外壁塗装の臭いの対策は?原因、人体・ペットへの影響も解説

住まいを長持ちさせるためには定期的に外壁塗装を行うことが不可欠となるにも関わらず、工事中に発生する塗料の臭いが気になるため、外壁塗装を行うことを躊躇してしまう方が少なくありません。

特に幼児やお年寄り、ペットへの悪影響が心配なだけではなく、住宅密集地においては近隣から苦情がくることが不安で、外壁塗装を思いとどまってしまう方が多いようです。

しかし塗料の臭いを感じる期間は3日程度といわれており、近年では臭いの発生を抑える塗料も数多く存在しています。

そこで本記事では、外壁塗装で発生する臭いへの対策方法や近隣住民からのクレーム予防対策について紹介します。

外壁塗装工事で臭いが発生する期間は3日間

外壁塗装工事中の塗料の臭いは、塗料を溶かして液状にする溶剤に使用されているイソプロピルアルコール、ブタノール、メタノール、キシレンなどといったシンナー(有機溶剤)が主な原因です。

塗装作業は下塗り・中塗り・上塗りの三工程に分かれていますが、下塗りには仕上げに塗る塗料の密着性を高めるためのシーラーやプライマーなどの下塗り専用塗料が使用されます。

下塗り専用のプライマーなどは仕上げの塗料ほど臭いが強くないものがほとんどなので、外壁塗装工事の際に臭いが発生するのは中塗りと上塗り作業を行う際の3日間程度になります。※延べ床面積30程度の場合

臭いの原因は塗料に含まれている有機溶剤

塗料

前述したように臭いの原因は塗料に含まれている有機溶剤ですが、溶剤としてのシンナーには塗料の防水性を高めたり塗装後の乾燥を早めたりする役割があるため、外壁や屋根の塗装工事を行う際によく使用されています。

一方ではシンナーの臭いを長時間吸い続けると、吐き気やめまい、頭痛、目や喉の粘膜の不快感などの症状を引き起こすことが知られています。

これらの症状は塗料に含有されているシンナー(有機溶剤)の量に左右されるといわれています。

塗料は溶剤にシンナー(有機溶剤)を使用している「油性塗料」と水を使用している「水性塗料」があり、とくに油性塗料を使用する場合には水性塗料よりも含有されているシンナー(有機溶剤)の量が多いため、作業に細心の注意が必要になります。

塗料の種類による臭いの違い

油性塗料には水性塗料よりも多くの有機溶剤(シンナー)が含まれているため、塗料の種類によって臭いに差が生じます。

塗料の種類による臭いの強さは次のようになります。

塗料の種類 塗料の型 臭いの強さ
水性 1液型‌
2液型
弱い
油性(弱溶剤) 1液型‌
2液型
油性(溶剤) 1液型‌
2液型
強い

1液型、2液型の違いは1つの液体のみで塗料として使用するのか、2つの異なる液体を混ぜ合わせて塗料として使用するのかによります。

また、塗料を何で薄めるのかによって水性、弱溶剤、溶剤に分類されます。

油性塗料の場合は塗料の性能を高めるために水性塗料よりも多くの有機溶剤(シンナー)が含まれていて、強力な有機溶剤を用いるほどシンナー臭が強くなります。

しかし水性塗料であっても塗料を安定させるためのVOC(揮発性有機化合物:Volatile Organic Compounds)が含まれているので、決して無臭というわけではありません。

VOCは塗料のほかにも、接着剤や洗浄剤、印刷用インク、ガソリンなどに含まれています。

外壁塗装で発生する臭いへの対策方法

塗装用の塗料

外壁塗装工事中に発生する臭いは家の中にいる人に対して健康被害を引き起こす原因になるばかりでなく、近隣住民からのクレームの対象にもなるので、何らかの対策を講じる必要があります。

この章では外壁塗装で発生する臭いの対策方法を紹介します。

水性塗料を使用する

外壁塗装用の塗料には油性塗料と水性塗料があります。

油性塗料と水性塗料の有機溶剤の量を比べると、全く含んでいないわけではないものの水性塗料の方が有機溶剤の含有量が少ないといわれています。

そのため、水性塗料を使用した場合の方が外壁塗装中の臭いを軽減することができます。

とくに臭いが苦手な場合には、水性塗料の中でもF☆☆☆☆のものを選ぶと良いでしょう。

F☆☆☆☆については次の項で解説します。水性塗料のメリットとデメリットを簡単に表にまとめると次のようになります。

メリット デメリット
  • シンナー臭が少ない‌
  • 施工に手間がかからない‌
  • 塗装職人が溶剤中毒にならない‌
  • 1液型が多いため、施工に手間がかからない‌
  • 安価‌
  • 油性塗料と遜色のない高耐久の塗料が増えてきている
  • 一般的に油性塗料よりも寿命が短い‌
  • 塗布できない素材がある‌
  • 塗膜のツヤの耐用年数が油性塗料に比べて短い‌
  • 低温では硬化しにくい‌
  • 完全に硬化するまでは水に弱い

※横にスクロールしてください。

F☆☆☆☆(エフフォースター)の塗料を使用する

塗料には、シックハウス症候群などの健康被害を引き起こすホルムアルデヒドなどの有害物質が含まれています。

ホルムアルデヒドを放散する恐れのある建築資材には放散量に応じて放散等級の取得と表示が義務付けられており、塗料も例外ではありません。

そしてホルムアルデヒドの放散量の区分によって、使用面積などが制限されています。

その中でも等級が「F✩✩✩✩」のものは安全性が高く、塗料に含有された有害物質による影響を最小限に止めることができます。

臭いの程度を表す等級「F☆☆~F☆☆☆☆」とは

ホルムアルデヒドの放散等級は「F☆☆☆☆」といった形で表示されています。

「F」の後についている☆の数によって放散量が簡単にわかるようになっていていますが、「F☆☆☆☆(Fフォースター)」が最も等級が高く、ホルムアルデヒドの放散量が全くないかごく微量であることを示しています。

塗料の臭いによる人体への悪影響も少ないため、F☆☆☆☆の塗料を選ぶと良いでしょう。

ホルムアルデヒド放散等級表は次のようになります。

JIS、JASなどの表示記号 ホルムアルデヒドの放散基準
F☆☆☆☆ 最大値0.4mg/L
平均値0.3mg/L
F☆☆☆ 最大値0.7mg/L
平均値0.5mg/L
F☆☆ 最大値2.1mg/L
平均値1.5mg/L
F☆ 最大値7.0mg/L
平均値5.0mg/L

塗装する順番を工夫してもらう

外壁塗装を行う際は、玄関ドアやサッシなどの開口部に塗料が付着しないように、ビニールシートなどで覆って養生を行います。

一時的に玄関ドアや窓の開け閉めができなくなって換気不良になってしまうこともあり、塗料の臭いが室内に充満してしまうことにもなりかねません。

そのため、一面ずつ外壁塗装を行って換気ができるように工夫したり、窓の開閉が可能になるように養生を行なったりすることが大切です。

自分でできる臭いへの対策方法

塗料の選択や工事中の配慮などを外壁塗装業者に依頼して塗料の臭い対策を行うほかに、自分でできる対策もあります。

この章では、自分でできる外壁塗装工事中の臭い対策を紹介します。

高性能マスクを購入する

臭いへの対策としてはマスクを着用するだけでも有効ですが、それだけでは十分とはいえません。

ホームセンターや薬局で販売している臭い対策用の高性能防毒マスクや活性炭入りの不織布マスクを使用することで、工事中の臭いを軽減することができます。

あまり重装備の必要がないのであれば、活性炭などのフィルター付き不織布マスクがおすすめです。

Amazonなどでも各種取り揃えているので、用途に合うものを探してみると良いでしょう。

換気を行う

外の臭いを室内に入れないように窓を閉め切っていても、隙間から臭いが侵入して部屋中に充満してしまうことがあります。

そのような場合は塗装業者に依頼して窓が開閉できるように工夫して養生してもらうことで、工事中にこまめに換気を行いながら室内の塗料の臭いを軽減することができます。

ただしその日の風向きなどによっては効果が得られないこともあるので、換気扇や扇風機、サーキュレーターなどを上手に併用して効率よく換気を行う方法もあります。

外壁塗装中にエアコンを使用するときの注意点

夏場の外壁塗装工事中に窓を閉め切ったままエアコンを使用しないでいると、熱中症になってしまう恐れがあります。

しかし施工業者によってはエアコンの室外機を養生してエアコンが使えなくなってしまうこともあるので、メッシュ状の室外機カバーで養生するなどして工事中にもエアコンが使用できることを事前に業者に確認しておきましょう。

臭いに耐えられない場合は一時的に外出する

臭いの感じ方には個人差があるので、どうしても臭いに耐えられない場合には、塗装作業中は外出してしまうのがベストです。

前述した通り臭いが気になるのは3日間程度なので、その間だけ外出してしまえば臭いが感じられる時間帯を避けることができます。

ただし外壁塗装工事の工程は天候や現場の状況によって変更になる場合があるので、実際の現場の進捗状況を施工業者によく確認した上で、出かける時には必ず職人に声をかけるようにしましょう。

また、洗濯物や布団などを屋外に干しっぱなしにしたまま外出してしまうとトラブルの元になるので、必ず部屋干しにしておくことが大切です。

外壁塗装の臭いが人体に与える影響とは

塗装作業

塗料の臭いが人体に与える影響には個人差があって、同じ塗料であっても平気な人もいれば耐えられないという人や、中には急性中毒などを引き起こしてしまう人もいます。

この章では、塗料の臭いが引き起こすさまざまな悪影響について紹介します。

稀に臭いにより体調不良を引き起こすことがある

塗料に含まれているシンナー(有機溶剤)が引き起こす一般的な健康被害には、吐き気や目眩、さらにはより深刻な症状である呼吸困難、シックハウス症候群抑うつ状態などがあり、さらに女性の場合は生理不順や不妊症が発症することがあるといわれています。

塗装作業中に少しでも不快な症状が出たら、早めにマスクを着用する、外出するなどの対策を施すことが大切です。

赤ちゃんや妊婦さん、ペットは要注意

近年の塗料は人体に優しいものが多くなりましたが、赤ちゃんや妊婦さんは通常よりも臭気を感じやすく、気分が悪くなって体調を崩しがちになる傾向があります。

また、ペットがいる場合にも体調不良になってしまうことがあるので、工事中はペットの様子を良く観察しておくことが大切です。

赤ちゃんや妊婦さん、ペットがいる場合には塗装工事中は実家やホテルなどの別の場所に泊まるのが安心ですが、無理な場合には中塗り、上塗り作業を行う際には外出する、業者に塗り方を工夫してもらえるように依頼するといったことが大切です。

近隣住民が影響を受けることはほとんどない

外壁塗装工事中は建物がメッシュシートで覆われているため、塗料の臭いが近隣住戸へ届く可能性は低いといえますが、立地(住宅密集地等)や風向きによっては近隣にも塗料の臭いが充満する可能性もあります。

そのため、近隣とのトラブルを避けるためにも外壁塗装工事に着手する前に近隣挨拶をきちんと行っておくことが大切です。

近隣住民へのクレーム対策を忘れずに行っておくことが重要

この章では、外壁塗装工事に着手する前に行なっておきたい近隣対策について紹介します。

事前に伝えておきたい確認事項

前章で外壁塗装工事に着手する前に近隣挨拶しておくことが大切であることを紹介しましたが、その際にあらかじめ伝えておいて了承を得ておくべきことは次の4つです。

  • 施工期間と作業時間(特に臭いが発生する可能性のある日を事前に伝えておく)
  • 足場材の搬入、搬出など工事用の車両が出入りする日程
  • 足場の設置などで大きな音が発生してしまうことがあること
  • 足場が敷地外に越境してしまう場合には必ず事前に承諾を得ておく

着工前の近隣挨拶は施工業者が行うのが原則ですが、工事中のトラブルやクレームを避けるためにも、施工業者と一緒に施主も近隣挨拶に同行しておくことをおすすめします。

とくに住宅密集地などでは、近隣の方々への細心の配慮が必要です。

塗装中の臭い対策をしてくれる外壁塗装業者の探し方

円滑な外壁塗装工事を行うためには、体調不良や近隣からのクレームの原因になる塗料の臭い対策を行うことが大切です。

この章では、優良な外壁塗装工事業者の探し方を紹介します。

臭い対策を行っているかを確認する

塗装業者の中には「塗装工事で臭いが発生するのは当たり前だという認識から、臭い対策を行っていない業者もあります。

そのような業者の場合は工事中に臭いへのクレームが発生した場合も、強引に最後まで工事を進めてしまう可能性があります。

しかし施主や近隣住民を健康被害から守るためにも、契約段階で工事中の臭い対策の有無や方法をしっかりと確認しておく必要があります。特に現場が住宅密集地であったり近隣住戸との距離が短い場合には、契約する前に対策法などを業者ときちんと打ち合わせしておくことが大切です。

親身な対応を行う業者に依頼する

前述したように塗料の臭いの感じ方には個人差があるので、実際に工事が着工してから「思っていたよりも臭いがキツイ」と感じてしまうことがあります。

そのような場合であっても、施主の事情を汲み取って親身になって対応してくれる業者であれば安心です。

常に施主の立場になって対策を講じてくれる業者に依頼するようにしましょう。

塗装現場に管理者が毎日来るかを確認する

業者の現場管理者による日々の現場の確認は工事の進捗状況の把握や施工品質を保つためだけではなく、施主が疑問点や不安な点などを相談しやすくなるというメリットがあります。

管理者が毎日現場に来てもらえれば、体調不良や「気分が優れない」などといった違和感を覚えた際にはすぐに対応してもらうことができるので、そのような業者に依頼すると安心です。

外壁塗装業者が持っている資格を確認する

住宅の外壁塗装工事は資格がなくても工事を行うことが可能ですが、多くの優良業者は自社の職人に技術力向上のためのさまざまな資格取得を推奨しています。

外壁塗装工事に関する資格には、塗装技能士(一級、二級)、足場の組み立て等作業主任者、外装劣化診断士などがありますが、有機溶剤による身体的な被害防止の指揮・監督を行う資格として有機溶剤作業主任者があります。

職人がこれらの資格を持っている業者であれば知識も豊富で、塗装工事を行う際にはさまざまな臭い対策を提案してくれることが期待できるといえるでしょう。

このように、外壁塗装工事を契約する前には業者が持っている資格をあらかじめ確認しておくことをおすすめします。

まとめ

外壁塗装工事では使用する塗料によって強い臭いを発生させてしまうことがあり、健康被害を引き起こすだけでなく近隣からのクレームの原因になってしまうことがあります。

一方では外壁塗装工事を定期的に行うことが住まいを長持ちさせる上で不可欠なことなので、できるだけ臭い対策を行って、メンテナンスを怠らないようにすることが大切です。

ぜひ本記事の内容を参考にして、外壁塗装工事中に必要な臭い対策をしっかりと行うようにしてください。

この記事のライター:亀田 融
東証一部上場企業の不動産・建設会社の建築部門に33年間勤務。 13年間の現場管理経験を経て、取締役事業部長に就任。 事業部内で年間1000件以上のリフォーム工事を手掛けるなかで、中立的立場でのコンサルティングの必要性を実感し、独立を決意。 現在はタクトホームコンサルティングサービスの代表として、住まいに関する専門知識を生かし、多岐にわたり活躍している。 (保有資格:一級建築施工管理技士、宅地建物取引士、マンション管理士、JSHI公認ホームインスペクター、インテリアコーディネーター、マンションリフォームマネジャー、日本不動産仲裁機構ADR調停人)

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