屋根修理が必要なタイミング・劣化症状は?修理方法、費用相場も解説

住宅のメンテナンスといえば普段から目にする機会が多い外壁のメンテナンスを思い浮かべる方が多いと思いますが、実は屋根が住まいの中で最も傷みやすい場所といえます。

屋根は日々紫外線や風雨に晒されており、夏の酷暑や冬の寒さにも耐えなければなりません。常にダメージが蓄積され続けており、そのまま放置し続けると雨漏りをはじめとした様々なトラブルの原因になります。

今回はそんなトラブルを避けるために、屋根の種類別耐用年数や劣化症状、修理の目安、修理方法などを紹介します。

屋根修理は定期的に行う必要がある

屋根は日々紫外線や風雨に晒されているだけでなく、地震や台風、竜巻等の被害を受けて気付かないうちに破損してしまうこともあります。

また海の近くであれば、潮風による塩害被害を受けることもあるでしょう。そのためどんな屋根であっても、修理・メンテナンス工事が必要になる時期が来ます。その適切な時期にメンテナンスを行うことにより、建物自体の寿命を延ばし美観を保持することが出来ます。

メンテナンスが必要な時期は屋根材の種類によって異なりますが、新築後10年を目途に一度しっかりとした屋根の点検を行い、メンテナンスが必要かどうかを確認することが大切です。

屋根材別;耐用年数や修理の目安

建物を構成している全てのものには耐用年数があり、適切な時期にメンテナンスを行うことで寿命を延ばすことができるようになります。

屋根も例外ではなく、早めに適切なメンテナンスを行うことで結果的にメンテナンスコストの削減にも繋がります。

そこでこの章では、屋根材の種類ごとに耐用年数やメンテナンスが必要になる時期の目安について紹介します。

ただし同じ屋根材であっても、立地条件や気候によって耐用年数が異なるのでご注意ください。

化粧スレート屋根

化粧スレートはカラーベスト、コロニアルなどといった商品名で呼ばれることが多く、現在の国内の住宅の屋根材として最も多く使われています。

耐用年数は約20~25年といわれていますが、セメント成分に繊維質の材料を混ぜて薄く加工した後に着色塗装したもので、表面の塗膜で防水性を確保しています。

そのため定期的に塗装することで、耐用年数を延ばすことができるようになります。

塗膜の防水機能が低下して雨水が浸み込むようになる前に塗装することが大切で、8~10年ごとに塗装することによって健全な状態を長期間保つことができます。

瓦屋根

瓦には様々な種類があり、大きく分けると粘土瓦(釉薬瓦・いぶし瓦・素焼き瓦)、セメント瓦、コンクリート瓦に分けられます。

それぞれの特徴、耐用年数、メンテナンス時期の目安は下記の通りです。

  • 粘土瓦

粘土瓦は仕上げ方によって釉薬瓦、いぶし瓦、素焼き瓦などに分けられますが、粘土を使った焼き物の屋根材のことをいいます。

耐用年数は50年以上といわれ基本的にメンテナンスフリーですが、台風や地震などの影響で瓦がずれてしまったり割れてしまったりすることがあるので、時々点検する必要があります。

また瓦屋根に使用される漆喰は、約20年を目安に詰め直しが必要になります。

  • セメント瓦

セメントと川砂を混ぜ合わせて作られた屋根瓦のことで、粘土瓦よりも安価なため住宅不足が顕著だった高度経済成長期に広く普及しました。

吸水性の高いセメントを主原料として塗膜により防水性を確保しているため、10年前後を目安に塗装する必要があります。

また適切なメンテナンスを行えば、約30~40年の耐用年数を維持することが出来ます。

  • コンクリート瓦

コンクリートと砂を使って成型した屋根瓦のことで、モニエル瓦とも呼ばれています。

セメント瓦と同様に時間の経過と共に塗膜が劣化して色があせ、水が浸み込むようになるので、10~15年に一度塗装する必要があります。

このようなメンテナンスを行うことで、セメント瓦と同様に約30~40年の耐用年数を維持することが出来ます。

金属屋根

金属屋根とは薄く加工した金属板で作られた屋根のことで、使われる素材にはアルミニウム、スチール、亜鉛合金などがあります。

軽量で屋根の形状に合わせて加工できるため、複雑な形の屋根にも採用することができますが、使われる素材によってメンテナンスが必要になる時期や耐用年数が異なります。

現在最も代表的な金属屋根といえばガルバリウム鋼板の屋根になります。

ガルバリウム鋼板とは、亜鉛とアルミニウムとシリコンを組み合わせた合金でメッキを施した薄い鋼板のことをいい、耐用年数は塩害地域を除き、約30年〜40年といわれています。

ただし、15年に一度程度の塗装工事が必要になります。

屋根修理が必要になる劣化症状

屋根も外壁と同様に、適切な時期にメンテナンスを行うことで寿命を延ばすことができるようになります。

ここでは、屋根修理が必要になる劣化症状を屋根の種類ごとに紹介します。

化粧スレート・セメント屋根の劣化症状

化粧スレート屋根とセメント屋根の代表的な劣化症状には次のようなものがあります。

  • 色あせ、変退色

塗膜が紫外線により劣化すると、色あせが見られるようになります。

塗膜の防水性能がなくなり、屋根が吸水しやすい状態になっているサインです。

  • コケの繁殖

屋根材の防水性能がなくなって常に水を含んだ状態になると、空気中に漂うコケの胞子が屋根に根付き、屋根面にコケが繁殖するようになります。

  • ひび割れ、欠け

屋根材が水分を含むと膨張し、晴れた日には乾いて収縮するのを繰り返すことにより、ひび割れが発生するようになります。

そのまま放置し続けると、最終的には欠けてしまいます。

  • 浮き、反り

屋根材が水分を含むことで乾燥収縮を繰り返すと、浮きや反りが発生します。

瓦屋根の劣化症状

粘土瓦自体は非常に耐久性が高いものですが、地震や台風、雹などが原因で不具合が生じる場合があります。

瓦屋根の代表的な劣化症状には次のようなものがあります。

  • ずれ

地震や強風で瓦がずれてしまうことがあります。

そのまま放置し続けると落下してしまう危険性があり、雨漏りの原因になります。

  • ひび割れ、欠け

雹や強風時の飛来物などによって瓦が割れてしまったり欠けてしまったりすることがあります。

  • 棟瓦のゆがみ

屋根の頂点にある棟瓦が地震や強風などの影響で歪んでしまうことがあります。

  • 漆喰の剥がれや崩れ

屋根の漆喰が剥がれたり崩れてしまったりすると、その部分から雨水が侵入してしまうことがあります。

金属屋根の劣化症状

金属屋根の劣化症状には次のようなものがあります。

  • 色あせ、変退色

表面の塗膜が劣化すると色あせが発生します。

色あせが見られるようになったら塗り替えを検討する時期といえます。

  • 浮き、剥がれ、めくれ

瓦棒葺きの場合には、経年劣化で継ぎ目部分が緩むことにより屋根材が浮いてきたり剥がれてきたりすることがあります。

  • サビ、穴あき

トタン屋根の場合には、トタン屋根が長年雨水にさらされることによりサビが発生します。

そのまま放置しておくと、穴があいてしまうことにもなりかねません。

  • 釘やビスの浮き

屋根材や棟板金を固定している釘やビスが緩んで浮いてしまったり、抜けてしまったりすることがあります。

  • 棟板金の浮き

屋根の頂部に取り付けてある棟板金が台風や強風のため浮き上がってしまったり、外れてしまったりすることがあります。

この症状は化粧スレート屋根の場合にも見られます。

屋根修理の方法と費用相場

屋根修理は、屋根材の種類や劣化状態の程度によって修理方法が異なります。

主な修理方法を表にまとめると、次のようになります。

修理方法 費用相場
屋根塗装 約50~70万円
部分補修、差し替え 数万円~(屋根材の種類や補修範囲による)
カバー工法(重ね葺き) 約80~150万円
葺き替え 約100~200万円

※横にスクロールしてください。

※価格は延べ床面積30坪の2階建住宅の場合(屋根面積80~100㎡前後)

屋根塗装

屋根に色あせや変退色、コケ・藻の発生及び部分的なひび割れが生じている程度であれば、屋根の傷みがそれ以上酷くなる前に塗装による改修工事を行うことが可能です。

使用する塗料の種類によって耐用年数が変わったり、屋根に断熱・遮熱機能を持たせたりすることもできるので、予算やメンテナンスサイクルに応じて塗料を選ぶことができます。

塗装工事は屋根の傷みが激しくなる前に、原則として10年に1度程度行う必要があります。

部分補修や差し替え

屋根に全体的な劣化が見られない場合でも、屋根の一部にひび割れや欠け、ずれなどがある場合には、シーリングによる補修や傷んだ部分の屋根材の差し替え(交換)を行うことができます。

屋根の部分補修には次のような例があります。

  • 板金の交換

釘やビスが浮いて棟板金が外れかけている場合や谷板金にサビが発生している場合などは、傷んでいる板金を交換する必要があります。

時々台風や強風のため、棟板金が飛んでしまうことがあるので注意が必要です。

  • 漆喰の補修

瓦屋根の漆喰は経年劣化で剥がれてしまうので、約20年に一度は漆喰の詰め直しが必要になります。

  • 屋根材の差し替え

屋根材の一部にひび割れや欠けが見られる場合には、破損した屋根材を部分的に差し替える(交換する)ことができます。

  • 雨漏り補修

室内に屋根から雨漏りしている場合には、原因を究明してから補修を行います。

部分的な補修で済む場合もありますが、雨漏りの原因によっては屋根の大規模な修繕が必要になることもあるため、事前に原因究明をしっかりと行うことが重要です。

カバー工法(重ね葺き)

カバー工法(重ね葺き)とは、既存の屋根材を撤去せずに既存の屋根材の上から新たな屋根材を葺く工法です。

屋根材の劣化が全体的に進行していて、かつ既存の屋根材の下にある野地板の傷みが少ない場合には適した工法といえます。

既存の屋根材を撤去しないため撤去費用がかからず、工期が短くて済むのがメリットですが、屋根の重量が重くなるため耐震強度の上で不利になるデメリットがあります。

また既存の屋根材の種類(瓦屋根等)によっては、カバー工法を選択することができないので注意が必要です。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

 

葺き替え

葺き替えは、既存の古い屋根材を全て撤去し新たな屋根材に葺き替える工法です。

築年数がかなり経過していて屋根材の下にある野地板が酷く傷んでいたり雨漏りが発生していたりする場合には、葺き替えによる補修が必要になります。

屋根材の撤去・処分があるため、カバー工法よりも工事期間が長く費用もかかりますが、屋根材の下の防水シートや必要によっては野地板まで交換することができるので、屋根全体を新しくすることができます。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

屋根修理の費用を安く抑えるためには

屋根の修理費用を安く抑えるためには、屋根の重ね葺きや葺き替えが必要な状態になる前に塗装工事で済ませてしまうことが大切です。

そのためには定期的に屋根の点検を行い、適正な時期にメンテナンスを行うことが不可欠になります。

また、屋根の塗装工事を行う際には足場の設置が不可欠になるため、外壁塗装と同時に行うようにすることで足場代が節約できます。

足場代だけでも15~20万円ほどかかるので、費用を節約するためにも外壁塗装を行う前には屋根の点検も同時に行い、外壁と屋根の塗装工事を一緒に行うことをおすすめします。

屋根修理は火災保険が適用できるケースもある

屋根修理には火災保険が適用できるケースもあります。

修理が必要になった原因が経年劣化や地震の影響ではなく「風災」だと認められること、修理に必要な費用が20万円以上であることなどの条件をクリアすることができれば、火災保険会社から保険金が渡され、保険金で修理をすることができます。

「風災」とは台風、強風、竜巻などの自然災害のことですが、雨漏りや屋根材のズレ・剥がれ、漆喰の崩れ、棟板金の浮きなどは風災被害として認められることが多いようです。

台風や強風被害にあう確率はほとんどの家にあるものなので、一度火災保険の契約書や契約約款などで確認してみると良いでしょう。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

まとめ

屋根修理には適切なタイミングがあり、それを逃してしまうと高額な費用がかかってしまうことにもなりかねません。

本記事では屋根修理が必要になる劣化症状などを詳しく紹介していますので、これを参考にして早め早めのメンテナンスを行うようにしてください。

また、適切なメンテナンス時期を見逃すことがないよう、定期的な点検を心掛けていただけたら幸いです。

この記事のライター:亀田 融
東証一部上場企業の不動産・建設会社の建築部門に33年間勤務。 13年間の現場管理経験を経て、取締役事業部長に就任。 事業部内で年間1000件以上のリフォーム工事を手掛けるなかで、中立的立場でのコンサルティングの必要性を実感し、独立を決意。 現在はタクトホームコンサルティングサービスの代表として、住まいに関する専門知識を生かし、多岐にわたり活躍している。 (保有資格:一級建築施工管理技士、宅地建物取引士、マンション管理士、JSHI公認ホームインスペクター、インテリアコーディネーター、マンションリフォームマネジャー、日本不動産仲裁機構ADR調停人)

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