外壁の防水工事とは?目安となる劣化症状、各防水塗料の特徴や注意点を解説
住宅は常に紫外線や雨風にさらされており、新築から10年前後で外壁が経年劣化を起こすといわれています。
特に防水性能については外壁の経年劣化などから低下しやすいため、定期的に外壁の状態を確認した上で防水塗料などによるメンテナンスを行う必要があります。
そこでこの記事では、外壁防水工事の必要性や工事の流れをはじめ、防水塗料といわれている弾性塗料の基礎知識や費用の相場などを解説します。
雨漏りについてはこちらの記事をぜひ参考にしてください。
目次
外壁の防水工事の必要性
家の外観や構造を守っている外壁は、塗装工事で形成される塗膜によって建物の防水性を保っています。
この外壁塗装が劣化を起こすと浸水や雨漏りなどの原因となる可能性があり、建物の防水機能が低下することで建物全体の寿命が縮まってしまいます。
建物の寿命を縮めないためには、外壁の定期的なメンテナンスや塗装工事が必要となりますが、防水性能を保つために塗料を用いて塗装を行うことを「防水工事」と呼んでいます。
外壁の劣化を最小限に抑えるためにも、劣化している箇所やひび割れなどを発見したらすぐに防水工事を行うことが大切です。
外壁の防水機能は年々低下する
外壁は新築の建物であっても、新築後5年から10年ほど経過すると経年劣化を引き起こします。
経年劣化を引き起こした建物はだんだんと防水機能も低下していき、そのまま放置しておくと浸水や雨漏りなどが発生する可能性があります。
そのため、建物が劣化していないかどうか、防水性能が保たれているかどうかなどを定期的な確認が必要です。ただし建物の耐用年数や劣化が進む速度については建物の立地や天候などによって大きく異なるため、一概に何年経てば必ず劣化するとも言い切れません。
住んでいる建物の立地では平均でどれだけの耐用年数があるのか、一般的にどれくらいの周期で防水工事を行わなければならないのかなどを事前にしっかりと把握しておき、定期的な防水塗装を行うことで家全体の寿命を延ばすことができます。
防水機能が失われた家は一気に劣化を起こす
防水機能が失われた外壁はヒビや隙間などから雨水が侵入し、建物は一気に劣化を起こします。浸水してしまった外壁はシロアリなどの害虫の発生源になってしまうこともありますが、そうなってしまうと建物の腐食が急速に進んでしまうため、最悪の場合建物の構造躯体自体が劣化を起こします。
このような状態になってしまうと簡単な工事では建物の寿命を取り戻すことができないため、建物の防水機能を失うことのないよう、必ず定期的なメンテナンスを行うようにしましょう。
外壁の防水工事が必要になる劣化症状の例
外壁の防水機能が劣化している場合には以下のような症状が現れます。
チョーキング現象
チョーキング現象とは、外壁を指で触った時に白い粉がつく現象のことをいいます。
このチョーキング現象は、外壁自体に劣化が起きているというサインにです。
塗膜の表面が劣化し防水機能が失われている状態ですので、なるべく早く塗装によるメンテナンスを行う必要があります。
ひび割れ
ひび割れにも小さなものや大きいものなど種類はさまざまですが、幅が0.3ミリ以上、深さが5ミリを超えるひび割れについては、建物の耐久性に大きなダメージを与える可能性があります。
しかしひび割れの大きさや深さについては素人では区別がつかないこともあるため、大きめのひび割れを発見したらすぐにメンテナンス依頼を行うようにしましょう。
シーリングの縮みや割れ
シーリングとは、外壁材同士を接着させるために外壁の間に埋めている充填材です。シーリングはゴムやシリコン素材から作られていますが、シーリングが縮んでいたり割れていたりひびが入っていたりすると隙間から雨水などが浸入し、外壁の劣化につながります。
そのため、シーリング部分に大きなダメージが見受けられる場合はなるべく早く補修工事を行うことが大切です。
塗装の剥がれ
塗装した塗料や塗膜が剥がれを起こし、中の外壁がむき出しになっている場合は要注意です。
雨が降った場合はそこからすぐに浸水してしまう可能性があるため、すぐに防水工事を行う必要があります。
上記のような劣化症状が外壁に見受けられる場合は、すぐに専門業者にメンテナンス依頼を行い、必要であれば防水工事を行う必要があります。
建物の劣化症状や補修費用、方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
防水工事では外壁や劣化症状に合った塗料の選択が大切
外壁の防水機能を維持するためには、塗装による定期的なメンテナンスが必要不可欠です。
メンテナンスに使用する塗料には弾性塗料や低汚染塗料などさまざまな塗料がありますが、その中から外壁の相性に合った塗料や外壁のダメージや劣化に合わせて適切な塗料を選択する必要があります。
また、外壁だけの防水性能を向上させてもシーリング部分の防水性能が低いと浸水のリスクが高まるため、シーリング部分も同様に防水機能がなるべく高いものを選択することで、さらに住宅全体の防水性能を向上させることができます。
耐候性の高いシーリング剤や吸水防止剤などを上手く活用し、防水性能を高めることが住宅の寿命を長くすることに繋がっていくのです。
防水塗料(弾性塗料)による防水塗装の特徴や費用、注意点
一般的に防水塗料と呼ばれるもので代表的なのは弾性塗料です。
弾性塗料は他の塗料よりも高い伸縮性を持っているため、外壁塗装の際に防水機能を向上させる目的で使用されています。
外壁に発生するひび割れにも追随するため、モルタル外壁などのヒビが気になる場合には、弾性塗料で外壁塗装を行うと良いでしょう。
弾性塗料の費用相場
弾性塗料の費用相場は、150㎡の住宅への塗装と仮定した場合で塗装代と塗料代金込みで80万円前後であるといわれています。
また、弾性塗料の場合は単層弾性塗装と複層弾性塗装の場合で塗料代金に2倍もの差が出るとも言われているため、どのような方法で塗装を行うかどうかによって費用に大きな差が出ることが特徴です。
いずれにしても、シリコン塗料で塗装した場合と比べて10万円〜30万円ほど高くなることを想定しておくと良いでしょう。
弾性塗料で塗装する際の注意点
弾性塗料は、選ぶ塗料によって仕上げの方法や工事方法が異なることも特徴の一つです。
塗装方法には単層弾性塗装・複層弾性塗装・微弾性塗料塗装の3種類があり、それぞれ塗装の工程や塗る回数が異なります。
また、窯業系サイディングなどの外壁材は弾性塗料との相性が悪く、塗装後に剥がれや膨れなどの劣化症状を引き起こしてしまう可能性があります。
絶対に使用してはいけないというわけではありませんが、窯業系サイディングに弾性塗料を使用する際は、サイディングに水分を吸収した痕跡がないこと・塗膜に剥がれや膨れなどのダメージが発生していないことを確認した上で施工を行うようにしましょう。
代表的な弾性塗料
ここでは、一般で販売されている代表的な弾性塗料を紹介します。
日本ペイント株式会社\DANシリコンセラ
日本ペイントが製造、販売している「DANシリコンセラ」は、耐候性・ひび割れの追従性・耐汚染性に優れ、美しい外観を維持する塗料です。
水性で1液型なので、人体や環境にも優しい弾性塗料です。
エスケー化研株式会社\セラミクリーン
エスケー化研の「セラミクリーン」は、オリジナル技術により作られています。
弾性セラミックシリコン樹脂を結合材とし、優れた耐久性・低汚染性を備えています。
ホルムアルデヒド放出量も極めて低く、衛生的な環境を維持することが可能です。
アステックペイント\EC-5000PCM(IR)
※出典:株式会社アステックペイント「EC-5000PCM(IR)」
アステックペイントの「 EC-5000PCM(IR) 」は伸縮性に優れたピュアアクリル塗料で、ひび割れが起きている外壁にも使用することができます。優れた遮熱性・高い耐候性をもち、光沢を長時間維持することができる有機ガラス配合の塗料です。
低汚染塗料による防水塗装の特徴や費用、注意点
外壁に汚れが付着すると外壁の劣化スピードが早まり、新築時の防水性能は段々と失われていってしまいます。
都心部・道路沿いの家など、外壁が汚れやすい環境に建設されている住宅の場合は、低汚染塗料を使用することで外壁の劣化速度を遅くし、防水性能を保つことが可能です。
低汚染塗料の費用相場
一般的に使用されているシリコン系塗料の中でも低汚染塗料として売り出されているものは複数存在しますが、いずれも通常のシリコン系塗料よりも相場は高くなっています。
低汚染塗料の中でも使用されることが多いアステックペイント製造の超低汚染リファイン500Si-IRの施工単価は、2,400~2,800円前後が費用相場とされています。
このような低汚染塗料は耐久性が12〜15年ほどと長く、総合的に見るとコストパフォーマンスが高い塗料であるといえるでしょう。
低汚染塗料で塗装する際の注意点
低汚染塗料を使用する際に最も注意しなければならないのが「ヒビ」です。
ヒビへの追随力が高い弾性塗料と比べて、低汚染塗料はひび割れへの追随能力が低く、特に直射日光に晒され続けるような場所では注意が必要です。
低汚染塗料を使用する際は、建物の立地や気候条件などを考慮して判断すると良いでしょう。
代表的な低汚染塗料
メーカーから販売されている代表的な低汚染塗料は以下の通りです。
スーパーセラタイトF(エスケー化研株式会社)
エスケー化研の「スーパーセラタイトF」は、特殊設計のハイブリッド樹脂塗膜により外壁の塗膜の劣化を遅らせるフッ素塗料です。
水性塗料で1液型であるため安全性が高く、環境や人体にも優しいことが特徴です。また、耐久性が高く防カビ性や防藻性にも優れています。
超低汚染リファインSi-IR(アステックペイント)
※出典:株式会社アステックペイント「超低汚染リファインSi-IR」
アステックペイントの「超低汚染リファインSi-IR」は、排気ガスや黄砂、PM2.5などから外壁を守ることができる塗料です。
細かな汚染物質も付着しにくく、外壁を長期的に美しく保つことができます。
仮に汚れが付着した場合でも雨水によって汚れが洗い流されるため、美しさがずっと続きます。
外壁の防水性能を長持ちさせるためには
ここでは、外壁塗装の防水性能を効果的に発揮させるための方法を紹介します。
塗料メーカーが定めた塗布量と乾燥時間を厳守する
塗料メーカーでは、塗料ごとに最適な乾燥時間や塗布量が定められています。
これらは外壁を守るための適切な厚みの塗膜を形成するために重要であり、遵守することで塗料の性能を最大限に発揮することができます。
外壁塗装は基本的に時期を選ばず施工することが可能といわれていますが、湿気が75パーセントを超える環境下では施工は控えた方が良いとされています。
このような条件や塗布量を守ることで塗料に備わった性能を発揮させることができるため、塗料を塗布する際には必ずメーカーが定めた条件を守ることが非常に重要です。
汚れなどを定期的に洗浄する
外壁が汚れていると汚れから劣化が進み、外壁の美しさが損なわれるだけでなく、防水性能なども失われてしまう恐れがあります。
そのため、外壁が汚れている場合はこまめに洗浄して汚れを洗い流すことが大切です。
外壁の洗浄方法は、自分で市販の外壁用洗剤で洗うか・定期的に水かけを行うかの2通りがあります。
高圧洗浄機などがあれば利用するとより高い洗浄効果を得ることができますが、必ずしも高圧洗浄機でなくてはならないというわけではありません。
まとめ
外壁防水工事の必要性や、防水工事に使用されている塗料として代表的な弾性塗料の費用相場などについて詳しく解説しました。防水工事に使用する塗料にはそれぞれ使用する際の条件が定められており、塗料の性能を発揮するためにも建物の立地や劣化状況に合わせて適切な塗料選びを行う必要があります。
また、定期的な防水工事を怠ってしまうと建物の寿命を一気に縮めてしまう可能性も十分に考えられるため、大切な住宅の外壁を劣化させないためにも適切な塗料選び・定期的なメンテナンスや外壁の掃除は欠かさず行うようにしましょう。
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