります

また、屋根の一部のみを葺き替えたり重ね張りしたりすることもできるので、とにかくできるだけ早く何らかの対策を講じておくことが重要です。

カバー工法(重ね葺き)

カバー工法(重ね葺き)とは、古い屋根材の上に新しい屋根材をかぶせる工事方法のことをいいます。

屋根材が全体的に劣化している場合や、できるだけコストをかけずに屋根材を新しくしたい場合には有効な方法です。

カバー工法は古い屋根材をはがして廃棄処分する必要がないので、工事期間と工事費用を抑えることができるのがメリットです。

ただし経年劣化が酷く屋根の下地(野地板等)まで傷んでいる場合や、既存の屋根材が瓦のように表面がフラットでない場合には、カバー工法による重ね葺きを行うことはできません。

また、カバー工法に使用する屋根材は金属屋根などの軽量な屋根材に限定されますが、それでも既存の屋根を撤去しない分屋根の重量が増えてしまうので注意が必要です。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

 

葺き替え(屋根材全体の取り替え)

葺き替えとは、既存の屋根材を全て撤去して新しい屋根材に葺き替える工事のことをいいます。

表面の屋根材だけでなく、屋根材の下の防水シートや野地板などが傷んでしまった場合には葺き替えが必要になります。

また、これまで塗り替えや部分補修などを行ってきた場合でも、築年数が30年以上経過すると葺き替えが必要になるケースがあるほか、近年では耐震性を考慮して重い瓦屋根から軽量な金属屋根に葺き替えるケースもみられます。

工期が長くかかり工事費用も高額になりますが、野地板から張り替えるなど根本的なところから修繕できるので、全ての屋根の不具合を解消することができます。

また、屋根を葺き替えることによって建物の断熱性が向上する場合には省エネリフォーム補助金が適用されるケースがあります。

屋根全体の補修は専門業者に依頼しよう

外壁塗装と屋根の修理を同時に行う場合には、足場代を節約するために2つの工事を塗装工事業者にまとめて依頼するケースが多いと思います。

しかしこの場合には、屋根工事費用が割高になってしまうことがほとんどなので注意が必要です。

屋根の塗り替え工事や部分的な補修程度であれば、塗装工事業者に依頼しても問題ありませんが、屋根のカバー工法や葺き替えが必要になる場合には塗装工事業者の職人が直接施工することはほとんどありません。

こうした工事は金属屋根を扱っている屋根工事業者や板金工事業者に外注しているため、外注費が別途発生します。

また、金属屋根の工事には専門的な知識や施工技術が必要になるため、できれば直接屋根修理の専門会社に依頼することをオススメします。

まとめ

さまざまな種類の金属屋根の中でもガルバリウム鋼板の屋根は、比較的安価でありながらも耐久性が高いため、近年では人気のある屋根材です。

メンテナンスフリーとも言われていますが、実際には定期的な点検とメンテナンスが欠かせません。

不具合を早期に発見して、適切なタイミング必要なメンテナンスを行うことが屋根を長持ちさせる秘訣です。

この記事のライター:亀田 融
東証一部上場企業の不動産・建設会社の建築部門に33年間勤務。 13年間の現場管理経験を経て、取締役事業部長に就任。 事業部内で年間1000件以上のリフォーム工事を手掛けるなかで、中立的立場でのコンサルティングの必要性を実感し、独立を決意。 現在はタクトホームコンサルティングサービスの代表として、住まいに関する専門知識を生かし、多岐にわたり活躍している。 (保有資格:一級建築施工管理技士、宅地建物取引士、マンション管理士、JSHI公認ホームインスペクター、インテリアコーディネーター、マンションリフォームマネジャー、日本不動産仲裁機構ADR調停人)

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