外壁塗装では手塗りと吹き付け、どちらが良い?4つの判断基準と注意点
近年の外壁塗装工事はローラー工法による手塗りで行うケースが増えていますが、塗装方法には他にスプレーガンを使った吹き付け工法や刷毛塗りによる工法があって、業者によってもおすすめの塗装方法や得意な工法が異なります。
これから外壁塗装を行おうとする方の中にも、どの塗装方法が良いのか判断できないという方が多いのではないでしょうか。
外壁塗装工事の工法にはそれぞれにメリットとデメリットがあるので、それを良く理解した上で工法を決めることが大切です。
そこで本記事では、外壁塗装工事の工法ごとの特徴やメリット・デメリット、おすすめの塗装方法などを紹介します。
外壁塗装の塗装方法は3種類
外壁塗装の工法には、ローラーに塗料を含ませて塗装するローラー工法、スプレーガンを使って塗料を吹き付けて塗装する吹き付け塗装、細かい部分などを塗装する刷毛塗りの3種類があります。
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これらの中ではローラー塗りが近年最も多く行われており、次に多く行われているのが吹き付け塗装です。
刷毛塗りはローラーや吹き付けで塗装するのが難しい部分を塗るために行なわれることが多く、ローラーや吹き付け塗装と併用されるのが一般的です。
一方、今から20~30年くらい前までは外壁塗装は吹き付けで行うのが一般的でした。
ところが外壁の仕上げ材にサイディングボードが定着するようになってからは、塗り替えの際にはローラー工法で行った方がより便利だといわれるようになり、次第に吹き付けで塗装する職人が激減するようになりました。
また、ローラー工法の方が近隣へ塗料が飛散してしまう恐れが少ないので、住宅密集地における近隣対策の面でもローラー塗りの方が好まれています。
まずはそれぞれの塗装方法の特徴とメリット・デメリットを見ていきましょう。
ローラー塗装(手塗り)の特徴とメリット・デメリット
ローラーとは、プラスチックの芯にナイロンやポリエステルの繊維を織り込んだ塗装用具のことです。
ローラーの毛(繊維)に塗料を含ませて、塗装したい部分にローラーを押し当てて転がしていくことで塗装するのがローラー塗装です。
ローラー塗装や刷毛塗り塗装は吹き付けとは異なりローラーや刷毛などの道具を使って直接塗装していくため、手塗りとも呼ばれています。
次にローラー塗装のメリットとデメリットを紹介します。
■ローラー塗装(手塗り)のメリット
ローラー塗装のメリットは吹き付け塗装とは異なり塗料が飛散しにくく、隣家との距離が近い住宅密集地においても比較的容易に塗装することが可能です。
また、塗装面積が広い外壁や屋根を塗装する際にも比較的スピーディに塗装できることから近年の住宅事情とも相性が良く、広く普及したといわれています。
その他では、道具が扱いやすく他の塗装方法よりも厚塗りがしやすいため、凹凸のある場所でも容易に塗装できるメリットがあります。
■ローラー塗装(手塗り)のデメリット
ローラー塗装のデメリットは、塗装する場所や部位によって使用するローラーを変える必要があるという点です。塗装の際はさまざまな種類のローラーを用意する必要があります。
また、吹き付け塗装よりも作業時間が多くなるほか、塗りやすいといっても職人にはある程度の技術力が必要になります。
吹き付け塗装の特徴とメリット・デメリット
吹き付け塗装とは、スプレーガンと呼ばれる道具を用いて塗料を霧状にして外壁や屋根などの塗装面に吹き付けて着色する塗装方法です。
現在のようにローラー工法が主流になる前は、吹き付け塗装が一般的に行われていました。
現在でも大規模建築物の塗り替え工事では吹き付け塗装が行われることがあり、塗装範囲が広い場合にはおすすめできる塗装方法です。
■吹き付け塗装のメリット
吹き付け塗装のメリットは、作業スピードが圧倒的に早いため施工時間を短縮することができるという点です。
また、外壁にさまざまな模様をつけることができ、複雑な模様・重量感のある雰囲気や凹凸のある立体感などといった多様な仕上がりを演出することができます。
そして塗膜の品質を均一にすることができ、仕上がりが綺麗になることもメリットといえます。ただし、職人には高い技術が求められます。
■吹き付け塗装のデメリット
吹き付け塗装の最大のデメリットは、塗料を粒子にして吹き付けるため塗料が飛び散りやすく、塗料の無駄が非常に多くなることです。必要量を超えた塗料を使用しなくてはならず、20%程度の塗料のロスが発生するともいわれています。そのため、予めこの点を考慮しておく必要があります。
また、塗料の飛散防止対策として通常の塗装を行うよりもしっかりと養生を行う必要があります。特に風の強い日は塗料が流されやすいので注意が必要で、住宅密集地では施工しにくいのがデメリットといえます。
さらに塗装工事中にはコンプレッサーの機械音が発生するため、近隣からクレームが発生することがあります。
■吹き付け塗装におすすめの「ガイナ塗料」
ガイナは高い断熱性を持つセラミック塗料で近年人気の高い塗料のひとつですが、吹き付け塗装に向いているといわれています。
吹き付けの方が均一な塗膜の厚みを確保することができ、手塗りの場合には部分的に薄い塗膜になってしまいがちなので、ガイナ特有の断熱性能や遮熱性能が発揮されなくなるといいます。ガイナ塗料については、以下の記事を参考にして下さい。
刷毛塗りの特徴とメリット・デメリット
刷毛塗りはローラーや吹き付けで塗装するのが難しい狭い場所を塗装するのに向いている塗装方法で、昔は刷毛塗りだけで建物全体を塗装していましたが、現在はローラーや吹き付けと併用されることがほとんどです。
刷毛塗りのメリットとデメリットには次のようなものがあります。
■刷毛塗りのメリット
小さな刷毛を使用して塗装していくため、狭い場所の塗装に最適な塗装方法といえます。
また、塗装後のタッチアップなどの部分的な補修にも対応することができます。
■刷毛塗りのデメリット
刷毛塗りは塗装面積が広い部分を塗装するには不向きで、時間がかかってしまいます。
また、ローラーや吹き付けよりも職人の経験と技量によって仕上がりに差が出やすく、職人の技術力が求められます。
手塗りと吹き付け塗装、実際のところどちらが良い?
せっかく外壁塗装を行うのであれば、仕上がりが綺麗で長持ちする施工方法を採用したいと考える方が多いと思います。
この章では、手塗りと吹き付け塗装ではどちらが優れているのかを紹介します。
仕上がりの美しさや耐用年数に差はない
「ローラー工法(手塗り)で塗装した方が、塗膜が厚くなるので長持ちする」という業者がいれば、一方では「吹き付け塗装の方が、塗膜の厚みが均一になるので綺麗な仕上がりになる」という業者もいます。
どちらの意見が正しいのか迷ってしまう方も少なくないでしょう。
しかし施工手順をしっかりと守って正しい施工を行えば、ローラーによる塗装でも吹き付けによる塗装でもほとんど差はありません。
塗装工事で重要なことは、塗料の希釈率(塗料を水やシンナーで薄める割合)を守ったり、乾燥時間を守ったりすることです。そのため、塗装業者の選択が非常に重要になるといえます。その理由を詳しく見ていきましょう。
どちらの場合でも職人の技術力にかかっている
外壁塗装の塗膜の不具合はさまざまな理由で発生しますが、多くは施工不良が原因で発生します。
そこで仕上がりの美しさや耐用年数の長さを求めるのであれば、ローラーによる手塗りであっても吹き付けによる塗装であっても、結局のところ高いスキルを持った職人の存在が不可欠となります。そのため、技術力の高い職人が多数在籍している塗装業者に依頼することが最も大切といえるでしょう。
塗膜が厚すぎると不具合が生じることも
そもそも塗料には、メーカーによって単位面積当たりの塗布量が定められています。
これは塗料が持っている性能を正しく発揮させるために塗料の製造メーカーが定めているものです。そのため、塗料の塗布量が規定量よりも少なければもちろんのこと、多すぎても不具合が発生することがあります。
塗膜が厚すぎると表面は乾燥しているように見えても、中は乾燥していない状態で生乾きになっていることがあるためです。その場合には、施工後に塗膜が剥がれる原因になります。
吹き付け塗装で均一な仕上がりにできるかも職人の腕次第
外壁塗装は塗装面積が大きくなるので、吹き付け塗装で仕上がり良く塗装するためには、一定のスピードでスプレーガンを動かして塗装面に均一に塗料を飛ばさなければなりません。
そうでない場合には塗料の濃淡や塗りムラができてしまって、均一の塗膜には仕上がりません。そのため、吹き付け塗装で均一な仕上がりにできるかどうかも職人の腕次第といえます。
手塗りと吹き付け、選択する際の4つの判断基準
「手塗り」と「吹き付け」ではどちらの工法が良いのか、その判断基準がわからないという方が多いと思います。
また、ほとんどの方が塗装業者から提案されるままの方法で外壁塗装工事を行っているのではないでしょうか。そこで、塗装方法を選択する際の4つの判断基準を紹介します。
➀塗装時間を考慮するなら吹き付け塗装がおすすめ
短時間で広い面積を塗装するのであれば、吹き付け塗装の方が圧倒的に優れているといえます。
吹き付け塗装ではスプレーガンを左右に動かすだけで、肩幅程度の範囲を一気に塗装することができます。この動作を繰り返し行うことで広い面積でも短い時間で塗り終わることができます。
ただし広範囲にスプレーしすぎてしまうと色ムラが生じてしまうので、施工には注意と技術が必要です。
➁重厚感のある外壁にしたい方には吹き付け塗装がおすすめ
吹き付け塗装では、重厚感のある外壁に仕上げることができます。
サイディングの外壁が主流になるまではモルタル壁が主流だったため、細かな骨材を混合した「リシン」を吹き付けて仕上げたり、骨材の量を増やして立体感を演出したりする「スタッコ」仕上げが外壁の一般的な仕上げ方法でした。
また、モルタル壁に吹き付けた玉(仕上げ塗り材)を専用のローラーで潰して平らにしていくことで模様をつけるヘッドカット仕上げなども良く行われていました。
これらは吹き付けによってのみ可能な仕上げで、ローラー工法による塗装では不可能な仕上げ方法になります。
➂費用を考えるなら吹き付け塗装がおすすめ
工事費用で選ぶのであれば、一般的には吹き付け塗装の方が手塗りよりも費用が安いといえます。
平米単価(材工価格)でいえば、リシンは1,000円/㎡以下で、スタッコでも高くても2,000円/㎡台後半程度です。
一方、手塗りの場合は塗料によって価格差が大きくなりますが、現在最も多く使用されているシリコン塗料で1,800~3,500円/㎡程度なので、吹き付け塗装の方が安価といえます。
➃周囲に配慮したい場合は手塗りがおすすめ
吹き付け塗装にはさまざまなメリットがありますが、最大のデメリットは塗料が周囲に飛散してしまう恐れがあることです。
吹き付けの塗料の粒子は非常に微細であるため、少しでも風が吹いていると塗料が飛散して、隣の家の車や洗濯物に塗料が付着してしまうことにもなりかねません。
その点、ローラーや刷毛を使用した手塗りであれば周囲に塗料が飛散してしまうことはほとんどありません。このようなことから、住宅密集地や敷地の前面道路の交通量が多い場合などで周囲に配慮が必要な際には手塗りがおすすめといえます。
手塗り・吹き付け塗装共通の注意事項
この章では手塗り・吹き付けを問わず、塗装共通の注意事項を紹介します。
下地処理(ケレン作業)の重要性
外壁塗装を行う際には、手塗りであっても吹き付け塗装であっても塗装工程の前には必ずケレン作業と呼ばれる下地処理を行う必要があります。
塗装前の外壁の表面には、汚れやサビ、剥がれかけた古い塗膜などが付着しているため、そのままの状態で新たに塗装しても塗膜の密着性が損なわれてしまうばかりでなく、綺麗な仕上がりにはなりません。
そこで塗装する前にはケレン作業を行い、これらを完全に落としてから塗装を行う必要があります。ケレン作業の良し悪しで塗装の完成度が異なるため、外壁塗装の中でも重要な工程です。
しかしケレン作業は手抜きをされやすい工程であるため、見積もり時にケレン作業の有無を確認するなどの注意が必要です。
詳しくは以下の記事を参考にして下さい。
塗料の希釈率や塗り回数・乾燥時間の厳守
前述した通り、塗装の仕上がりを左右するのは職人の腕によることが多いといえますが、腕の良い職人は単に仕上がりが綺麗というだけではなく、塗料の希釈率や塗り回数、乾燥時間までをしっかりと厳守しています。
塗装工事においては、どのような塗り方であってもメーカーが塗料の種類ごとに定めている希釈率・塗り回数・乾燥時間を守って塗装することではじめて塗料の持つ性能や耐久性を確保することができるようになります。
そのため、どんなにグレードが高い塗料を選んだとしても、塗装工程で手抜きやミスがあれば塗料に備わっている機能を100%発揮させることはできません。そういった理由から、業者の選定が非常に重要になるといえるでしょう。
信頼できる優良業者に依頼を行う
業者に外壁塗装の見積もりを依頼すると業者は事前に現場調査・点検を行いますが、そうした作業をわずか数分で終えてしまう業者もいれば、1時間以上の時間をかけて詳細な調査を行う業者もいます。
また、業者の中には必要に応じて点検箇所を撮影し、撮影した画像を元にメンテナンスが必要な箇所とそうではない箇所とを分かりやすく説明してくれる業者もいます。こうした業者であれば、信用できるといって良いでしょう。
また、依頼者からの質問や相談にも親切に答えてくれる業者であれば安心です。工事を依頼する際には、こうした業者を探して依頼することが大切です。
そして信頼できる業者を探すためには、1社からだけではなく複数の業者から同じ内容で見積もりを取り、その内容を比較検討すると良いでしょう。
外壁塗装の相見積もりの正しい取り方については、以下の記事を参考にして下さい。
まとめ
外壁塗装には、手塗りと吹き付けによる塗装方法があります。
吹き付け塗装では、リシン模様、玉吹き、スタッコ調、石目調などといったさまざまな模様を作り出すことができるのが最大のメリットといえます。
しかし塗料の飛散が多いため、施工する際には近隣対策が重要になります。
一方、ローラー塗装は塗料の飛散が少なく、サイディング外壁が主流となった近年では住宅事情などからローラー工法による塗装が主流となっています。
それぞれにメリットとデメリットがあるのでどちらが良いとは一概にはいえませんが、明確な目的がある場合には目的に合った塗装方法を選択するようにしましょう。業者により得意・不得意があるので、この点にも注意が必要です。
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