外壁塗装で発生しやすいトラブル|解決策や未然に防ぐ方法をプロが解説

外壁塗装工事は建築系の工事の中でもトラブルが多い工事といわれており、契約の段階から工事後の仕上がりに至るまで、さまざまなトラブルが発生する可能性があります。

しかし大切な住まいを守るためには外壁塗装によるメンテナンスは不可欠で、外壁塗装工事自体を避けることはできません。

そこでこの記事では、外壁塗装を行う上で起こりうるトラブルの事例や対処法、またトラブルを未然に防ぐための方法やトラブルが発生してしまった際の相談窓口を紹介します。

目次

外壁塗装はトラブルが発生しやすい

外壁の塗装作業

外壁塗装工事は非常に実施頻度の高い工事でありながらも、トラブルが発生しやすいことが知られています。

起こりやすいトラブルとしては、外壁塗装の仕上がりに関するトラブルや追加費用などの工事費用に関するトラブル、工事中の近隣とのトラブルなどが挙げられます。

しかしトラブルを未然に防ぐ対策もあるので、外壁塗装工事を業者に発注したり工事に着手したりする前に頭に入れておくことが大切です。

外壁塗装の契約時に起こりやすいトラブル

この章では、業者と外壁塗装工事の契約を取り交わす前後に発生しやすいトラブル事例を紹介します。

見積もり書の詳細な説明がない

外壁塗装工事は単に外壁を塗装するだけではなく、高圧洗浄や塗装前の下地処理、シーリング、足場代、養生費用など工程ごとにかかる金額を細かく算出した上で見積もり書の作成が行われます。

しかし見積もり書の内訳についての説明がなかったために発生するトラブルが非常に多いため、外壁塗装工事の契約を行う際は業者側からの詳細な説明が非常に重要です。

解決方法

「外壁塗装工事 一式 ○○円」といったように見積もり書に大雑把な内容しか記載されていない場合には、業者に再度見積もり書を作成し直してもらう等、詳細な説明を求めることが大切です。

そのまま契約してしまうと見積もり書の内訳に必要な工事が含まれていなかったり、余分な工事がプラスされていたりする可能性があります。

トラブルを防ぐ方法

外壁塗装工事を行う際には、見積もり書に記載される項目について事前に知識をつけておくことが大切です。

また、外壁塗装に使用する塗料の種類やそれぞれの特徴についても知っておく必要があります。

しかし見積もり書の記載内容が大雑把である場合や細かい説明がない場合は、はじめから依頼しないようにした方が良いかもしれません。

外壁塗装の見積もり書の正しい見方や良い例、悪い例などは、以下の記事で詳しく紹介しています。

 

外壁塗装の契約を破棄したい・違約金を請求された

塗装業者の中には「今契約すると値引きします」などといって、強引に契約を迫る業者も存在しています。

そのため「契約内容をよく確認せずに契約してしまった」「勢いで相場よりも高い金額で契約してしまった」などといったトラブルも外壁塗装工事では決して珍しくありません。

このような相談は、国民生活センターに毎年数多く寄せられています。

そして中には解約を申し出ると業者から違約金を請求されるといったケースもあるようです。

特に業者が訪問営業による契約ではトラブルが起こりやすいため、注意が必要です。

解決方法

契約後8日以内であれば、自宅で契約したなどの一定の条件を満たせば所定の手続きを経てクーリングオフ制度を利用して契約を解除することができます。

クーリングオフとは、一定の契約に限り説明不要の無条件で申し込みの撤回または契約を解除できる法制度のことをいいます。

クーリングオフを行うことで無料でキャンセルができる上に、たとえ工事が始まってしまっている場合であっても無償で原状回復してもらうことも可能です。

ただしクーリングオフ可能な契約後8日以内を過ぎてしまっている場合は、工事を中止する場合に違約金等が発生することもあります。

トラブルを防ぐ方法

トラブルを防ぐためには、業者のセールストークをすぐには信用せずにさまざまな情報を元にして業者が提示した条件を精査することが大切です。

そのためには1社だけではなく複数の業者から相見積もりを取得して、各社の見積もり書の内容を十分に比較検討した上で業者を決定する必要があります。

外壁塗装業者の選び方や失敗しないためのチェックポイントなどは、以下の記事で詳しく紹介しています。

外壁塗装工事の着工前に起こりやすいトラブル

外壁塗装工事では、着工前の段階で業者とのトラブルが発生することもあります。この章では、外壁塗装工事の着工前に起こりやすいトラブルと解決方法、トラブルを防ぐ方法を紹介します。

工事の日程表が送られてこない・工事の着工が遅れている

業者と外壁塗装工事の契約を行ったにもかかわらず、業者から工程表が提出されてこない、着工予定日になっても工事が着工されないなどといった場合には、悪徳業者との契約や詐欺である可能性が疑われます。

解決方法

このような場合には、契約後8日以内であればクーリングオフの適用を検討しましょう。

また、クーリングオフの有効期限は「法定の書面を受け取った日から数えて8日間以内」であるため、クーリングオフに関する書面を業者から受け取っていなければ、8日を過ぎていてもクーリングオフすることが可能です。

クーリングオフの適用方法やできるケース、できないケースについては、以下の以下の記事で詳しく解説しています。

 

トラブルを防ぐ方法

業者とのトラブルをできるだけ避けるためには、なにかと口頭で済ませようとする業者には依頼しないことが一番です。

また、契約前後の業者とのやりとりは必ず書面に残したり、必要であれば業者との会話を録音しておくと良いでしょう。

近隣住民に対する挨拶を業者側がしてくれない

外壁塗装工事中は近隣住民に騒音などで迷惑をかける可能性が高いため、工事に着手する前に必ず近隣の方々に挨拶を行っておく必要があります。

通常は外壁塗装業者と施主が緒に近隣挨拶を行いますが、業者の中には近隣挨拶は施主任せという業者も存在しています。

しかし円滑に工事を進めるためにも、外壁塗装業者からの近隣挨拶は必要不可欠です。

解決方法

契約後に近隣住民への挨拶を行ってくれない場合は、再度業者側に近隣挨拶を行ってもらうようにお願いしてください。

契約前であれば、近隣挨拶を契約の条件にすると良いでしょう。

トラブルを防ぐ方法

本契約の前に、近隣住民への挨拶の有無を確認すると良いでしょう。

外壁塗装工事中に近隣からクレームが発生すると、工事が一時中断して工期が延長してしまうことにもなりかねません。

特に工程や期間などは施主だけではなく近隣住民にも影響するため、必ず工程表を持参して挨拶を行う業者と契約する必要があります。

外壁塗装の工事中に起こりやすいトラブル

外壁の塗装作業

次に外壁塗装工事中に起こりやすいトラブルを紹介します。

外壁塗装前の養生をしっかりとしていない

外壁塗装工事を行う際には、現場近隣への配慮のためにも足場に養生シートを張って、建物をしっかりと覆う必要があります。

しかし養生が雑だったために、養生シートの隙間から高圧洗浄水や粉塵、塗料などが周囲に飛散するなどして近隣とのトラブルが発生してしまうことがあります。

また、狭小地で工事を行う際には足場が隣地へ越境してしまうこともあります。

解決方法

塗装する建物の周囲に足場を設置して足場に養生シートを張った後には、施主自身でも家の周囲を点検し、気になる部分があればすぐに業者に伝えて手直ししてもらいましょう。

トラブルを防ぐ方法

足場に設置する養生シートは、施工が雑だとシートの隙間から粉塵や塗料が周囲に飛散してしまうばかりでなく、強風でバタついて近隣への迷惑になってしまうことがあります。

このようなトラブルは意外と多いため、養生の養生段階で少しでも不安を見つけたら、早めに業者側に伝えることが大切です。

高圧洗浄の水が室内に侵入してしまった

外壁塗装工事では、塗装に先立ち外壁面に付着した汚れや藻、コケ、剥がれかけた旧塗膜などを落とすために高圧洗浄作業を行います。

その際に「施主による窓や扉の閉め忘れ」や「塗装業者の高圧洗浄機の取り扱いの不備」などがあると、高圧洗浄水が家の中に侵入してしまうことがあります。

このほかにも外壁の経年劣化が著しくて雨漏りしている場合に水漏れが発生してしまうこともあるため、水圧などを調整しながら洗浄作業を行う必要があります。

解決方法

高圧洗浄作業中に室内への水漏れに気付いたら、すぐに洗浄を行っている職人に伝えて、作業を中止してもらう必要があります。

その上で水の侵入口を確認して、水圧の確認、養生のやり直し、洗浄方法の見直しなどの適切な対応を行います。

トラブルを防ぐ方法

高圧洗浄を行う日を事前に工程表などで確認し、締め忘れがないように窓や扉を閉めておきます。

また、建物自体に雨漏りを起こす箇所がある場合は、事前に業者に伝えておくことが大切です。

近隣住民から工事に対する苦情が入ってしまった

外壁塗装工事を行う前には足場の組み立てを行いますが、その際には足場材の搬入のために大型車両が敷地の前に駐停車したり、騒音が発生したりして近隣住民からクレームが出ることがあります。

また、高圧洗浄中の機械音や足場の越境などで苦情が発生してしまうことも決して少なくありません。

解決方法

万一近隣からクレームが発生した場合には、できるだけ早く施主としてお詫びに行くことが大切です。

クレームを放置してしまうと、最悪の場合には工事がストップしてしまったり訴訟になってしまったりすることがあるので、決して軽く考えないことです。

先方の要望をきちんと聞いた上で、施工業者に相談して作業を行う時間をずらす等の具体的な対策を講じるようにしましょう。

トラブルを防ぐ方法

工事中の近隣からのクレームは、事前にきちんと挨拶を行って工事の音が発生する日や塗料の臭いが発生する期間を説明しておくことで、大方避けることができます。

外壁塗装工事では騒音や塗料の臭いによる苦情が発生する可能性もあるため、できる限り着工前に近隣挨拶を行うようにしてください。

塗料が隣家に飛んでしまった

外壁塗装工事では、塗装工程の際に近隣の建物や車などに塗料が飛散してしまうことがあります。

特に養生がしっかりされていなかった場合や、隣家の建物との距離が近い場合などに起こりやすいトラブルになります。

解決方法

通常は万が一の事故に備えて塗装業者も損害保険に加入しているので、飛散した塗料により近隣住民の建物や車が被害を受けた場合は、業者側の保険を使って弁償してもらうことができます。

また、必要に応じて再発防止のために養生を増やす等の対策を講じます。

トラブルを防ぐ方法

事前に塗装業者が加入している保険の内容を確認しておくと共に、隣家が近接して建っている場合には、養生を徹底して行うようにしてもらうことが大切です。

また、工事中には洗濯物などを建物の近くに干さないように、事前に隣家にお願いしておくことをおすすめします。

業者の車を駐車するスペースが足りない

外壁塗装工事中は業者の車が頻繁に出入りするようになります。

その際、車の大きさや車種によっては敷地内に駐車することができなかったり、駐車するスペースが足りなくなってしまうこともあります。

解決方法

外壁塗装工事の際は工事車両の駐車スペースの確保が不可欠ですので、万が一敷地内に駐車できるスペースがない場合は、近隣の駐車場などに駐車をしてもらうなどの対策をとってください。

また、自家用車を事前に移動させておくなどの対策が必要です。

トラブルを防ぐ方法

事前の見積もりの段階で業者と駐車場の有無を打ち合わせして、工事車両が駐車できるスペースを確保しておくことが大切です。

自宅の車や植木が汚されたり壊されたりしてしまった

塗料

塗装工事中は、業者の職人の不注意で自宅の車や植木、家財などに塗料が付着してしまったり、壊されてしまったりすることがあります。

業者に悪気がないことがほとんどなので、必要以上に騒ぎ立てたりせずにやんわりと指摘するようにしましょう。

解決方法

塗装業者は万が一の事故に備えて損害保険に加入していることがほとんどなので、さほど心配はいりません。

保険を使って補償してもらうことができますが、念のために汚損・破損の状態を写真に撮って残しておくと安心です。

トラブルを防ぐ方法

不要なトラブルを避けるためにも、工事を行う前に動かせるものは汚されない場所に移動しておく、事前に業者に大切なものが置いてあることを念押ししておくなどの対策を講じておきましょう。

また、業者が加入している保険の補償範囲をあらかじめ確認しておくと良いでしょう。

外壁塗装工事の塗装工程で起こりやすいトラブル

外壁の塗装作業

外壁塗装工事では、塗装工程でも度々トラブルが発生します。

この章では、外壁塗装の塗装工程で起こりやすいトラブルを紹介します。

中塗りと上塗りが1日で終わってしまった

外壁塗装工事は下塗り、中塗り、上塗りの3工程で行われますが、稀に中塗りと上塗りが1日で終わってしまうケースがあります。

下塗りには専用の塗料を使用しますが、一般的に中塗りと上塗りは同じ塗料を使用して行われるので、この場合には中塗りと上塗りを1度で済ませてしまっている手抜き工事である可能性が高いといえます。

塗料の乾燥には短くても3~5時間ほどかかるため、中塗りの乾燥時間を守って上塗りを行っていれば、同じ日に中塗りと上塗りが終わってしまうことはほとんどありません。

このようなトラブルは度々報告されているため、中塗りと上塗りが同日に行われている場合は注意が必要です。

解決方法

使用している塗料名を入力してインターネットで検索すると、塗料メーカーが指定している塗料の乾燥時間が記載されています。

記載された乾燥時間が守られていない場合は塗料の持つ性能が発揮できなくなってしまうため、現場の職人ではなく契約した業者に問い合わせを行ってください。

トラブルを防ぐ方法

このようなトラブルを確実に防ぐためには、中塗りと上塗りの塗料の色をかえてもらう方法もあります。

ただしあまりにも違う色を選んでしまうと、経年により上塗り塗料が劣化して中塗り塗料の色が見えてしまうことがあるので、同系色で若干異なる色を選ぶようにしましょう。

また、業者側に塗装工程ごとに写真を撮って提出してもらうように依頼しておくと安心です。

事前にイメージしていた色味と違う

ローラー塗装作業

外壁塗装工事では、事前にイメージしていた色と実際の仕上がりの色の印象が異なるといったトラブルが発生することがあります。

これはたとえ業者が使用している塗料に間違いがなくても、色見本で確認したときの印象と実際に建物に塗装して太陽光の元で見た時の色の印象が異なるためです。

しかし業者の間違いでない場合には無償でやり直してもらうことは難しく、再塗装を行う際は別途費用がかかります。

解決方法

施工中の早い段階であれば塗り直しが可能な場合もあるので、中塗りを開始した直後(中塗りと上塗りの色を変える場合には上塗りを開始した直後)に必ず色味の確認をするようにしましょう。

無償での塗り直しが難しい場合には業者に追加料金の交渉を行い、再塗装を依頼することになります。

トラブルを防ぐ方法

このようなトラブルを防ぐためには色決めの際に小さな色見本で選ぶのではなく、あらかじめ業者に大きめの色見本(A4サイズ程度)を作成してもらって、室内だけではなく屋外の太陽光の元で朝、昼、夕方と時間ごとに確認を行うことが大切です。

外壁塗装の人気色や色選びのポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。

 

希望していた塗料とは異なる塗料が使用されていた

契約時に希望していた塗料と異なる塗料を使用して施工されてしまったというトラブルも稀に発生しています。

こうしたトラブルは、外壁塗装の営業会社と現場で実際に塗装する下請けの施工業者が異なる場合に発生しやすいといわれています。

そのため、契約を結んだ業者と施工業者が異なる場合は注意が必要です。

解決方法

外壁塗装工事には下請け業者が数多く存在しています。

この場合には施主側には過失がなく施工者側の下請け業者への伝達ミスが原因なので、業者の負担で塗り直ししてもらうことができます。

トラブルを防ぐ方法

なるべく自社施工を行なっている業者に工事を依頼することで、こうしたトラブルを回避することができます。

また、下請け業者が工事を行う場合にはできるだけ打ち合わせの段階から下請け業者にも同席してもらうようにするとトラブル防止に繋がります。

塗装の塗りムラや塗り残しがあった

外壁塗装作業

塗装工事終了後に塗りムラや塗り残しが見つかることがあります。

塗り残しは事前の業者との打ち合わせミスや業者の確認ミスであることが多く、塗りムラの多くは業者の施工不良が原因で発生します。

解決方法

塗り残しは業者側の過失により発生するケースのほか、契約上元々塗装する箇所ではなかったということもあります。

このようなトラブルを防ぐためにも、契約する前に塗装する範囲をしっかりと業者と打ち合わせしておくことが大切です。

また、塗りムラは職人の技量不足のほか、雨や湿度などの影響で発生することもあるので、施工後には足場を解体する前に入念に建物を点検、確認することが大切です。

塗りムラを発見したら、早急に業者に塗り直しを依頼しましょう。

トラブルを防ぐ方法

塗り回数に応じて、下塗り・中塗り・上塗りとそれぞれの工程で写真を撮影しておくことで、塗り残しのトラブルを避けることができます。

また、降雨直後や湿度の高い日には施工しない、事前に塗装する箇所と塗装しない箇所について業者と綿密に打ち合わせをしておくことなどが重要になります。

塗装中の臭いで気分が悪くなってしまった

塗装工事中に発生する塗料の臭いについてのトラブルも、外壁塗装ではよく発生しがちです。

塗料に含まれているシンナーの臭いを長時間吸い続けると、吐き気やめまい、頭痛、目や喉の傷みなどを引き起こす恐れがあります。

施主だけではなく近隣住民からクレームが発生することもあるので、外壁塗装による臭いが気になる場合にはすぐに業者に相談しましょう。

外壁塗装で発生する臭いの対策方法は、以下の記事で詳しく紹介しています。

 

解決方法

工事中は窓を開けても問題のない箇所であれば窓を開けて換気する、マスクを着用する、塗装工事の工程の際には外出してしまうなどの対策を取ることをおすすめします。

トラブルを防ぐ方法

外壁塗装用の塗料には油性塗料と水性塗料がありますが、水性塗料を使用することで工事中の塗料の臭いを軽減することができます。

水性塗料の中でも「F✩✩✩✩」のものは放出するホルムアルデヒドが少なく、人体や環境にも優しいといわれています。そのため、臭いを抑えた外壁塗装工事を行いたい場合は、この表記があるものを選ぶと良いでしょう。

また、あらかじめ塗装期間や作業時間などを近隣住民にお知らせしておくことで、近隣住民とのトラブル防止につながります。

外壁塗装工事完了後、1年以内に起こりやすいトラブル

外壁のはがれ

外壁塗装工事の終了後、さまざまな理由から1年以内に品質に関わるトラブルが発生することがあります。

ここでは、外壁塗装後1年以内に発生する可能性があるトラブルを紹介します。

塗装後1年以内に塗膜の剥がれや色褪せが起きてしまった

外壁を塗り替えて1年以内に塗膜の表面が剥がれたり、色褪せが生じてしまったりする不具合が発生することがあります。

このようなトラブルの原因としては、下塗り塗料の塗布量が不足しているために上塗り材との密着性が弱くなる、高圧洗浄が不十分な上に下塗り材を塗布してしまった、使用した塗料と下地材との相性が悪かったなどといった理由が挙げられます。

しかしこのいずれのケースも、外壁塗装を行った業者の手抜きやミスであることが多いようです。

解決方法

これらのトラブルは施主には責任がないので、すぐに施工した業者に連絡して塗り直しを依頼するようにしましょう。

トラブルを防ぐ方法

塗膜の剥がれや色褪せなどの施工に起因する不具合は外壁塗装が終了した直後には発生しないことが多く、施工後1年~数年の間に症状が出てきてから発見することがほとんどです。

そのため、トラブルを防止するためには施工の際に写真を撮って残しておくことが大切です。

業者に依頼して使用している下塗り材の種類や塗装の工程、使用した塗料の缶数などをまとめて、報告書として提出してもらっておくことをおすすめします。

塗装後1年以内に鉄部にサビが発生してしまった

外壁塗装が終了してから間もなく、鉄部にサビが発生してしまうことがあります。

これは「ケレン」と呼ばれる塗装面のサビ取り作業をきちんと行わずに塗装してしまったり、サビ止め塗料を十分に塗布しなかったりした可能性が高いといえます。

解決方法

塗膜の剥がれや色褪せなどと同様に業者の施工不良が原因と思われるので、業者に伝えて塗り直してもらいましょう。

トラブルを防ぐ方法

塗装後に鉄部にサビが発生するのは、塗装前のケレン作業不足やサビ止め工程の不備がほとんどの原因です。

そのため、工事中にはケレン作業がしっかりと行われているかどうかを確認しておくことが大切です。

ケレン作業の工程については、以下の記事で詳しく紹介しています。

追加費用などの工事費用に関するトラブル

外壁塗装工事では「工事後に事前に説明がない追加費用を請求された」「追加費用の額が事前の見積もりよりも高額だった」などの発生しています。

ここでは、追加費用に関するトラブルの例を紹介します。

工事後に追加費用を請求された

工事終了後に業者から契約書で取り決めを行った際の工事費用以外に、高額な追加工事費用を請求されるトラブルが数多く発生しています。

工事前に想定できなかった外壁の劣化などの修繕のために追加費用が発生するなどの正当な理由があることもありますが、追加費用が発生する際には事前に施主の承諾を得る必要があるため、何も言われていない場合には支払いを拒否することができます。

解決方法

業者と話し合いを行い追加工事費用の説明を受ける必要がありますが、説明に納得がいかない場合には業者の追加工事費用請求に応じる義務はありません。

それでも業者から執拗に追加工事費用の請求を受ける場合には、国民生活センターなどの相談窓口に相談するようにしましょう。

トラブルを防ぐ方法

工事中の追加費用に関しては外壁の劣化が著しい場合などには発生することが多いので、事前に追加費用の扱いについて業者と取り決めしておく必要があります。

基本的に「言った・言わない」になるのを防ぐため、打ち合わせ内容を書面に残す、かつ必要であれば業者とのやりとりを録音して記録しておくことが大切です。

事前の見積もりとは異なる工事費用を請求された

追加工事が発生したり工事内容が変更になったりしたわけでもないのに、思ったよりも職人の手間がかかった、工事の難易度が高かったなどの理由で、見積もり書に記載された金額よりも高額な工事費用を請求されることがあります。

解決方法

この場合も想定外の追加工事費用を請求された時と同様に納得できない旨を業者にはっきりと告げて、必要であれば国民生活センターに相談すると良いでしょう。

トラブルを防ぐ方法

あらかじめ金額の変更についての取り決めを業者と行っておき、見積もり書に記載された金額と請求額が異なっていた場合は、事前に金額を決定して書面に残すようにしましょう。

不安であれば、契約の際に業者から口頭で言われたことを録音しておくと良いでしょう。

領収書を発行してくれない

外壁塗装工事代金の領収書は補助金・助成金の申請や、住宅ローン減税申告、経費として計上する際などに必ず必要になるものです。

しかし業者によっては領収証の発行を行なっていないことがあります。近年では銀行振り込みによる支払いが主流になっているので、その場合には振込明細書が領収書の役目を果たしてくれますが、業者に現金で支払う場合には必ず領収書を発行してもらうことが大切です。

解決方法

工事代金を現金で業者に支払う場合には、必ず領収書と引き換えで支払うようにしましょう。

工事代金を複数回に分けて支払う場合は、その都度領収書を発行してもらうようにしてください。

トラブルを防ぐ方法

契約の際、領収書の発行有無や書式などといった発行方法を確認しておくと良いでしょう。

また、領収書を発行しない業者とは契約自体を見直すなどの対策が必要です。

保証書の内容に相違がある

工事終了後、業者が発行する保証書の内容が事前に認識していた内容と異なることがあります。

「不具合が発生したらどんなことでも無償で手直しして貰えると思っていたが実は誤りだった」「最長10年間の保証と記載されていたが、我が家の場合は5年保証だった」などです。

こうしたことが起きるのは、業者側の説明不足や施主の思い込みが原因となっています。

解決方法

保証には免責事項や保証期間などが必ずあり、施工方法や既存の劣化状況、使用する塗料などによって異なることがほとんどです。

そのため、契約する前には保証内容について業者に必ず確認しておく必要があります。

トラブルを防ぐ方法

外壁塗装工事の契約前には必ず業者に「どんな不具合に対して何年間保証するのか」を確認した上で、納得して契約書の取り交わしを行うようにしましょう。

また、保証書に明確に記載されていることを確認し、必要であれば口頭で説明されたことを録音しておくと安心です。

その他のトラブル

この章では、その他として発生しやすいトラブルを紹介します。

作業員の態度が悪い

作業員の身なりが悪い、作業中の私語が多い、路上に資材を放置している、敷地外で喫煙しているなど、作業員の態度が悪いと近隣からのクレームの原因になります。

治安などに対する懸念から近隣住民との間で大きなトラブルになってしまわないように、施主側が早急に対処することが求められます。

解決方法

作業員の態度が不適切だと感じたら施主として職人に注意を行い、その後も改善が見られないようであれば、業者の責任者に伝えるようにしましょう。

トラブルを防ぐ方法

契約する前には、インターネットの口コミ情報などで職人に対する悪い評判などがないかどうかを調べておくようにしましょう。

工事が遅延している

外壁塗装工事は屋外で行う作業なので、たとえ天候の良い時期を狙って工程を組んでいたとしても、予期せぬ雨などで予定よりも大幅に工期が伸びてしまうことがあります。

工事中に雨が降ってしまうと作業が中断するだけでなく、塗装面が完全に乾くまで工事を再開することができないからです。

解決方法

予定よりも工程が遅れていると感じたら原因を工事担当者から聞いて、改めて工事完成時期がいつ頃になるのかを確認しておきましょう。

しかし外壁塗装は気温や天候などの条件を守る必要があるため、施主側から工事再開の依頼を行うのは控えた方が良いでしょう。

トラブルを防ぐ方法

外壁塗装工事の工程は天候によって大きく左右されるので、なるべく余裕をもってスケジュールを組むようにしましょう。

また、スケジュールに余裕がない場合にはできるだけ天候が安定する時期に工事を依頼するようにし、業者との間で事前にスケジュール調整を綿密に行っておくことが大切です。

外壁塗装工事は季節を問わず施工可能であるといわれていますが、その中でも気温の変動が少なく晴れの日が続く春が外壁塗装のベストシーズンであるといわれています。

春の外壁塗装工事については、以下の記事を参考にしてください。

 

施工業者が倒産してしまった

近年は建設業者の倒産や廃業が増えているので、外壁塗装工事後数年で施工を行なった会社が無くなってしまう可能性があります。

その場合には工事保証やアフターフォロー等を受けられなくなってしまうので、その点も考慮して施工業者の選定は慎重に行う必要があります。

解決方法

不幸にも施工業者が倒産してしまった場合には、自宅の近くで信頼できる業者を探して、以前の業者が無くなってしまったことを伝えた上で引継ぎを依頼するようにしましょう。

トラブルを防ぐ方法

このようなトラブルをできるだけ回避するためには、信頼できる優良業者を探すことが一番です。

建設業許可などの許可や資格を有している、地元で長く営業している、ホームページなどが随時更新されている、組合に加盟しているなどといった業者であれば、突然倒産してしまう可能性は低いといえるでしょう。

外壁塗装でトラブルが発生した場合の連絡先

前章までで外壁塗装工事で発生しやすいトラブル事例やその解決方法、予防方法などを紹介してきましたが、この章ではトラブルが発生した際の連絡先を紹介します。

トラブルが起きた時の連絡先は以下になります。

トラブルの例 相談先
外壁塗装工事後の不具合 施工業者
施工業者との間のトラブル 住宅リフォーム・紛争処理支援センター
契約に関するトラブル 国民生活センター
不具合発生後の業者の倒産 保険会社
解決の見込みが立たない場合 弁護士

※横にスクロールしてください。

次にそれぞれの相談先について詳しく紹介します。

施工業者

外壁塗装の施工後に何らかの不具合を発見した場合には、まずは施工した業者に相談しましょう。

不具合の原因が業者の施工ミスだった時は無償で手直しして貰えることがほとんどですが、業者の保証には条件があるため、事前に保証書の内容をしっかりと確認しておきましょう。

外壁塗装工事の保証期間や種類、保証の内容については、以下の記事で詳しく紹介しています。

 

住宅リフォーム・紛争処理支援センター

工事に手抜きがあった場合や業者に伝えても対応してもらえない場合、業者に不当な追加工事費用を請求された場合など、業者とトラブルになった場合には「住宅リフォーム・紛争処理支援センター」や「国民生活センター」に相談することをおすすめします。

「住宅リフォーム・紛争処理支援センター」には建築士や弁護士などの専門家が在籍しており、外壁塗装工事に関する各種相談にも対応しています。

また「住宅リフォーム・紛争処理支援センター」では「住まいるダイヤル」という電話相談窓口を開設しており、専門家が相談に応じてくれます。

住宅リフォーム・紛争処理支援センター

国民生活センター

「国民生活センター」はリフォームに関する専門的な相談窓口ではありませんが、「リフォームの訪問販売」や「悪質な塗装業者」などの相談が多数寄せられているので、適切な対処法のアドバイスを受けることができます。

また、必要であれば専門家を紹介してもらうことも可能です。

国民生活センター

保険会社

引き渡し後に工事の不具合による問題が発生した場合には、施工業者の保証期間内であれば無償で手直ししてもらうことが可能ですが、万一業者が倒産してしまった場合には保証を受けることができなくなってしまいます。

そのようなリスクに備えるためには、「リフォーム瑕疵保険」に加入しておくと良いでしょう。

保険に加入しておくことで、倒産した業者に代わって保険会社による保証を受けることができます。

弁護士

これまでに紹介した相談先に相談しても解決できない場合には、弁護士に相談すると良いでしょう。

相談料はかかりますが、専門的な知識で問題解決に導いてもらうことができます。

弁護士ドットコムなど気軽に弁護士に相談できるサイトなどもあるので、一度利用してみるのも良いでしょう。

外壁塗装のトラブルのほとんどは塗装後の不具合によるもの

公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターにはリフォームに関する相談が毎年7,000件近く寄せられ、そのうちの多くが外壁塗装に関するトラブルで、塗装後の不具合によるものが多いようです。

他にも国民生活センターには悪質な訪問販売などの相談が数多く寄せられており、決してトラブルが少ないとはいえません。

外壁塗装工事でのトラブルを防ぐための注意点

外壁塗装工事でトラブルの発生を防ぐためには、以下のポイントに注意する必要があります。

  • 事前に複数の業者から相見積もりを取得して慎重に業者の選定を行う
  • 契約時に契約内容や工事内容をしっかりと確認する
  • 契約の際は、業者と書面で契約書の取り交わしを行う
  • 契約時に必ず業者のアフターフォロー体制や工事保証について確認する
  • 料金の前払いは決して行わない
  • 工事着工前の近隣挨拶をしっかりと行う
  • 色見本だけではなく、実際に塗装した色を確認する
  • 工事中には工程表通り工事が行われているかどうかを確認する

また、大前提として信頼度の高い優良業者に工事を依頼することが非常に重要です。

優良業者の見極め方や悪徳業者の特徴は、以下の記事で詳しく紹介しています。

まとめ

外壁塗装工事は契約前から工事の完成・引き渡し後まで、さまざまなトラブルが発生する可能性があります。

そこで事前にどんなトラブルが起こり得るのかを知って未然に対策を行うと共に、万一トラブルが発生してしまった際にも冷静に対処することが大切です。

この記事のライター:亀田 融
東証一部上場企業の不動産・建設会社の建築部門に33年間勤務。 13年間の現場管理経験を経て、取締役事業部長に就任。 事業部内で年間1000件以上のリフォーム工事を手掛けるなかで、中立的立場でのコンサルティングの必要性を実感し、独立を決意。 現在はタクトホームコンサルティングサービスの代表として、住まいに関する専門知識を生かし、多岐にわたり活躍している。 (保有資格:一級建築施工管理技士、宅地建物取引士、マンション管理士、JSHI公認ホームインスペクター、インテリアコーディネーター、マンションリフォームマネジャー、日本不動産仲裁機構ADR調停人)

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近年は外壁サイディング貼りの住宅が増えており、外壁塗装といえばサイディングの塗装を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。 一方、サイディングには、多くの方が連想する窯業系サイディング(セメントに繊維質を混ぜて板状に形...

外壁塗装では手塗りと吹き付け、どちらが良い?4つの判断基準と注意点

外壁塗装では手塗りと吹き付け、どちらが良い?4つの判断基準と注意点

近年の外壁塗装工事はローラー工法による手塗りで行うケースが増えていますが、塗装方法には他にスプレーガンを使った吹き付け工法や刷毛塗りによる工法があって、業者によってもおすすめの塗装方法や得意な工法が異なります。 これから...

外壁塗装は大手に依頼した方がいい?それとも地元の業者?

外壁塗装は大手に依頼した方がいい?それとも地元の業者?

外壁塗装の業者選定の際、大手の業者に依頼した方が良いのか、または地元の業者に依頼をした方が良いのか悩まれる方も多いようです。 外壁塗装工事は頻繁にするものではないため、できる限りご自身の希望に合った業者に依頼をしたいとい...

外壁のひび割れの原因は?外壁のクラック補修やメンテナンス方法

外壁のひび割れの原因は?外壁のクラック補修やメンテナンス方法

  ある日突然、ご自宅の外壁にひび割れが入っているのを見つけたら、なぜひび割れが発生したのか、そしてどう対処したらよいのかがわからなくて、慌ててしまう方が多いのではないでしょうか。 そこで本記事では、ひび割れが...

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