雨漏りは外壁塗装・屋根塗装で直せる?雨漏りの修理方法を徹底解説

深刻な住宅トラブルのひとつに「雨漏り」がありますが、塗装業者の中には時々「屋根塗装や外壁塗装を行えば雨漏りしなくなります」などといって営業している業者がいます。

しかし、雨漏りは外壁塗装や屋根塗装をしても直すことはできません。

誤解のないように言うと、単に塗装工事をしただけでは一時的に雨漏りが止まったとしても、根本的に直すことはできないということです。

本記事では、塗装工事を行っても雨漏りを直すことができない理由や、雨漏り修理の方法、雨漏りの予防法などについて詳しく紹介します。

屋根塗装や外壁塗装では雨漏りを防ぐことは出来ない

屋根塗装や外壁塗装を行う主な目的は、屋根材や外壁材の表面を空気中の塵や埃、自動車・工場などから排出される有害物質などから保護し、美観を保つことです。

また屋根塗装や外壁塗装に使われる塗料で屋根や外壁の表面を塗膜で覆うことにより紫外線による劣化を防いだり、防水性の高い塗料を使用することで一次防水としての役割を果たします。

しかしすでに雨漏りが発生しているということは、屋根材や外壁材の下にあるルーフィングや防水シートなどの二次防水に何らかの欠陥が生じているということになります。

したがって屋根塗装や外壁塗装を行っても、直接的な雨漏り対策になるとはいえません

雨漏り修理は本来散水調査(水かけ調査)などを行いしっかりと雨漏りの原因を突き止めた上で原因箇所の修理を行うため、単に塗装工事を行っただけでは根本的な解決にはならないのです。

屋根塗装や外壁塗装では雨漏りを防げない理由

木造住宅は、もともと台風や大雨の際には屋根材や外壁材の内側に雨水が入ってくる可能性があることを想定して建てられています

そして入り込んだ雨水が室内に侵入した際に雨漏りを防いでいるのが、屋根材や外壁材の下にあるアスファルトルーフィングや防水シートなどの二次防水です。

塗装はあくまでも屋根材や外壁材に対して行うものです。

したがって前述したように、塗装工事を行っただけでは雨漏りが解消するとはいえません。

屋根塗装や外壁塗装の目的は雨漏り防止効果ではない

屋根や外壁を塗装する主な目的は次の3つです。

  • 美観を保つ(塗り替えの場合は美観を回復させる)
  • 屋根材や外壁材を塗膜で保護して劣化を防ぐ
  • 紫外線や雨風の影響を受けにくくして一次防水としての役割を果たす

したがって屋根や外壁の塗装を行う目的は、雨漏り防止ではありません

もちろん塗膜の防水効果を全く期待していない訳ではありませんが、塗装したからといって決して雨漏りしないということではないので注意が必要です。

屋根・外壁塗装の目的を以下で詳しく解説します。

屋根材や外壁材を水分から守る

近年の住宅で主流となったスレート屋根材(コロニアル、カラーベスト)や窯業系サイディング外壁材などは、本来は吸水性が高くて防水性が低い素材です。

これらの素材は表面の塗膜によって防水性が保たれているため、塗膜が劣化すると吸水してしまいます。

水分を吸水した屋根材や外壁材は膨張し、乾燥すると収縮します。膨張と収縮を繰り返すことで次第にひび割れが発生してしまう恐れがあります。

また真冬には吸水した水分が凍って、破壊してしまうことにもなりかねません。

そこで劣化した塗膜を防水性の高い塗料で塗り替えることで、屋根材や外壁材を水分から守ることができるようになります。

そして結果的に建物の寿命を延ばすことに繋がります。

しかしこれは一時的な防水効果にしか過ぎず、直接的な雨漏り対策とはいえません。

見た目の美しさを守る

塗料は紫外線や雨風の影響で次第に劣化し、色褪せやチョーキング(塗料に含まれている顔料がチョークの粉のようになって塗膜の表面に出てくる現象)が発生します。

こうなってしまうと美観を損なってしまうので、塗り替えが必要になります。

また塗膜が劣化すると吸水しやすくなるため、屋根材や外壁材の表面にカビやコケが発生するようになります。

塗り替えを行うことで、カビやコケを落として見た目の美しさを回復することができます。

遮熱効果を上げることができる

屋根や外壁は常に太陽光に晒され、紫外線の影響を受けています。また、真夏になると太陽光が当たる面の表面温度が上昇し、室内にも伝わってしまいます。

そこで遮熱性能の高い塗料を使用することで、遮熱効果を上げることが可能になります。

特に紫外線の影響を強く受ける屋根に遮熱塗料を使用すると効果的です。

雨漏りの修理方法

雨漏りの多くが、建材同士の接合部や継ぎ目部分から雨水が侵入することによって発生します。

したがって雨漏り修理では、雨水の侵入箇所を特定することが不可欠です。

この章では雨漏りの修理方法について解説します。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

 

雨漏りの修理方法は雨漏り調査によって決まる

雨漏りが発生した場合には早急に修理することが大切ですが、ただやみくもに修理を行うだけでは決して満足できる結果を得ることはできません。

雨漏り修理の際には事前に専門家による調査を行って、雨水の侵入箇所を特定することが結果的に近道になります。

建物内に雨水が侵入すると思われる箇所は数多くあって、侵入している場所によって最適な施工業者が変わってしまうこともあるためです。

したがって決して塗装を塗り替えただけでは解決できないことを理解しておくことが大切です。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

 

既存の屋根材や外壁材が使える場合はカバー工法による修理を行う

雨漏り調査の結果、既存の屋根や外壁から雨漏りしているのが確実で、長期的に考えた場合に屋根や外壁を全面的に新しくしたいのであれば、カバー工法による修理がオススメです。

カバー工法とは既存の屋根材や外壁材を残して、その上に新しい屋根材や外壁材を被せてしまう工法のことをいいます。

既存の屋根を外さないで済むので住宅への負担が軽減されますが、カバー工法による修理を行う場合は、下地や構造躯体が健全であることが条件になります。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

屋根のカバー工法については

 

外壁のカバー工法については

 

内部の工事から行う場合は葺き替えや張り替えによる修理を行う

屋根や外壁の下にあるルーフィングや防水シートが劣化して傷んでいる場合や、下地や構造躯体が腐蝕していて補修・交換が必要な場合などは、屋根の葺き替え、サイディングの張り替えが必要です。

この場合には既存の屋根材や外壁材を全て撤去した上で下地や構造躯体の補修工事を行い、新たに屋根や外壁の工事を行います。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

屋根材の葺き替えについては

 

サイディング外壁の張り替えについては

塗装の塗り直しで対処できる雨漏りとは?

すでに雨漏りが発生している場合には、基本的には塗り替え工事だけで雨漏りが改善できることはありません。

しかし例外もあります。この章ではそのような事例を紹介します。

施工時の塗装ミスや技術力不足の場合

モルタル外壁がひび割れしていてひび割れ部分から雨水が入っているのが明らかな場合には、施工時に使用する塗料の種類を誤っていたり、塗りムラがあったりする恐れがあります。

その場合には塗膜に弾性機能(伸縮して下地の動きに追従する機能)のある塗料を使用して、規定通りに正しく施工し直すことで雨漏りを止めることができる可能性があります。

しかしモルタル外壁の下には二次防水である防水紙が入っているはずなので、雨漏りの原因には防水紙の欠陥が疑われます。

したがって塗装し直しただけでは将来的に塗膜が劣化してしまうと雨漏りが再発する可能性が高いといえます。

鉄筋コンクリートの住宅の場合

鉄筋コンクリート造住宅や鉄骨ALC造住宅は塗膜による一次防水のみの構造になっていることが多く、外壁の塗り替え工事を行うことで雨漏り予防対策とすることがほとんどです。

したがって、外壁のシーリング(コーキング)や塗膜の防水機能に欠陥がなければ雨漏りする確率は低いといえます。

塗装の塗り直しで対処できない雨漏りとは?

雨漏りは、塗装の塗り直しだけでは対処できないことがほとんどです。

特に木造住宅の場合にはその傾向が顕著で、屋根や外壁の塗膜は一次防水に過ぎません。

重要な二次防水としての役割は、屋根材や外壁材の下にあるアスファルトルーフィングや防水シートが受け持っています。

この章では塗装の塗り直しで対処できない雨漏りについて紹介します。

屋根材や外壁材の内部の問題

塗膜は建物の一番外側にあり、一次防水としての役割を果たしています。

通常であれば塗膜の内側に雨水が侵入したとしても、二次防水が建物内部への侵入を防ぎます。

万一、屋根材や外壁材の内側にある二次防水に何らかの欠陥がある場合には、塗り直しだけで雨漏りを完全に直すことはできません。

塗り替え時の施工不良

塗り替え工事では施工不良も少なくありません。

中には塗装工事を行った後に、施工不良が原因で雨漏りが発生するケースもあります

特にスレート屋根の塗装工事では、塗料が乾燥してスレート瓦の重ね目の隙間が塗料で塞がってしまった場合、雨水が排水されずに雨漏りの原因になってしまうことがあります。

そのため、「縁切り」という作業をおこなったり、タスペーサーという部材を用いたりして、スレート瓦の重ね目の隙間を確保しなければなりません。

しかし「縁切り」が十分に行われていないことがあります。

このように塗り替え時の施工不良が雨漏りの原因になることも少なくないので注意が必要です。

雨漏りを防止するために出来ること

雨漏りは、新築時やリフォーム時の施工不良や建物の経年劣化が原因で発生することがほとんどです。

そこでこの章では、雨漏りを防止するためにはどうすれば良いのかについて紹介します。

定期的なメンテナンスを行う

雨漏りを予防するためには、日頃の点検と定期的なメンテナンスが不可欠といえます。

軒裏やベランダの裏側に染みや汚れがないかサイディングの目地やサッシ廻りのシーリングにひび割れやはがれがないか屋根瓦にひび割れや欠けている部分がないか雨樋が詰まっていないか室内の天井や壁に水染み跡がないか、などであれば自分でも簡単にチェックすることができます。

少しでも異常を感じたら、専門業者に点検してもらうことが大切です。

また小さな傷や隙間などであれば、自分でシーリング補修することもできます。

建物の異変を早く発見して迅速に適切な処置を行うことで雨漏りを予防し、大掛かりな工事になるのを防ぐことが可能になります。

防水塗料で予防を行う

防水塗料とはベランダや屋上などの防水機能を高めるための塗料のことをいいます。

特定の塗料を指しているのではなく、防水機能に特化した塗料のことを一般的に防水塗料と呼んでいます。

壁用と床用に分かれ、壁用はコンクリートやモルタルなどのひび割れしやすい外壁に塗るもので、「弾性塗料」とも呼ばれています。

一方、床用のものは屋外の平らな床面の防水に使われるもので「トップコート」と呼ばれています。

防水塗料には防水層を守るためのコーティングの役割があり、定期的にベランダの床面にムラなく均一に塗布することで、防水層の劣化や雨漏りを予防することができます。

まとめ

「屋根塗装や外壁塗装を行えば雨漏りしなくなりますよ」というのは一部の塗装業者のセールストークになっていますが、現在すでに雨漏りが発生している場合には、屋根や外壁の塗装を行っても雨漏りしなくなることはありません

それは塗装工事をしても雨漏りの原因の根本的な解消にはつながらないからです。

雨漏りの原因には、屋根材や外壁材の下にあるルーフィングや防水シートなどの二次防水が深く関わっているケースがほとんどです。

したがって雨漏りが発生した際にはしっかりと原因を究明して、適切な処置を行うことが大切です。

決して塗装工事で解決しようなどと思わないようにしてください。

この記事のライター:亀田 融
東証一部上場企業の不動産・建設会社の建築部門に33年間勤務。 13年間の現場管理経験を経て、取締役事業部長に就任。 事業部内で年間1000件以上のリフォーム工事を手掛けるなかで、中立的立場でのコンサルティングの必要性を実感し、独立を決意。 現在はタクトホームコンサルティングサービスの代表として、住まいに関する専門知識を生かし、多岐にわたり活躍している。 (保有資格:一級建築施工管理技士、宅地建物取引士、マンション管理士、JSHI公認ホームインスペクター、インテリアコーディネーター、マンションリフォームマネジャー、日本不動産仲裁機構ADR調停人)

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